J3 第13節 レビュー【FC岐阜 vs 鹿児島ユナイテッドFC】飛び交うボール
2021.6.27 J3 第13節
FC岐阜 vs 鹿児島ユナイテッドFC
こんにちは。
今回もご覧いただきありがとうございます。
今節のお相手は岐阜。
ここまで7勝1分4敗の勝ち点22です。
今シーズン初頭にコロナ陽性が出て、バタバタなスタートでしたが、徐々に調子を取り戻してきました。
鹿児島としては、上位戦線に食い込むためにも勝利が欲しい試合でしたが、0-1という残念な結果になりました。
早速、岐阜と鹿児島の挙動を振り返りながら、試合を見ていこうと思います。よろしくお願いします。
0.スターティングメンバ―
鹿児島のスタメンから行きましょう。
前節から変更は無し。
特に喋ることも無いです。これはまずい。
そこでリザーブに目を向けると、薗田・グスタヴォとCF2枚がメンバー入り。ここ最近はCFに2枠割く編成が恒例になってきました。
山本が入っている時は、右でも使えて、五領を真ん中に持ってくるなどのオプションもありましたが、この純正CFが2枚入ったのは意外性を感じます。
今回は2枚投入もあり、CFグスタヴォ、トップ下薗田という形になりましたね。とはいえ、あまり明確な決まりはなく、各々のポジション入れ替わりもあり、2トップと見ることも出来ました。
続いて、岐阜に行きましょう。
前節負傷交代した42番柏木に代わり、9番山内が先発に名を連ねました。見たかった陽介。
その他は変更無し。安間さんもあまり変更は好まないタイプなんですかね。
あとフォーメーションは各所3-4-2-1の表記が多いんですが、3-3-2-2と捉えて良いと思います。
詳細は次項にて。
1.岐阜の守備
守備について。
2トップは前半、9番山内が前・10番川西が後ろで前後の関係になることもありましたが、CBまでは無理に追わず、主に八反田のスペース・パスコースを消す方に注力していた印象です。
それにより、マークする相手がいなくなったIHは鹿児島SBへのアプローチが可能になります。中央では、23番大西と逆サイドのIHがそれぞれ中原・酒本に対応します。
このIHの挙動は41番吉濱の方が積極的にアプローチしていたので、3-4-2-1風に見えるかもしれません。しかし、後半に入るとガッツリ5-3-2で守備ブロックを組んでいたので、3-3-2-2の役割意識は持っていたように思います。
さらに逆サイドIHが中盤のカバー=逆サイドの鹿児島SBが空くので、ここにはWBが出てきて対応していました。
これは配置上の問題解決でもありますが、岐阜は全体的に人を捕まえる意識が強いディフェンスだったので、WBや左右CBが前進して迎撃することは多々。前半はかなりこれが鹿児島の前進を困らせていました。
いつもの形での前進がなかなか難しい鹿児島は、トランジションでロングボール勝負が専らの前進になります。米澤他を活かそうというのも一つの手ではありますが、トランジション合戦に持ち込まれると分が悪いのはこちらです。
特に前半給水タイムまでは、岐阜の速いペースに付き合ってしまい、不確定要素の強いゲーム展開になっていました。あの時間を出来るだけ短くすることが求められると思います。
さらに言うと岐阜は、サイドに閉じ込める意識もしていましたね。尤もここについては、サイドチェンジが上手く行くシーンが多く、サイド密集を打開する術はすっかり身に付けてきたなぁとしみじみ思います。
と、まぁここまで褒めるところを見つけるのが難しかったのですが、給水タイム後・後半に入ってからは修正が行えていました。
2.中原の立ち位置
一つ目はDHの立ち位置です。
前半はいつものように、八反田がCBに近い位置で、中原が高い位置を取って前進する形が多かったように思います。
後半に入ってからは、横並びを徐々に増やしていきました。
これにより、岐阜2トップに「八反田」消しをさせず、両チームの中盤の3枚が噛み合わさることになります。つまり、鹿児島SBへアプローチしていた岐阜IHが、鹿児島DHを見なければならない状況が出来上がりました。
そして鹿児島SBがすっぽり空きますが、岐阜としては放っておく訳にはいかないので、WBを前進させて対応します。岐阜5バックの一角を釣り出し成功です。
このシーンでは、サイドまで寄った八反田から8番中島の後方で萱沼がパスを受け、前進出来ています。先程のサイドチェンジの件ですが、こうして経験値が積まれているのは良い傾向ですね。
また今節も、酒本と萱沼の補完は良く、この場面でも酒本が最前線にスプリントしていました。この補完が継続出来るのであれば、萱沼の落ちもある程度許容出来ます。
ただ、萱沼はパスの送り先として岐阜最終ラインの中で狭いスペースしか無かった米澤を選び、米澤はロストしてしまいます。
この時、米澤がDFを内側へ押し込んだ動きを見た衛藤がスプリントを開始していたりもしたので、より可能性の高い選択肢を選べればゴールに近づいたかもしれません。
まぁ、この局面でトップスコアラー米澤のスプリントが見えたら出したくなる気持ちはなんとなく分かりますが。
3.「3」の脇から
もう一つ、WBを引き出せた例を。
田辺から衛藤にボールが渡った場面です。
前半からのルール通り、ここはIHの8番中島が対応しています。それに伴い、後半から5-3-2へ明確に移行していた岐阜の「3」はサイドに寄っている状況。
ここでは、その「3」裏に中原が位置取ってパスレシーブ。右WBの22番舩津を引き出してから、米澤に裏抜けのパスを出して最終ラインを突破しています。
ここでは素直に同サイドで崩しまで至ったのですが、横幅を3人で守らなければならない岐阜2ndラインは逆サイドへの展開に追いつけません。
これを生かして、サイドチェンジなどでビルドアップを完了できる場面もありました。やはりこれも後半に入ってたからの展開です。
後半に入ってから出来るようになった、というのは岐阜の5-3-2移行により前線にプレスが掛かりにくくなったことが一因かもしれません。
が、急所を突き始めたのは、チームでイメージ共有出来たからというのが尤もらしい気がします。ただ共有までのスピードはもっと上げてきたいところです。
4.ロスト時のポジショニング
一方、ボール奪回した後の岐阜。
今節は丁寧に繋ぐというのはあまり無く、ロングボールで一気に2トップへ放り込んでくるのが主でした。
下図は一例。
敵陣深い位置で奪われてからの場面です。
ロングボールの応酬気味になっており、間延びしています。
間延びしていたこともあり、中央の米澤・八反田・野嶽惇は前プレにも行けない、後方の支援にも行けないポジショニングになってしまっています。
結果、岐阜の2トップにロングボールが送られ、最終ラインで2vs2の局面が生まれました。
八反田のコメントにも、岐阜には「2人で攻撃を完結させられる力を持っていました」とありましたが、その前線の選手が力を発揮出来るような状況を作っていたのも鹿児島だったと思います。
自分たちがゴールを取れるチャンスもありましたが、取れなかったのが1つ。「相手の長いボールは、攻めたあともずっと気をつけよう」と言っていた中で、最後の1本をああいう形でやられてしまった。悔いの残る試合になりました。
--前半からシュートシーンも多かったが?
課題は得点が取れなかった部分。惜しいチャンスまでは行っても点数が取れていないので、もっとチャンスの数を増やすことを意識する。最後の精度をもっと上げるのか、チームとしてもっと点を取ることに、課題を持って取り組まないといけないと思います。
--今日意識したことは?
一番は自分たちがボールを握ってある程度攻めるという構図の中で、相手のボールになったときに相手は前の2枚が残っていて、その2人で攻撃を完結させられる力を持っていました。そこの危機管理に関しては、常に気をつけていたんですけど、最後に1本やられてしまって本当に悔しいです。
自分たちがゴールを取れるチャンスもありましたが、取れなかったのが1つ。「相手の長いボールは、攻めたあともずっと気をつけよう」と言っていた中で、最後の1本をああいう形でやられてしまった。悔いの残る試合になりました。
実際に失点シーンも、これよりはあからさまでないにしろ、ロスト時のポジショニングが準備出来ていないところから失点となっています。
SBに野嶽惇が入ったことで、オーバーラップは1つの脅威になり、前がかりになりがちなのですが、前に出るべき(出られる)場面なのか・もし奪われた時にプレスを掛けられる位置にいるのか、などを勘案するべき場面でした。
5.あとがき
失点シーンについては、1回目の裏抜けには反応したものの2回目はセルフジャッジから放っておいた野嶽惇の対応が改善できるのでは無いかと思います。挙動はセオリー通りであり、感覚的にそうなったのだと思いますが。
ただ、ボールホルダーに田辺が晒されている以上、ウェズレイが迎撃に出た中では川西に付いていけたのは野嶽惇だけだったので、そこの認知も出来ればなぁといつ場面でした。
一方、無得点に関しては、個人の質もあるとは思いますが、補強が難しいであろう中ではチャンスを増やしていく方向性でアプローチしないと難しいと思います。
そのためには、特に前半の給水までのようなボールが飛び交う展開・相手の型に嵌る時間はなるべく短くしていきたいものです。
中断まで残り2戦。
どこまで成熟できるかと中断中の変化を見ていければと思います。
それでは、次回もよろしくお願いします。