見出し画像

いわき、連敗で8位に後退

明治安田J2リーグ 第29節

 サッカーのいわきFCは8月31日、アウェイのユアテックスタジアム仙台でベガルタ仙台と対戦し、0対2で敗れた。いわきは前半から相手に主導権を奪われ、8分に先制点を許す。その後も反撃の糸口を掴めず、前半を0対1で折り返した。後半は早めに選手を交代したいわきが、右サイドを中心に攻め立てる。しかし決定機を作り出せずにいると、73分にCKから追加点を奪われ、そのまま零封された。前節に続く2連敗となったいわきは、12勝7分10敗の勝ち点43で足踏み。順位を8位に下げた。次節は7日にアウェイの白波スタジアムで鹿児島ユナイテッドFCと対戦する。

攻守に完敗、次戦以降の奮起に期待

 山下が完璧に逆を突かれた先制点の他にも、開始早々の3分に左サイドを崩された場面、28分に右サイドのクロスからダイレクトボレーを許した場面、後半開始直後にクリアミスからペナルティエリアへの侵入を許した場面と、立川のファインセーブがなければ2失点では済まない試合内容だった。夏場の疲労からか、ボールや相手選手への反応が遅れる瞬間も多々見受けられた。競り合いの判定で千葉ボールが多かったのも、いわきが仙台よりわずかに遅れを取っていた証拠だろう。有馬の右サイド、熊田の先発といった大胆な選手起用も、実を結ばなかった。

 ただ、いわきのサポーター(8歳)が「下田は頑張っていた」と評するように、最近出番の少なかった下田や、後半からの出場で持ち味のスピードを披露した加瀬のように、途中から出場してきた選手が鬱憤を晴らすようにピッチを駆け回る姿も見られた。飛ばし過ぎたツケが来たのか、2点目を奪われた後はガス欠のような状態になっていたが、競争原理のなかで選手が遮二無二ボールを追う姿こそ、クラブの求める理想だろう。東北の先輩クラブに喫した今季初のシーズンダブルが、浜通りのさらなる成長を導くはずだ。

収穫はアウェイ旅のすべてに

 今節は隣県での開催とあって、ユアテックスタジアムには大勢のいわきサポーターが駆け付けた。ハーマー&ドリーの赤いTシャツを着て地下鉄南北線に乗り込んだという10代の女性は、車内でベガルタゴールドに身を包んだ仙台サポーターに囲まれ、「圧倒的アウェイ感で怖くなった」と、J1級のサポーターの数と熱量に圧倒された様子だった。一方、仙台城や松島も観光で回ったという40代の女性は、牛たんにずんだ餅、ホタテに芋煮と、宮城の食を満喫。スタジアムグルメの回転率が悪かったことに苦言を呈しつつも、杜の都で食欲を解き放ち、東北経済を回したことに満足げな表情を浮かべた。

 駅前の高層ビルを眺めても、仙台は東北一の街として揺るぎない地位を確立している。伊達氏の繁栄という土台を利用し、仙台駅を中心に大きな経済圏を作り上げた仙台の真似は難しいだろう。浜通りは平、小名浜、湯本……と小さな町の集合体だからだ。だがその広さと地域ごとの独自性が、浜通りの面白さでもある。いわきFCをシンボルに掲げながら、仙台とは異なるベクトルで東北一を目指す。バラバラなはずの老若男女が「Allez Allez Allez」を一緒に楽しんで踊っているゴール裏には、すでにその萌芽が見て取れる。アウェイへの旅を繰り返す中で、浜通りにしかないものに気づき、育む。その繰り返しが復興と成長に、きっと繋がっている。

写真=仙台城の伊達政宗像



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?