【プレイヤー】 と 【プロデューサー】
現状、お笑い芸人界においては「ダウンタウン」さんの一人勝ちの様相を呈しているように感じている。
もちろん活躍している芸人さんはたくさんいるが【持続性】という意味で残り続けていくであろうな…と思える最強の人材はダウンタウンさんではないかと。
あまり覚えている人も少ないかもしれないが、実はダウンタウンさんも「オワコンの危機感」を漂わせた時期が一瞬だけあった。
『ダウンタウンのごっつええ感じ』が終了した時だ。
『ごっつ』の打ち切り後、1回だけ”復活”を果たしたけれど視聴率が全然振るわなかった。
そのため、あの時は「ダウンタウン、終わった」みたいなニュースや掲示板の書き込みを多数見かけたものだ。
『ガキの使い』はじめ『HEY!HEY!HEY!』や『ダウンタウンDX』などの人気番組を抱えていたものの「THE お笑い芸人としては一時代を終えた」感が流れたのだ。
ちなみに、『ごっつ』が終了した頃から2000年代初期にかけて、お笑いバラエティ番組は「コント」より「ゲームコーナー」が重視されていくようになっていた。
『笑う犬』とか『はねるのトびら』とか…番組内でコントもあったけど、メインはゲームコーナーへと置き換わっていった記憶がある。
”ギリギリッス”とか”回転SUSHI”的なものが圧倒的に増えたり。
同じく、『めちゃめちゃイケてるッ!』も初期はコントとかあったけど、中盤から後期になるにつれゲームコーナーの比重が高くなっていったように思える。
”数取団”とか”七人のしりとり侍”、”オカッチ&ミヤッチ”みたいな企画とか。
ゆえに、コントで株を上げたダウンタウンさんに「オワコン」の空気が流れたわけで…。
「その頃のバラエティは? お笑い番組はどうなっていた?」かと言えば、『全員正解あたりまえ!クイズ』や『クイズ!ヘキサゴン』といったファミリー層で楽しめる番組が増えていき、お笑い系の番組は『エンタの神様』『オンエアバトル』といった、純粋にネタを楽しむための【専門】の番組へと分離。
ちょうど『M-1グランプリ』や『R-1ぐらんぷり』などの大会が始まった時期が重なったこともあり、集団コント的なお笑い番組は徐々に衰退していった印象だ。
というのも、(手元に視聴率データが無いのでおぼろげな記憶でしかないが)当時は視聴率の指標はバリバリの「世帯」だったため、家族の誰かが見ていれば数字にカウントされていた。
で…! 家にいるのがたいてい高齢者、テレビを見るのも高齢者。
なので、若い人が好む「お笑い」より、中年〜高齢者が興味を持つ「情報」を重視した番組が人気を得ていた&増えていった時代だった。
『おもいっきりテレビ』とか『発掘あるある大辞典』的な番組が。
こうしてより若い芸人たちとの世代交代が進む中…。
ダウンタウンさんが取った戦略、それは「フォーマットを生み出すこと」のように感じた。
自らが現役でプレイヤーを努めつつ、プロデューサーとしてもソフトウェアの開発に力を注ぐっていう。
笑ってはいけないシリーズ(2003年〜)
すべらない話(2004年〜)
キング・オブ・コント(2008年〜)
IPPONグランプリ(2009年〜)
ドキュメンタル(2016年〜)
『キング・オブ・コント』に関しては…M-1、R-1を受けて必然的に誕生したコンテストかもしれないが、やはり『ごっつええ感じ』で人気を得たダウンタウンが進行&審査員やることに意義があったと思う。
こうして、トーク・大喜利など…今へと続く「お笑いのフォーマット」を続々とプロデュースしていったのだ。
もちろん、完全に軸足をプロデューサー業に移行しているわけではない。
『ガキの使い』では率先して体を張っているし、年末の『笑ってはいけない』シリーズでは「老人虐待か!」ってぐらい、あの年齢でお尻を叩かれまくっている。
他のお笑い芸人さんで、これほどメジャーなフォーマットを生み出している人って…今のところ誰もいないよね?
『ぐるナイ』の「ゴチになります」や、『いきなり!黄金伝説』の「帰れま10」などは【超絶優秀なフォーマット】であるが、あくまでナインティナインさんやタカアンドトシさんは”プレイヤー”であって”プロデューサー”ではない。
一方!
お笑い芸人である以上、舞台(板)の上に立つのが当然!
という考え方を守り、未だ新作の漫才やコントを作り続けている芸人さんも少なくはない。
ただ、【プレイヤー】である以上は、どうしても流行り・廃りが出てしまうのが世の常というか…。
舞台のチケットはすぐに完売するし、ファンも生で漫才・コントを見られて満足して帰っていくので、そこからは人気の衰えなどまるで感じられない。
が…テレビに限って言えば、レギュラーの本数が気付かないぐらいゆ〜っくりと少なくなっている大御所たちも結構出てきている。
新しく始まったとしても、地上波の19〜23時での冠番組はなく、ABEMAとかGYAO!とかのネット番組だったり…。
ナインティナインさんも『めちゃイケ』が終了したあたりから、コンビとしてゴールデン帯の新レギュラー番組とかが立ち上がらなくなっているものかと。
個々では『チコちゃんに叱られる!』だったり『アウトデラックス』だったりで活躍しているものの、コンビでやるのは単発ばかりでレギュラーが一向に始まらない。
代わりにテレビのゴールデンタイムでMCを務めることが多くなっているのは、サンドウィッチマンさん、千鳥さん、かまいたちさん…といった一回り若い世代の芸人さん。
こうした世代交代は【プレイヤー】である限り、どうしても避けられない宿命な気がする。
放送作家も芸能人と同じく、年齢を経るごとに仕事も呼ばれにくくなっていく。
ディレクター時代から一緒に組んで二人三脚でやってきたプロデューサーが、ある程度の年齢になると現場から管理職へ異動してしまうからだ。
で、新しく現場を仕切るようになった若いディレクターやプロデューサーが、わざわざ自分より年上の作家を使うのは気を遣うから…と、同世代〜年下を雇う傾向にあるので呼ばれなくなるわけだ。
昔から「こうなる」は分かっているので、先見の明がある人は放送作家事務所を立ち上げ、若手作家をプロデュースしてそのマネージメント料で食い扶持を維持するようになる。
ダウンタウンさんも、今の若手芸人と漫才やコントで戦ったら「100%勝てる!」とは言い切れない。
それを、プロデュースする方面…いわゆる「神の視点」ポジションを確立することで、「面白い若手を掌の上で転がしているスゴイ人たち」感を演出しまくっているんだと思う。
以上のように考えた結果!
結論としては「ダウンタウンって本当にスゲー」ってことで(笑)。