そもそも運動失調って??(笑)
協調運動とは?
運動には目的があり、その目的を達成するための時間的・空間的に調整された運動。
そして運動失調とは??
運動麻痺が無いにも関わらず、筋が協調的に働かないために円滑に姿勢保持や運動・動作が遂行できない状態う言う。運動の正確さの障害、協働筋と拮抗筋の協調の障害、協働筋から拮抗筋へのスムーズな運動の変換の障害などが挙げられる。
運動失調の種類
その病巣により小脳性、脊髄性、前庭性、大脳性に分類される。ここでは小脳性について詳しく述べます。
小脳性運動失調
小脳は大脳の運動野と大脳基底核群とともに協調運動に寄与している重要な脳の領域。
ほとんどすべての感覚系から求心性情報を受け、運動のプログラミングと実行に関係する脳の他の部位から情報を受け取る。
運動を実行するための具体的なプログラムを作成し、一次運動野を始めとする運動関連領野にその情報を伝える。また運動プログラムを臨時修正する学習機能を併せ持っている。
小脳と大脳は強力な閉ループ構造(大脳小脳連関)を持つとされる。
小脳からの出力は、視床核を介し運動野、前頭連合野などの大脳皮質へ投射、
大脳からの出力は大脳の広範囲の領域から橋核および下オリーブ核を経由して、各々苔状線維および登上線維が小脳皮質の広範囲に投射している。
①小脳半球の機能と障害
最も新しい部分であり上肢・下肢の運動の協調に関係した部分。
障害により測定異常、測定過多、運動の分解、反復拮抗運動不能、筋緊張低下、リバウンド現象、眼振、時間測定異常などが見られる。
これらすべては筋活動の時間的パターン生成の異常、すなわち時間測定異常として説明可能である。
②上部虫部の機能と障害
小脳半球に次いで新しく、歩行の協調に必要な部分。障害により歩行は失調性となりワイドベースとなる。歩行リズムは乱れ、タンデム歩行は困難。
③下部虫部の機能と障害
体幹の運動の協調や平衡機能に関与する。障害により平衡障害が顕著に出現。ひどいと立位だけでなく座位保持もできなくなる。ワイドベースはさらに助長され、歩行は強い失調性で酩酊様。言葉が2~3音ずつきれぎれに発せられた断綴性言語が聞かれる場合あり。
④片葉小脳の機能と障害
最も古い部分であり、眼球運動の協調に関与。障害により眼振、眼球測定異常、滑動性・衝動性眼球運動の障害などがみられる。
小脳と歩行
小脳は脊髄と脊髄小脳ループを形成する。脊髄のCPGの活動に関する情報は遠心性コピーとして前(腹側)脊髄小脳路を介して小脳に送られる。
一方、各種体性感覚系の受容器由来の情報は後(背側)脊髄小脳路を介して小脳に送られる。
運動失調の評価
・ICARS
・UMSARS
・SARA など
小脳機能の観点から見た運動失調に対するアプローチ
フィードバックからフィードフォワードにコントロールするためにはエアロバイクや速い歩行(意識化させない)が動作を円滑化させることを経験する。円滑な動作の利用が次の動作を予測させることにつながる可能性がある。
運動失調の場合は無理に上肢支持を外すと過剰な代償形成に結び付く可能性が高い。不安定な姿勢に対しライトタッチによりバランスが良くなることが報告されていることから過剰な介助はどうか?ということ。
動揺は上下肢の遠位を操作して近位関節で過剰に固定を強める場合が多い。股関節や肩関節などに直接軽い接触刺激を加えた状態で、その箇所を意識的、リズミカルに動作させると、遠位部分の操作が円滑になり、近位関節での過剰固定を減弱させることがある。
荷重情報の繰り返し入力が脊髄の歩行中枢を賦活する。出力細胞であるプルキンエ細胞には延髄の下オリーブ核から発する登上線維がシナプスを形成しており、運動の適応や学習における小脳機能を考えるとき、登上線維系の関与は重要である。
最後に、
早期からの円滑性を無視した過剰なアプローチは新たなフィードフォワードコントロールを獲得し、病前の円滑性とかけ離れてしまう可能性も否定できない。セラピストが慌てず繰り返し動作を提供することが重要なんではないか。また、CPGを誘発するための深部感覚などの刺激入力が重要なのである。
参考文献 運動失調に対するアプローチ 後藤淳 関西理学 2014