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黒猫様のお楽しみ vol.3

〈網戸事件〉
 フラットさんは身体が大きい。となると、力もそこそこ強い。
 換気のためにベランダへのガラス戸を開け、網戸だけにしていたときだった。
 カチャカチャカチャ、と音がする。見ればフラットが器用に網戸を開けようとしているではないか。
「だめー!」
 私が見ているなかでベランダに出るのはかまわないが、勝手に出ることを覚えられては困る。というか勝手に開けられては困る。虫も入るし。
 こういう対策はどうすればいいんだ、とネットで検索し、私は百均で長方形のワイヤーネットを買ってきた。これをガラス戸と戸枠の間に挟めば、換気はバッチリ、猫は網戸に手が出せまい。ふっふっふ。
 と思うじゃん?
 フラットさんは身体が大きい。となると、伸びるとそこそこ長い。
 次には、横にしたワイヤーネットの上の網戸をカシャカシャやっているではないか。
 いやー、でもその体勢で開けるのはさすがに無理でしょ。開く気配もないし、好きにさせとくか。
 と思ったのが間違いでした。
 確かに開かなかった。網戸は開かなかった。その代わり、網戸は、破れたのだ。
「あー……」
 厳密には「破れた」よりも「外れた」、或いは「抜けた」だろうか。フラットが網の端っこを押し続けた結果として網が引っ張られ、角がびろーんと開いてしまったのだ。
 猫が通れるほどは大きくないのだが、これでは網戸の用を為さない。私はため息をつきながら網戸修理について検索し、結構かかるなーと思って、自分で修理するグッズを買うのだった。
 ガラス戸の開けられるスペースは狭くなるけど、ワイヤーネットは縦にした方がいいようだな……。

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〈ベランダにはハーネスつけて〉
 もしも万一、避難するような事態になった際はハーネスが必要だし、普段から慣らしておいた方がいい、という話を聞いた私は「なるほど」と早速ネットで調べ、よさそうなものを購入。寸法を測って、2Lサイズを手に入れた。
 黒猫に赤いハーネスは映えるね! かわいいよフラット!
 にこにこしながらも、私はちょっと内心で沈黙していた。
 ……2Lのハーネス、きつくないかな……? マジックテープがぎりぎりである。うーん、肩の辺りはちょうどいいんだけど、胸部にかけてぐんと大きくなりますもんねえ。そこかあ。
 着用できないことはないけど、3Lを買い直した方がよさそうだ。全く、金のかかる男だな!(にこにこしながら)

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〈猫じゃない何か事件〉
 久しぶりの友人が家に遊びにきた。猫を見ることを兼ねて。
 フラットは全然人見知りをしないので、知らない人がきても逃げ隠れたりしない。少し緊張はするようだが、警戒にはほど遠い、という感じだ。
 その日ものそのそと客を歓迎にやってきたフラット。
 見た友人は、目を見開いた。
「えっ、でか……これ、猫じゃないでしょ。猫じゃない何かでしょ」
 そ、それはないんじゃないかい!? 私も最初はびっくりしたけど、猫じゃないとは思わなかったよ!?
 ……あれ、いや、どうかな……もしかしたら言葉にしなかっただけで近いことを思ったかもしれないな……?
「何食べさせたらこんなになるの?」
「知らないよ! きたときからこうだもん!」
 容赦ない問いかけに私は笑いながら叫んだのだった。
(物言いが酷いように見えるかもしれないけど、この友人は動物好きで犬猫グッズ作ったりしてるいい人です!)

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〈早く出して事件〉
 マンション暮らしをしていると、何かと業者の人が入ってくる機会がある。清掃の人、火災感知器を確認する人、あとは家電が壊れて修理を頼んだという場合も。
 そういうときフラットには、原則としてキャリーバッグに入ってもらっていた。はじめの頃は目をまん丸にしたまま大人しくしていたが、回を重ねるごとに不満声が洩れ始めた。
 あるとき、あんまり酷く鳴いて、キャリーバッグのなかでバタバタ暴れていたので、解放するときに「ごめんごめん、待たせたねー」と謝りながら出したのだが、フラットさんそのままトイレへ一直線。そ、そういう事情でしたか! ご、ごめんね、本当に!
 不満声はこのあともキャリーバッグに入れるたびに出たけど、ここまで暴れたのはこのときだけでした。必死だったんだね、ごめんよう。

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