見出し画像

な 「ナン」

「ナン」

インドカレー/ネパールカレーのお店は東京にめちゃくちゃ多い。コンビニと同じ頻度で見かける街もある。僕はわりとそういった店が好きだ。といっても外食自体が少ないライフスタイルなので、年に1回か、多くて2回ぐらいだが。年に0回のこともある。でも、好きではある。ああいったカレー屋で提供されるデカいナンって、実は日本でしか見たことがない。バターが塗ってあって、そのバターが地獄のように熱く、ちぎりながら食べるやつ。ちょっと甘みがあるやつ。

僕は2008年に4か月インドにいたが、一度もあの手のナンに出会ったことがない。僕が滞在したのは北インドのウッダルプラデシュ州というところで、デリーに2か月、バラナシに2か月いた。「インドって何食べてもカレー味なんでしょ」と誤解している日本人は多い。ある意味ではそれは真実なのだが、インドの食文化は本当に多様で、地域によって様々なナン、チャパティ、カレーがある。インドって何食ってもカレー味、ってのは、日本食って何食っても出汁の味、って言ってるのと同じぐらい「解像度が低い」話しなのだということを僕は4か月の滞在で学んだ。

デリ-にいた頃歩いて行けるところに「パンジャブ」というカレーの名店があり、そこで食べたナンが一番、日本で提供されるナンに近かった。それ以外の場所では、ナンではなくチャパティの割合が高かった。僕が2か月滞在した家では奥さんが毎朝チャパティを焼いていた。小麦と水と塩を混ぜて、マスタードオイルみたいなやつをチャパティ用のフライパンに塗りたくり、そして焼く。本当にそれだけ。これがけっこう美味い。飽きが来ない。日本に帰ってきて真似してみたが、まったく同じようにいかない。

あと、僕が食べた「人生最高のインドカレー」は、2019年に3週間ほどインドを再訪したとき、バラナシの友人の子ども(2008年のときに7歳、再会したときは18歳になっていた)が、バイクの後ろに載せて連れて行ってくれたバラナシ市内のカレー屋のチキンカレーだ。マジであれは美味かった。そういえばあのナンも日本で提供されるナンに似ていた。まったく同じではないけど、バターがたっぷりかかっていて、ふっくらしていた。あのチキンカレーは本当にヤバかった。何が違うというのは曰く言いがたいのだが、辛さの勢いと深みと味の複雑さと、すべてが破格に美味かった。多分海外でチェーンの「一蘭」に通い詰めた外国人が博多を訪れ屋台の名店で豚骨ラーメンを食べたらこんな気持ちになるんだろうか。世界の「食」というのはやはり現地に行くとその本当の実力が分かるものだ。


+++++++++++++++++++++
『800文字のあいうえ大喜利』最新記事は、
以下の無料メルマガを購読していただきますと、
毎週あなたにメールで届きます。
よろしければご登録ください!


いいなと思ったら応援しよう!

陣内俊
NGOの活動と私塾「陣内義塾」の二足のわらじで生計を立てています。サポートは創作や情報発信の力になります。少額でも感謝です。よろしければサポートくださいましたら感謝です。