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J3 第15節 レビュー【鹿児島ユナイテッドFC vs カターレ富山】新体制の始まり

2021.7.10 J3 第15節
鹿児島ユナイテッドFC vs カターレ富山

こんにちは。
今節もご覧いただき、ありがとうございます。

北薩は大雨で大変でしたが、在住の方はご無事だったでしょうか。
僕の実家も周辺なんですが、駅前があんなことになったのは見たことが無いので心底驚きました。皆さんのご無事をお祈りしています。

そんな今節のお相手は富山。
富山はここまで13試合7勝4分2敗、首位を走っているチームです。

ここ最近のリーグ戦や天皇杯を見ていましたが、以前に見た時と今節の振る舞いは少し変化があったように思います。それは後ほど。

鹿児島としては、上野監督が指揮する初陣でした。
上野色を出すには難しい準備期間でしたが、少し違いが見えていたとも思います。

早速、今節も振り返っていきます。
よろしくお願いします。

0.スターティングメンバー

TACTICALista_2021H富山戦スタメン

スタメン振り返り行きましょう。
まずは、鹿児島。

前節からはグスタヴォに代わり、萱沼がスタメン復帰。グスタヴォ負傷の影響もあるでしょうが、戻ってきましたね。まぁ、そうなるでしょう。

その他はメンバー変更なし。
少ない準備期間でしたし、上野監督も言う通り、良い流れを引き継ぐ人選となりました。

またベンチメンバーを見ると、石津が久しぶりにメンバー入り。2枚のCF枠の1枠が空いて、誰を入れるとなった時に石津が選ばれたことからは、良い競争が生まれている状況が窺えます。

続いて、富山。

フォーメーションは3-3-2-2。
前節からはWBの13番安藤に代わって、50番田中が入りました。安藤はここまで13試合で全て先発でしたが、どうしたんですかね。

とにもかくにも、代わって入った50番田中。甲府がJ1にいた時のイメージはあったんですが、年月も経ち、特に対人を見ていると切なくなりました。まあ、米澤相手だったというのも勿論ありますが。

富山の変更もそこのみで、幕を開けた今節。
まずは富山の出方と鹿児島の対応から振り返ります。

1.富山の出方と鹿児島の対応

まずは、ボール非保持から。
ゾーン2〜3では積極的な前プレを行っていました。
2トップでCB、IHが鹿児島SBをケアします。

以前は、WBが出てきてプレスを掛けていたと思うんですが、今節はIHが対応。鹿児島はSHに脅威な選手がいるので、あくまでWBはSHのケアを優先したのかなと思います。

一方で、FWがGKまで追うなどしてプレス起点がズレたときにはWBまで前進して、プレスを嵌めてきました。

このように人への意識が強い傾向は、富山全体に見られており、萱沼が下がって受けようとする時にもCBが付いてくる場面が何度もありましたね。

一方で、ゾーン1まで攻め込まれると、素直に5-3-2に移行していました。とはいえ、前線で前プレに人数を掛けるので、ネガトラで追いつけない現象もよく起きていたと思います。

続いて、ボール保持。
ビルドアップはCB3枚とアンカーの3-1、あるいはIHが1枚下りて3-2の形が多かったです。

WBも前線に張り出すのではなく、比較的CB近くにポジショニングして、ビルドアップをサポートするような立ち位置を取っています。

そこからIHやFWと連携して、サイド攻略することや、サイドチェンジなど一気に裏返して前進していました。

これに対する鹿児島の守備としては、基本的にトップ下はやはりアンカーを気にしながら1.5列目に留まるか、背中で消して最前線に出ています。

この時SH(特に米澤)は、CBまで出てきて前からプレスを掛けることが主になっていました。

また3-2でビルドアップしてくる際には、酒本は最前線に上がり、4-4-2の形で構えます。アンカーと落ちたIHにはDH2人で対応し、中盤を遮断。

ブロックの外側から回らせるように仕向け、中盤で生まれる数的不利を利用させない意図があったと思います。

そんな振る舞いで始まった両チーム。
開始早々に先制点を挙げましたが、上野監督が発言していた狙いがハマり、富山の出方を逆手に取って前進出来た結果でした。

2.逆手に取る鹿児島と得点

前述したように、人への意識が強い富山。
得点シーンはこれを活かすことができていました。

先制点は萱沼が落ちて収めたところから。
DAZNの映像では、リプレイ後ここからしか映っていないのですが、GKやCBからミドルパスを受けたところでしょうか?

とにもかくにも、CBの23番林堂を釣り出して大外でボールを受けた萱沼。この時点で空いたインナーのスペースに野嶽惇がスプリントを始めています。

ボールを受け、運んだ野嶽惇はサイドでスプリントしてきた萱沼に再びパス。酒本・米澤と共に富山DFラインを押し込みます。

DFラインを押し込めたところで、マイナスに走り込んだ五領と中原でフィニッシュとなりました。

人への意識が強く、人を釣り出しやすいチームにはこれまでの試合も良い試合をしていましたが、今節はそれに加え、サイドを中心とした縦への意識も強かったように思います。

2得点目も萱沼がCBを引き出したスペースに野嶽惇が走りこんだところから。それが富山対策なのか、上野監督の+α「サイドから持って行く」部分なのかは判断が付きませんが、有効だったことに間違いはありません。

ーー今週のトレーニングにより発揮されたところ
攻撃はサイドから持っていてフィニッシュに行けましたし、中のコンビネーションもできました。そういった面で良かったと思います。

余談ですが、「中のコンビネーション」についても、試合開始直後に3 on lineしたように、新しい形が随所に見えました。

それが偶発的なシーンだったのか仕込みがあったのかは現段階では分かりませんが、崩しの部分で課題のある鹿児島にとって、前節出来たことに加え、そのようなコンビネーションの形を増やすことも重要だと思います。今後、落とし込みの中でどうなるか見ていきたいですね。

…得点シーンに戻ります。フィニッシュの機序としては、プレシーズンで見せた鹿屋体大戦の得点と似ていますが、違いはボール保持の中でSHの突破を図りたいのか、中盤を省略してでも縦に速い攻撃をしたいのか、といったところだと思います。

それなら金監督続投でも良かったんじゃ…?とこっそり思ったのも事実ですが、当時の考えと今季想定外の事態があったこと、どの具体-抽象レベルで人選をするか?に依るので、なんとも言えません。それを今言い出しても!というのもあるので。

少なくとも、得点を取るための近道を辿っていくことは現状悪くないのかなと思っています。それによるデメリットも今後出てくるとは思いますが、その時に何が出来るか、なので今は言及を避けます。

3.構造のズレによる問題

試合の流れに戻っていきましょう。
開始7分で、幸先の良い鹿児島の得点から始まったゲーム。
4-2-3-1 vs 3-3-2-2の構造のズレから互いに守備の問題を抱えました。

まずは鹿児島の問題から。
前述のように、SHまでCBに前プレを行った鹿児島。最前線に出るのは片方のSHである場合が多く、特にプレスバックに強い米澤が最前線に出ることが多かったです。(下図)

TACTICALista_2021H富山戦SHvsHV

そこで同サイドの遮断、SHが低い位置に留まりWBを見る逆サイドに誘導することが出来ればボール奪取の可能性も上がったと思いますが、現実はそう簡単には行きませんでした。

というのも米澤は大外のWBを気にしながらのプレスになるので、空けた後方のスペースに展開されやすくなったのです。

ゾーン1付近まで押し込まれてからは衛藤がWB対応も出来るのですが、富山のビルドアップ段階では前進出来ず、米澤のプレスバックしか手段が無くなります。流石の米澤も、それを90分持続させるのは難しいので、外切り優先は納得です。

ただ、3枚になった2ndラインの選手はスライドが間に合わないこと・距離感が遠くなりギャップを通される場面が出てきました。

ここは試合終了まで対策が見つからず、米澤裏を通されたところから前進され、2失点目を喫しました。このズレは以前もあったと思うので、改善したいですね。

続いて、富山が抱えた問題。
富山はIHが鹿児島SBをチェックするところで、問題が生まれました。
ボールサイドのIHが鹿児島SBへプレス準備のポジションを取るため、IH間の距離感が遠くなり、2nd-3rdライン間にボールを入れられやすくなる問題です。(下図)

TACTICALista_2021H富山戦IHvsSB

田辺・ウェズレイ共に鋭い楔のパスを打ち込める鹿児島相手に、これは大きな問題になったはずです。

そこで富山は後半に手を打ち、得点に繋げました。

4.富山の修正と1失点目

前半、富山の両WBはリトリート中心で5バック形成。最前線のサポートとして前プレに出る程度でした。

しかし後半、左WBの20番音泉は野嶽惇をチェックし、4-4-2様の陣形でプレスを掛けます。これにより、左IHの10番花井はSBまで行かなくて済み、2ndライン間の距離感が近くなるので、前述の問題は解決されました。

TACTICALista_2021H富山戦富山修正と失点

反対に、逆WBの50番田中はあまり前線まで出ることはありませんでした。恐らく個のスプリント能力不足と、何より米澤に裏のスペースを明け渡してチャンスを作られた前半だったので、こういった形になったのだと思います。

この変更で、CBから2nd-3rdライン間への楔のパス難易度は上がり、実際に1失点目のシーンでも萱沼へパスを打ち込もうとしたところを10番花井にカットされ、失点まで持ち込まれました。

この失点までの流れは富山の対応を褒めたいです。
が、やはり今後上位を狙う上では、対策を越えていく対策をゲーム中に出来ることは一つ課題になりそうです。

5.あとがき

というわけで、富山戦を見てきました。

正直、富山のゲーム中の柔軟な変更を見ていると、ホームとはいえドローで御の字くらいの練度の差を感じました。

八戸戦でも同じ課題を挙げましたが、そこを乗り越えられるかが一つ、白星を積み上げられる上位とのあと一歩の差なのかなと思います。

また守備面でも今治戦に続いて、そこ誰も付いて行けない!?という場面もちらほらありました。ここも整理してほしいですね。

この試合をもって、J3は約1か月半の中断に入ります。次は夏休み最後の週かぁ。

この中断期間で何を・どれだけ仕込めるのか、まだ想像も付きませんが、後半戦どこまで作り上げてくれるんでしょうか。

後半戦に期待します。
今日はこの辺で。
中断明け、次回もよろしくお願いします。

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