未来のための『少子化対策』
今日の日経新聞電子版に、
『「韓国、受験が少子化要因」中銀、ソウルへの集中緩和で提言』
と題する記事が掲載されていました。
ご存じのように韓国の合計特殊出生率は2023年に0.72と、日本の1.20(ともに過去最低)をも大きく下回っています。
うーん。この論法では、一番の元凶は
①『国民の教育熱』であり、
これが(いわゆる『いい学校』がソウルにあるため)
②『首都ソウルへの一極集中』を生み、
それが
③『教育費や住居費の上昇』を招き、
結果的に(若者が結婚や出産をためらい)
④『少子化』が引き起こされる、ということです。
本当だろうか?
この論法の結論として『入試改革』を提言しているそうですが、その提言が仮に受験熱をいくらか下げるとしても、ソウルへの一極集中は無くならず、首都圏の住居費の高騰はほぼそのままで、少子化をめぐる状況もほとんど変わらないはず。
この提言を行った韓国中銀の本社機構は間違いなくソウルにあり、幹部職員の多くはソウルに住んでいるのでしょう。
ソウルには、
・著名な国立大・私大があり、教職員や学生が住むだけではなく、
・大統領府をはじめとするほとんどの政府機関があり、多くの官僚が住み、
・国会があり、国会議員やその秘書が住み、
・大手企業の本社があり、幹部社員が住み、
・主要放送局があり、おそらく番組制作にかかわるスタッフやタレント、歌手なども住んでいる。
科学技術関係の政府機関が中部の大田に移るまでは、本当にほとんど全てがソウルに集中していた。
(大田は日本で言えばつくば学園都市のような所です)
換言すれば、
《成功者は、そのほとんど全てがソウルに住んでいる》
私は韓国には3度ほど仕事で行ったことがあるだけですが、彼の地の友人たちは、『ソウルに住む』ということに驚くほどの『高い価値』を置いていました。
でも、その『価値』がよくわかっていない門外漢から見ると:
南北軍事境界線まではわずか55キロ、車ならば1時間の距離にあるこの都市に、これほどまでにありとあらゆる高価値のコア機関が『一極集中』しているのは驚きです。
── 大丈夫なんだろうか?
明らかに『少子化』の元凶は、
②『首都ソウルへの一極集中』です。
だから、それを低減することが、『少子化対策』に最も有効なのではないでしょうか?
もし、首都機能(大統領府と行政機関、国会)が別の都市に移転したら、本社機構や放送局を移す企業も出るでしょう。
ソウルの住宅事情は幾分かは緩和され、いや、なによりも政府がかなり安全になると思うのです。
── もちろん、以上は外国人の『余計なお世話』です。
でも、たぶん、みんなわかっているのではないでしょうか。
けれど、はっきり言えない/言わないのは、中銀職員をはじめとする政府関係者自身が、『ソウルに住むという利権』を既に持っているからだと思います。
『既得権』を手放すような政策を行いたくないのです。
Again, まったくもって『余計なお世話』です。
過去の記事を読んでいただいた方には私の言いたいことはおわかりでしょう ── これはそのまま、日本の話です。
下記の記事では末尾に『解決策』を示唆しただけでした。
ほとんどの読者には、それが、
東京一極集中をやめる
ことだとおわかりだったはず。
最も有効な少子化対策は、首都機能分散をはじめとする、東京一極集中を「ほぐす」政策を行うことです。
いや、現在のこの国では、それが『唯一』なのかもしれません。
東京にありとあらゆる国家中枢機能を置いたままで、『地方創生』なんて、そして『少子化対策』なんて、実現できません。
首都機能移転 ── それはそのまま、この都市が潜在的に抱える大災害危機に対して備える対策にもなるはずです。
上京するたびに思います。
(NHKでも何度か首都直撃の天災被害特集番組を組んでいますが)国境線からあれほど近いソウルの街と、大規模地震や富士山噴火の可能性がある東京の街、どちらも同じくらい危険なのではないでしょうか。
NHKにも言いたい:
「あのような特集を組むほど、本当に大規模災害に危機感を持っているなら、まずは自らが東京を離れたらどうでしょうか?」