運動失調に対して何をすればいいんだ?
まず小脳は
早い運動プログラム作成と調整、姿勢と運動の協調的動作の調整に関与
これらを踏まえての動作分析
①寝返り、起き上がり
体幹部分が協調的に働かず、ベッド柵を引っ張り体位を変換することは多い。体幹は伸展位で過剰固定することが多く、一塊化の状態で上肢による引き込みにて動作を行う。
企図振戦や測定障害のため上肢支持をうまく利用できないため上肢の感覚がj十分にフィードバックされない。そのため不安感は増大する。すると視覚代償が強まり、傍脊柱筋や近位関節部を過剰に固定させ、協調性をさらに低下させてしまう。
②座位
下肢をやや外転位にし支持基底面を広げることがある。
③立ち上がり
深く体幹を屈曲し上肢や体幹の代償で立ち上がる場合、アップライトのまま上肢による強い引き込みを利用する動作が多い。ともに腰背部は過剰な伸展を行う。
下肢の抗重力筋活動が不十分な場合は下肢は内転、内旋し、臀部挙上まではできるがそれ以降は不安定となることが多い。
④立位、歩行
支持基底面を拡大させ腰背部筋で過剰な代償を行う。歩行は振り出しにコントロールができず、結果的に振り出してしまうことが多い。(測定障害によるよろめき歩行)
⑤上肢単独の動作
近位部(体幹、肩甲帯)の不十分な固定により、上肢のリーチの際、体幹、肩がともに動作する。(近位と遠位がともに動く)
問題点の予測
不安定部分に対し必ず代償固定が生まれる。この関係を十分に理解することが大事。
①頭頸部の固定
頭頸部を含めた体幹の後面筋を過剰に使用し身体を一塊化させ失調症状を防ごうとする。
②体幹の固定
体幹後面筋を過剰に働かせ、体幹前面筋との協調的な動作は認められない。
③各肢の固定
末梢部のコントロールが不十分な場合近位部の体幹とともに過剰に固定する。
歩行は体幹伸展位で骨盤をやや前傾させ、両下肢は伸展位となる。(膝関節のコントロールが不十分となり、伸展位でのロック機構を利用することが多い。)
アプローチ
①運動療法総論
体の中心部もしくは近位部の安定性が低下していると動揺性は大きく出現する。まず体幹下部の動作時の安定性をつくることが重要。
安定性の獲得には重力を利用する方法、動揺部分に持続的な圧を加えることで筋活動を高め動揺を抑制する方法がある。体幹屈曲させて十分なリラクゼーションを行うことも必要である。
動揺部分への促通は、体幹部を正常姿勢に近づけながら、膝関節の柔軟なコントロールの獲得を目標に行う。
立位では、
・体の重みを利用(失調側に支持物を置き、荷重をかけた立位保持)
・腹部に圧を加えつつ、適切なアライメントを保つ
・前方に支持物を置き、臀部は介助で立位保持。股・足関節の協調的かつ円滑な動作を獲得させる。
②小脳性運動失調に対して
姿勢、動作が抗重力位になればなるほど、前庭系および体性感覚系からの情報処理が不十分となる。
運動療法としては実際の姿勢、動作に沿って患者が自分でできる運動プログラムの作成(修復)を行うことができる方向に援助することである。
視覚を利用するのは良いが、眼振がある場合や気分が不快になることがあるので注意する。
小脳障害は外部入力の障害が大きいため、過剰な声掛け、叱咤激励、大きな声は動作を混乱させる可能性があるため注意する。
座位での重心移動は手根部に押し付けてしまうと下部体幹は筋活動が高まらないため坐骨へ適切な体重移動を行う。(移動側の上肢を外転させるなど)
まとめ
運動失調のような不安定症に対しては過剰な固定性を持って代償し、特に体幹を伸展位にて代償固定する方法が多くみられる。
参考文献 失調症患者における問題点の予測 後藤淳 関西理学 2004