J3 第21節 レビュー【鹿児島ユナイテッドFC vs Y.S.C.C.横浜】変わり続けたアウェイチーム
2021.10.2 J3 第21節
鹿児島ユナイテッドFC vs Y.S.C.C.横浜
こんにちは。
今回もご覧いただきありがとうございます。
今回のお相手はYS横浜。
開幕8戦で4分4敗と大低調から始まり、一時立て直しましたが、前半戦終盤から再度苦しみ、最近復調してきました。
前半戦の対戦は、第5節の大低調時代でのスコアレスドローだったので、取りこぼしたぁっ!と感じたゲームでした。パパス体制の出だしでもあったので仕方なしですが。
今回は、YS横浜が大きく改善しており、全く違う印象になっていました。
ちょっと兵站の問題はあるかなと思いますが、シュタルフ監督は徐々にチームを作り上げてきていました。
試合の流れと共に、双方の挙動を振り返っていきます。
ご笑覧ください。
0.スターティングメンバ―
まずは鹿児島。メンバー変更は無しでした。
ベンチメンバーも変更無し。
自分達にベクトルを向けすぎな気はしますが、良い流れを引き継ぎたいんだろうなとは思っています。
あんまり書くことが無いので、YS横浜に移ります。
前節DHに入った19番和田に代わって、11番ンドカが帰ってきました。
身体能力お化け系選手が帰ってきましたが、フォーメーションについても3-3-2-2に変更。今節は明確に3-3-2-2だったと思います。
YS横浜のシュタルフ監督は、相手を見て試合毎に柔軟なフォーメーション変更を敷いています。
今節の鹿児島相手に、この陣形を取ったのは何故だったのか。まずは、ここから次項で見ていきます。
1.YS横浜の陣形と挙動
前述の通り、シュタルフ監督は相手を見て柔軟な変更をしていますが、フォーメーション決定に際する最優先事項は、プレッシングの噛み合わせだと思います。
前節は、3-4-2-1の讃岐に対してミラーゲームを敢行。3-2の中央とWB同士の噛み合わせでプレッシングを掛けていました。
今節は4-2-3-1の鹿児島に対して、3-3-2-2を選択。
鹿児島のCBとDH、トップ下がそのまま噛み合う形となり、大外に張るSHは5バックで対応していました。
そうなると、空くのがSBですよね。
ここはボールサイドのIHがサイドに出て対応します。
IHが出てしまうと、ボールサイドのDHが空くことになります。
が、いつもの鹿児島DHは1人が最終ラインに落ちますよね。
それを見越して、鹿児島DHが下りた時の最前線2トップの数的不利を受け入れることで、マークする相手がいなくなったIHの1人が、サイドの対応へ行けるというロジックがあったのでは無いかと思います。
実際に2失点目の直前は、中原が列を下したところで、マークの相手がいなくなった6番佐藤が衛藤にプレス。
ボール奪取した後、一度はタッチラインに逃れますが、その後のスローインから11番ンドカにゴラッソを決められてしまいました。ここは完全にシュタルフ監督の采配がハマった失点でした。その分、ある意味で納得はしています。
一方で、現実的にはDHが列を落とすことばかりでもありません。
鹿児島DHも時間を追うごとに安易な列落としをせず、IHを中央にピン留めするようなポジショニングに移行しています。
この辺は、さすが中原・八反田コンビでした。コメントでも八反田が発信していました。
--後半は良いリズムで試合ができた。
0-2だったので、勝つためには攻めていかなければいけない状況だった。相手も引いている状態で、ボランチの僕たちもなるべく下がらずに前でプレーして、FWを追い越すような動きも意識していた。その中で自分のところで同点にできるチャンスもあったので、申し訳ないという言葉しか出ない。
話を戻すと、鹿児島DHを見なければいけないためIHのSB対応が遅れることや、IHのプレスラインの高さを簡単に越されることもあります。
そこで、今節はミドルプレスを選択。ゾーン2までは潔く撤退していました。これで縦にコンパクトな陣形を組めることで、IHのプレスバックを容易に、あるいはWBが対応することも可能になりました。
さらにはゾーン2まで撤退することで、11番ンドカや10番柳がカウンターに使える裏のスペースを確保。CBが晒されてシュートに持ち込まれる場面も多くなります。
このようなロジックから、鹿児島としてはカウンターでのピンチを迎えることが多くなりました。
かと言ってYS横浜は、ボール保持の質が無い訳でもなく、大外はWBがしっかり埋めて、鹿児島SBがサイドに引き出されたところをFWやIHが使って前進出来ています。
このように振り返ると、柔軟に対応したYS横浜、変化を持たせられなかった鹿児島の構図が浮き彫りになってきますが、鹿児島としては試合中にもっと出来ることもあったと思います。
次項では、鹿児島のボール保持を例に取って、問題を見ていきます。
2.上手く行かなかった鹿児島の保持
YS横浜の撤退後は、5-3-2で構えます。
前述のように、YS横浜の守備が届きにくいSBは、比較的容易に「3」脇でボールを受けることが出来ています。
問題はその後、下図のような場面。
下図では、秋山が「3」脇を取った衛藤に近づいていき、6番佐藤の守備範囲に入ったことで、衛藤が6番佐藤を釣り出すことは出来ず。
狭いスペースの中、同一視野内で目の前の相手に集中できるYS横浜DFは、高い強度でのアプローチが可能に。強いアプローチを受ける鹿児島のボールホルダーはミスが起こりやすくなり、ロストという構図が生まれていました。
今節の秋山は、特に左サイドに寄ったり列を落ちたりすることで、相手のプレスを受けやすくなってしまう場面が多く見られました。ちょくちょく指摘していた課題が噴出してしまう相手でしたね。
現実的に、1失点目で左サイドの密集からロストしたのも偶然では無いと思っています。カウンターのトリガーとしては、ちょっと八反田先生が軽率過ぎたけど。
また鹿児島全体として、5バックを攻略したいがために、SHがインナー・SBが大外を滑走して押し込むことも多かったボール保持。SBを押し上げ、人数が少ないビルドアップ隊のパスは予測しやすくなり、パスミスが多発しました。
今節は個々の質で狭いスペースを打開しようとしすぎで、ますます相手のペースに飲まれていったように見ています。
上野監督のHTコメントでも、「広くコートを使おう」と指示が入っていましたね。同意です。
でも、悪い場面ばかりでもありません。
33分には秋山も6番佐藤がサイドに釣り出された裏のスペースで受けて、チャンスクリエイトもしていました。彼も成功体験を積めています。
また、左サイド偏重が高まり、比較的スペースのあった右サイドではYS横浜のWBやHVを動かすことができ、フォゲッチや山谷が時間に余裕を持ってボールを受けられることもありました。
今回秋山を矢面に立たせてしまっていますが、今節で感じたところもあるでしょうし、今後に期待していますよ。あれだけの技術持っていますからね。
というか、新潟で活躍出来る選手になりたいんでしょう。やることやるしかないぜ。頑張れ。
3.YS横浜の修正
YS横浜のプレッシングを念頭に置いたフォーメーション変更は、確かに奏功してしまいました。
しかし、それによりプレッシングが噛み合わさり、ハマりやすくなるのはこちらも同様。
前半は対峙する相手が明確でしたが、個々の1on1で後手を取ったかなと思います。先ほどのHTコメントの「しっかり人に付こう」に繋がります。
YS横浜としてはデュエルで勝てているとはいえ、修正すべき課題。
プレス回避のために後半いくつか手を加えます。
まずは後半最初から、右WBの船橋がビルドアップにて最終ラインに加わりました。秋山は4番土舘とお付き合いするので、鹿児島最前線では数的不利が発生することになります。
また、左WBの36番宮内は前線までポジションを上げ、左片上がりの陣形となります。
鹿児島としては36番宮内はフォゲッチが見ることができ、その他のマーク相手も明確ではありますが、最前線では11番ンドカがCBに勝てていたので、質の所で問題も生まれました。
ここに、もう一つ手を加えて、さらなる問題を生み出します。
3番宗近がDHの位置に上がる、偽CBです。60分過ぎから確認出来ました。
これにより、中盤で数的不利が生まれます。
単純に誰がそこを埋めるかという問題もありますが、上図のような「WB誰が見るの」問題が悩みの種になったと思います。
最前線のプレス基準がズレていき、SBのようなポジションニングで振る舞うWBに対して鹿児島SBが迎撃するのか?というジレンマに陥ります。
ビハインドの中、WBに前進を許すのか?11番ンドカに裏のスペースを使われるリスクを許容してSBが迎撃するのか?という選択肢ですね。
この変更による崩しで直接失点には関わりませんでしたが、試合中にも状況を見ながら、鹿児島の頭を悩ませる采配はお見事でした。
4.塩漬けの第4Q
さらに試合終盤、YS横浜は明確に引きこもります。
5-3-2でよりコンパクトに、中央に人数を集めて跳ね返し、逃げ切ろうとする方向に切り替えました。
これにより、鹿児島のSBは「3」脇をより容易に取ることができ、大外のレーンもSH・SBが取れるようになりました。
そうなってからは、SBが大外を取るとSHが、SHが大外を取ると秋山や八反田がHV-WB間をランし、クロスからチャンスを作ることが出来ました。
萱沼のポスト直撃など決まりかけたシーンもありましたが、密集の中、無理な体勢でシュートせざるを得ない場面も多く、得点が難しい時間帯になってしまいました。
結果、DH2人のデュエル敗北から3失点目も喫し、敗戦となったゲームでした。
5.あとがき
互いにスカウティングはしていたと思いますが、実行の部分では後塵を拝したゲームでした。正直、監督の差は感じます。
試合中の後手も然ることながら、どの試合であっても予定調和の様に投入される砂森・ウェズレイ・田辺の交代にも疑問符を付けたいです。
各選手質は高いですし、監督としては選手のモチベーション・競争を含めたマネジメントの要素もあるのかもしれませんが、試合で先手を取るための意図は読めません。
次節、福島も相手の陣形や、攻略したい選手を見ながら対応できるチームです。現在不調ですが、普通に強いチーム。
今節の再現にならないよう、策を練ってほしいです。
次節、福島戦。よろしくお願いします。
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