垂直少年と水平少女の変奏曲〜加納円の大いなるお節介と後宮の魔女達~
第19話 秘密結社と少年と後宮の魔女達 28
OFUは、かつて火あぶりにあったり。
首をはねられたり。
化け物退治と称する人間狩りで嬲り殺しになったり。
そんな酷い目にあった人達の生き残りが作った組織だ。
迷信や信仰が理性と法より力のあった時代。
弾圧を受けたドナム保持者達が作った互助会がルーツだ。
そんな組織で千年以上もお局様をやってきた古狸。
平安時代の朝廷で中宮に仕えていた海千山千のシスター藤原が妙にしおらしい。
僕らには言えないダーティーなことにだって手を染めてきたろうしね。
シスターの千年は綺麗ごとだけでは済むはずのない年月だったはずだよ?
僕らが特別なのだと腹をくくったのか。
問題解決を先送りにしただけなのか。
取り敢えずは入会の誓いを立てさせられただけでこの日はそのまま放免となった。
OFUはその性格上、古株の会員ですらその実態を把握しきれないような仕組みになっている。
組織はお互いが絡み合う網の目の様なグループで構成されている。
網の目の結節をシスター藤原みたいな古参のデータベースが務める。
網を構成する紐の部分がブランチを呼ばれる会員のグループになる。
ブランチの長さは構成人数で決まるのでグループによってまちまちだ。
結節はグループ内にいくつかあるのが普通で、それぞれが別のブランチとつながると言う仕組みになっていた。
データーベースを務める人は、複数のグループを掛け持ちしているってこった。
そうしてブランチ相互はいくつかの結節を通じて他のブランチとつながり、組織全体のまとまりを保っている。
網の目は立体構造になっていたからシスター藤原みたいな古株の結節はたくさんのブランチと繋がっている。
それでも、遠いブランチの情報はあえて知ろうとは思わないそうな。
情報の厚みと言う視点で見ると、組織のウイークポイントは結節を勤めるデーターベースであることは明らかだ。
そこで古来より、データーベース各員は即効性の毒物を隠し持つことが慣例になっているそうだ。
芋蔓式に会員の素性がバレないようにとの配慮らしいが損な役回りでもある。
会議室を辞去する際。
「私のことも守ってくださいましね」
なんて桃の香りがする息で囁かれた。
シスターの実年齢を知ってたって思わずクラっと来たよ。
だけど察しの良い三島さんと先輩に即読みされて瞬時に頭をはたかれた。
橘さんに殺気が走り秋吉が曇りの無い瞳で僕の目を覗き込む。
今や“あきれたがーるず”全員が僕を読めるようになっちまった。
それも一方的に。
淑女諸姉に平身低頭涙目で謝っているとあれだ。
「頼りにならない殿方ですね」
なーんて。
僕の感覚を覗きに来たシスターに舌打ちされて睨まれたんだぜ。
いつだって理不尽すぎる女の人たちの仕打ちにはげっそり辟易だよ。
ところで。
『ロリも熟もちょっちね』って、それ僕の本音ですから~。
みんなは心を読むくせに、僕のリビドーのありかが分かってないよなぁ。