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いわき、最終戦で3-0快勝

明治安田J2リーグ 第38節

 サッカーのいわきFCは10日、ホームのハワイアンズスタジアムいわきでザスパ群馬と今季最終戦を戦い、3対0で勝利した。いわきは13分に山口が加瀬のクロスを押し込んで先制。群馬の拙攻も手伝って試合を優位に進め、終盤の78分にまたしても山口が山下の右CKを頭で合わせ、2点目を決める。89分にも山口が起点となったカウンターから熊田が抜け出し、最後は有馬が滑り込んで3点目を挙げた。4試合ぶりの勝利で今季を締めくくり、先発出場した田中の引退にも花を添えた。Jリーグ参入3年目、J2リーグ2年目で迎えた今季の通算成績は、15勝9分14敗の勝ち点54で9位。昨季の18位から大きく順位を上げた。

サポーターのために、「勝たなきゃダメ」

 いわきの2点目が決まると、チャント「Allez Allez Allez」に合わせてゴール裏が揺れ、メインスタンドもバックスタンドも「I・W・K」のポーズを作る。Jリーグクラブがこの街にできた喜びと、かつてテレビを通してしか見ることのなかったあの街を訪れる楽しさ。全身で応援する斬新なスタイルは、今季、サッカーに対する浜通りの心情をよく体現していた。

 チケットはこの日も売り切れで、5,034人が来場。キッチンカーには長蛇の列ができ、子どものためにカステラを買い求めていた湯本在住の40代男性は「買うのも大変だ」と苦労をにじませつつ、休日の家族サービスに勤しんだ。クラブが目指してきた「この街のシンボルになる」という理想は、加速度的に実現しつつある。仕事で観戦を見送った小名浜在住の40代男性は、ハワスタへ参戦した家族にこの日から発売された「ラバーキーホルダー(フラシティいわきFC柄)」の購入を託し、湯本に住む60代の女性は車で孫たちの送迎を担当。震災で損なわれそうになった地域の輪が、いわきを結節点として再び繋がりを取り戻そうとしている。

写真=最終節も大活躍のハマドリとリフラくん

 それだけに勝利こそが重要と、家族と観戦に訪れた40代の女性は力説する。「サポーターは試合前から何時間もかけて並び、たくさんのお金を費やし、あれだけの熱量でチームを応援している。それにはやっぱり勝って応えないとダメ。せめて一生懸命にプレーしてくれなきゃ、お客さんに対して失礼だよ。誰のお金で生活できているのか、選手たちはそれを理解してプレーしなくちゃダメ」。

 クラブもその点は認識しているはずだ。1月に開催した今季の新体制発表会で、大倉社長は「我々は、育成クラブではない」と公言。サポーターを魅了し続けてきた「魂の息吹くフットボール」も、勝つための手段であると喝破した。勝利を追求する姿勢が前提にあり、浜通りの復興と成長はその延長線上に存在している。

 その文脈で言えば、J1昇格とはいかなかったものの、今季の躍進はサポーターをまずまず満足させられたのではないか。有田、岩渕、宮本、家泉といった主力選手を引き抜かれたなかでも、西川や堂鼻といった移籍選手をうまく組み込みながら、何度もサポーターに歓喜をもたらしてきた。小学3年生のサポーターは今季のMVPに立川の名を挙げる。立川もまた、今季から移籍してきた選手の一人だった。

 11日には小林ヘッドコーチと武田GKコーチの契約満了が発表され、早くも来季への編成が始まった。2月14日の来季開幕まで、3か月あまり。昨季同様、いわきは選手の出入りが激しいストーブリーグを過ごすことだろう。そのニュースに一喜一憂しながら、浜通りはまた2025年の熱狂空間を待ちわびる。今年もありがとう、いわきFC。

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