QUELL 「Because you are」感想
はじめに
2回目の感想まとめです。まずどの曲から行くべきかと考えました。そしてここはやはりアニメ1期の主題歌だろうと決めました。デビューは確かにBILEVERですが、こちらはプレデビュー曲でBecause you areがメジャーデビュー曲というイメージがあるからです。
また今回から思い込み満載の和泉柊羽考察も織り込まれていきます。ついでに私がちょっとずるをしていることも白状しておきます。私はQUELLのデビューから推しているわけではありません。ある程度リリースされた状態から追いかけたため、推測する材料がそろっていたのです。デビュー当初から追いかけていた人からすると印象が違っていると思います。
仮定
和泉柊羽の仮定として幼少期に両親がおらず仕事優先のおばと共に暮らしていたことで家族愛が著しく不足していた。
12歳?でアイドルとしてデビュー。思春期の多感な時期に初めて家族愛に似たものに触れる。それが篁志季である。不足していたからこそ、その理想は柊羽の中で巨大になっていたのではないか。無償の愛、親愛、友愛、理屈のいらない信頼の置ける人間。血縁が少なく、外見もハーフであることからどの集団にも溶け込みにくかっただろう。はぶかれることはなくても同じではない。
だからこそやっと見つけた自分が属してもいい共同体に必死にしがみつくのは人間なら当たり前なことではないでしょうか。
まず、世間一般には両親に育てられるのが当たり前。しかし柊羽の場合は世間よりだいぶ早い段階で両親がいない。その事実は受け止められる。しかしこの先もいないのか。周りは当たり前に持っているものが自分にはない。両親ではないにしても『家族』は。(おばは家族というより血縁者あるいは保護者が近いのだろう。)家族に属せるとしたら結婚?小学生の子供だったらと考えてほしい。結婚なんて一体どれほど先のことで遠い未来の話か。仮に結婚したとして家族愛を知らない自分はちゃんと愛せるのか。
だからこそ、『今』出会える居場所を欲していたのではないか。
志季や元ユニのメンバーに対してきっと最初は「兄がいたらこんな感じなんだろうなあ」くらいだったと思うのです。充実した活動を続けるうちに考えるのです。
これからの人生で同じような出会いがあるだろうか。
『無い。と思う。』
これが結論だったんじゃないでしょうか。
スケステep.9で昔の柊羽は「聞きたがり柊羽くん」でよく人に何でと質問していたと志季は語ります。いいことですが、裏返せば幼い和泉柊羽の心が生きていくための術だったのでは?幼児がなんでなんでと大人に何でも聞くのとは違ったのではないかと思うのです。
世間一般には当たり前に親がいて親戚がいる。それが人生スタート時点から失っている。普通よりもだいぶ早い段階で失っているのです。仮に結婚したとしてそもそも家族を知らない自分が家庭を持ったとして正しく愛せるのだろうか。
志季に出会って、兄弟のようなつながりを知る。元ユニのみんなもいい人ばかりで居心地がいい、無条件でいてもいい居場所、あるいは共同体。
居場所を失いたくない。
だから常に仕事があって誰かに必要とされる人間でいたかった。
そのための努力を惜しまなかった。
人当たりのいい人に好かれる『和泉柊羽』になった。
完璧を目指した。失ったものは戻らないから。
篁志季の脱退。
急すぎる。柊羽の心の中はまさに嵐が吹き荒れたはずだ。
どうして???
俺が要らない?邪魔だった?/捨てられる
俺はこんなに兄のように慕っているのに。/お前にとっては俺なんてどうでもいい奴だったのか。
このユニットはどうなる?/志季が責められるのは見たくない。お前は悪くない。
この楽しくて満ち足りた生活がずっと続くと思っていたのに。/永遠なんかないんだ。幸せはいつか過ぎ去っていくものなんだ。
志季も結局は他人で家族になんて俺にはなれないんだ。/俺は一生独りで生きていくしかない人間なんだ。
無条件にいてもいい居場所。憧れた家族の中にいる自分。崩れた永遠という幻想。
ここで矛盾に気づいたでしょうか。
ここでいう「無条件に居てもいい居場所」は私が仮定した柊羽の望みですが、あなたは自分が家族と一緒に居る時、なぜそこに居てもいいのか疑問に思ったことはありますか?居心地の良し悪しはおいておいてもそこに理屈は必要ない人が多数ではないでしょうか。
矛盾というのは無条件と思いつつユニットというつながりが無くなれば柊羽は見捨てられると思っているところです。和泉柊羽という個人のつながりではなく、あくまでユニットという繋がりが前提になっているのです。それは無条件ではない。
その矛盾に気づいていないからこそ、柊羽はあそこまで志季を引き留めたし、ピアスも開けたのだ。完全は存在しないと。戒めのように、当てつけのように。
他のメンバーは柊羽より少し大人だからたとえ志季が脱退しようとも縁が切れることはないとわかっているからこそ痛みをのんで引き留めることはしなかったんだろう。もちろん心は傷ついているが。
志季が脱退してからも元ユニの活動はしばらく続く。その時間は生々しい傷にかさぶたは作ってくれたかもしれないが、傷跡は大きく残っている。もう、柊羽が無条件に居てもいい居場所は無くなったのだ。この先も。
それは大海をいかだで一人漕ぎ出すのに似ているかもしれない。目指したい場所も帰る場所もないのに漕ぎ続けなければいけない。途方に暮れそうな旅路を生きていく。
そんな時に出会ったのが堀宮英知かもしれない。まっすぐに『自分』に向けられる好意。普通に接してくれる同年代。自然に気遣ってくれて不思議と人のテリトリーに入るのが上手でそれが不快じゃない。
大海を漕ぎ続けるのに疲れた時にしばし休める港のような人。ずっと一緒じゃなくてもいい。たまにでいいから、少しの居場所になってくれる人。そう思わせる何かが英知にはあったんだろう。
と、最後に推しを持ち上げたところで楽曲考察に移りましょう。
「Because you are」
プロアニ1期のOPです。4ユニットが一曲ずつダンスor演奏映像と共に披露します。
ちょっとメタいですが、アニメ化は新規客の獲得につながりやすいです。私もQUELLについてちゃんと知ったのはアニメからです。QUELLのファン以外の人もQUELLを見てくれる大きなチャンス。だからこそ私はメジャーデビュー曲と表現しました。
ドストレートなタイトルに反して歌詞の内容は難解です。文量は少なく掴みどころがない。それがQUELLで和泉柊羽の唄だといえばそれまでですがもう少し解体しましょう。
まずyouとはだれか。アイドルが歌うならファンに向けてでしょう。私もずっとそう思っていました。でもそれにしてはファンに寄り添わない内容の歌詞です。タイトルから離れてこの曲の立ち位置を考えてみましょう。メジャーデビュー、多くの人の耳に届く曲。媚びるのではなく、これがQUELLだと初めて聞いた人にも知ってもらえる曲。代表曲。
youとは誰か。英知であり、壱星であり、壱流であり、QUELLであり聞いてくれる誰かであり、遥か先に立つ志季でもある。
カラオケで歌ってみてほしい。この曲がいかに難しいかよくわかる。そんな唄を柊羽はほぼ新人の3人に大舞台で唄わせるのだからプロデューサーとしての『新人だからって舐めないでいただきたい、うちの子たちは俺のおまけじゃありませんよ。きちんと実力を持っています。』という攻めの姿勢と柊羽のQUELLに対する信頼と作曲家としての自信が伺えてこわいくらいです。正直ここで終わってもいいくらいなのですがもう少し掘り下げてみましょう。
和泉柊羽は曲を書くにあたって「どうしてそうなって何を伝えたいか」が明確にある人な気がします。ではこの曲ではなにか。
『あなたがいるから。』
でしょう。わかりやすいですね。ではどうしてそうなったか。
そうなったがQUELLの活動だとすれば、どうして柊羽が自分でプロデュースしてユニットをもつことになったのか。社長の一声?いいえ。志季が脱退して一人になったから。
あなた(志季)がいたから、QUELLに出会った。
あなた(志季)がいるから、この道を進む。
志季と同じようにプロデューサー兼リーダー兼作曲家として活動する。柊羽が見据える将来、視線の先には常に志季の背中があったはず。
スケステで柊羽役の田中稔彦さんがQUELLは常にSolidSに追いつき追い越せと頑張っていると言っていました。それはQUELL内でも柊羽と3人の関係でもあったのですが…そこは置いておきましょう。
このままではQUELLの唄なのに昔の男を歌う浮気者ですよね。これはあくまでもどうしてそうなったか。過去の話です。「なにを伝えたいか」現在の話をするからQUELLの唄なんです。
端的に言えばQUELLがいるから私は生きていける。
あはは、重いですね。まあそんなのは志季に家族としての居場所を求めていたことからわかっているので今更ですね。
「なぜ僕らはこの星に降り立つ」
柊羽パート。星、銀河のように数多の星がきらめく芸能界で、なぜ柊羽はQUELLという星を選んだのか。
「誰に出逢ったのかも知らず」
壱流パート。初めて北海道で柊羽に出会ったとき、壱流は柊羽を知りませんでした。
「定めがあってこの海を泳ぐ」
英知パート。定めという言葉の意味には運命があります。『海』が芸能界で生きていく柊羽の人生観なら、海=銀河=芸能界で活動するという意味でしょうか。
「過ぐる日を受け止める人がいる」
壱星パート。壱星の過去を知る人は壱流か施設の人しかいませんね。壱流がいる。それだけだと???となりますがここがヒントでもあります。壱流がいるから。とすれば何の理由なのか。
4人のアイドルである理由がこのパートには書かれているのではないでしょうか。
柊羽はわからない。でも双子(よくモチーフに星が使われるから)とやりたいという直感を信じる。
壱流は、柊羽に出会って誘われたから。
英知は運命じみた数奇な縁があったから。ADというどちらかといえば芸能界を渡るほうではなく係留する側からアイドルという泳ぐ側へ。
壱星は壱流がいるから。
と序盤は推測できたわけですが、いかんせん歌詞が難しい。のでこうかなとあてはめられるところだけ抜粋しますね。
「絆は誰にも壊せない いつかは真意を解りたい」
QUELLをつなぐ絆はこの時点でもう強固なものになっていたようです。しかし考え続ける柊羽はさらに真意を求めるようです。石橋を叩くように偶然なのか運命なのかわからない出会いの理由を解りたい…。なんというか柊羽らしい。
「明日は誰にも知りえない 誓いや嘘なんかいらない」
明日は誰にもわからない。それは決まってないんだから自由だよという意味か、明日も何事もなく日常が訪れる保証なんかないという意味か。私は後者のように思えます。
誓い=嘘、反対の印象を受ける言葉が同じ意味、並列であるようです。誓いは未来への言葉ですね。嘘は過去を誤魔化したりだますのに使います。この2文はなぜ歌詞に組み込まれたのでしょうか。「いらない」という言葉は意志を感じる言葉ですよね。では込められた意志は何なのか。
不確定な明日より破られる約束より誤魔化した過去よりも「現在」を大事に生きる。どうでしょうか、意味が通りそうじゃありませんか?
実際「There is no time like the present」という歌詞があります。訳は今に勝る時はない、現在が一番だ。英語話者で使われる決まり文句らしいです。ここがつながると思ってなくて自分でも少しびっくりしています。
「夜を灯す光となって」
独りだった柊羽が孤独な夜の海をさまよっている時に出会った灯台のような英知。
「生きる喜びを感じて」
ただ生きるだけじゃなくて、QUELLで活動することで心から喜びを感じられて
「愛の導きを悟って」
月野社長が何で柊羽に自分のユニットを持つことを提案したのか悟って
「安らぎと輝きを」
唄を聞いてくれる人に安らぎと輝きを届けたい。
「時間は止まってくれない 時には滅びをも辞さない」
こーれは志季脱退の件じゃないですか?
「私が地上を離れない謂れは あなたがいるから」
あなた=志季、私=柊羽。あなた/私。
地上=柊羽が立つ場所、志季がいる場所=?。地上の対義語は天空。
空に志季(あなた)がいるから、柊羽(私)は地上を離れない。
謂れ(意味:由緒、物事が起こったわけ)と表現するからにはもう少し内容がありそうですよね。考えてみましょう。
天空にいる志季と一緒にいるには空を飛べないといけないですよね。しかも月に落ちてもいいというくらいの男ですからかなり強靭な翼を持っていないと先に墜落しそうです。柊羽の名前には羽がありますからもしかしたら柊羽ひとりなら空を飛ぶことはできたかもしれません。でもふり落とされた。だから柊羽は羽を持たない仲間と共に地上を歩いて志季を追いかけることに決めた。離れないという言葉は離れることが可能だから出てくるのだから。これは柊羽の選択であり決意なのです。
どんなに遠くてもQUELLの4人で地道に歩いてSolidSの志季の背中をおいかける。
おわりに
さて、いかがだったでじょうか。Because you areはその名の通り、あなたがいるからというメッセージが主題です。そこにいくつものストーリーや意味が重ねられていてシンプルなのに深みのある曲です。透き通った泉のようですね。
この度も長々とお付き合いいただきありがとうございました。