J3 第3節 レビュー【鹿児島ユナイテッドFC vs 福島ユナイテッドFC】呪縛と解放と

2021.3.28 J3 第3節
鹿児島ユナイテッドFC vs 福島ユナイテッドFC 

こんにちは。
今週もやって来ましたJ3、お相手は福島です。
ダービーと銘打つものの、良い思い出ばかりです。
今節もありがとうございました。

ところで皆さん、シンエヴァ見ました?
興味が無い方もいらっしゃるとは思いますが、僕としては「Q」から9年待ち焦がれた念願、そしてなんとなく寂しい時間になりました。

これまでのTV版、劇場版の疑問が解決されたり、田植えのレイが見れたり、見どころばかりでしたが、もうエヴァに乗らなくていい、少し大きくなった現実世界のエヴァチルドレンを見れて、ホッとしております。要するにハッピーエンドで良かったね!という僕の結論です。

…そんなことは今どうでも良くてですね。

パパス体制始動から公式戦2試合。
我々にもその実態が見えてきた中で、対戦相手も鹿児島対策を練れるフェイズになってきました。

今回は、両チームの思惑を、出来る限り会見等での発言を参考にしながら考えていこうと思います。

ご笑覧ください。

0.スターティングメンバー

まずは鹿児島のスタメンです。
前節からは、野嶽寛→酒本、山谷→野嶽惇、薗田→萱沼と3人のスタメン変更。コンディションの問題と考えるのが尤もらしいと思いますが、酒本についてはビルドアップでのプレス回避の観点から起用されたとも見れます。

続いて福島。
前節からは諸岡→鎌田翔、延→樋口。さらに遊佐がベンチ入りしました。
基本ポジションがどうなるのかにも頭を悩ませられましたが、結果的には右HV鎌田翔、前節右HVの堂鼻がDH、雪江が右WBで、シャドーの一角に吉永が入っていました。

会見によると、堂鼻は練習試合等ではDHで出ていたものの、怪我人や移籍等でHV起用せざるを得なかったとのこと。時崎監督としては、今節の配置がベストと考えていたのかもしれません。

そんな布陣で始まったゲーム。
時崎監督は、万全な鹿児島対策を打ってきました。

1.福島の対策 ~熊本の踏襲~

その対策は、数的同数での前プレ。
鹿児島は、熊本戦で前プレに大いに苦しんだ経緯があるので、福島としては人vs人でプレッシャーを掛けることで、鹿児島のビルドアップ阻止=熊本の再現を目指していたかと思います。

前半はこの準備がハマり、ビルドアップを上手く遂行できませんでした。
具体的なシーンとして、24:30~を抽出します。

福島は、前3枚+WB、24番鎌田大が前プレを実行する構図となっていました。徹底的にマンマークが故、田辺はショートパス圏内にはパスが難しい状況。唯一パスコースのあった牛之濱に当てますが潰され、ショートカウンターに移行されました。

非常に分かりやすい構図ではありますが、熊本戦を見ればそりゃこういった準備はしてくるなとは思います。

試合前の準備については会見で言及がありました。
試合後会見がこちら。(以下、2:09~書き起こしです。)

ー前半は特にハイプレスからチャンスは作れたと思うが、ゴールを奪うことに関しての課題は?

我々としては意図したプランで入れたと思いますし、それを鹿児島さんが嫌がっていたのか嫌がっていなかったのかはもう、分からないですけれども、ただ2試合やってパパス監督が目指すサッカーがどういうものなのかは十分分かりましたし、それに対して我々は、高い位置でボールを奪いに行きたいというのも選手と温度を合わせながらやってきたつもりだったんですけれども、前半に関して言うとああいうゲームの構図になることは分かっていましたし、その中で出来れば得点を取るチャンスというものはあったので、決め切りたかったとは思いますけど。

上記の24:30~のような、前プレ→ショートカウンターに移行というシーンを作りたかった思惑が窺えます。

また、恐らくゲームプランとしては、前半の内に先制点ないし追加点を挙げ、それ以降はリトリート主体で逃げ切りたかったのでは?と思っています。

先制点を挙げることが出来ていれば、3-4-2-1の構図上中央を締めやすいので、砂森に中央でビルドアップ参加させない+セットDFでは5-4-1化で後方にて構えることにより、崩しの生命線である鹿児島SHが使えるスペースを消せる、という万全の体制でした。

実際前半に関して言うと、前節と同様に砂森がなかなかインナーで絡めていません。これらを踏まえると、福島の基本配置と鹿児島対策が、前半の苦戦の主因と見て良さそうです。

結果的には大西を中心としたDF陣の貢献や、福島の決定機逸、オフサイドの幸運などもあり無失点で前半を終えることが出来た鹿児島でしたが、ビルドアップに関しては一種の「呪縛」に囚われていたような気もします。

2.抜けられない呪縛と、田辺と酒本

プレシーズンから見られていたように、CBに加え、DHとトップ下・SBが近い距離で絡みながら細かくパスを繋ぎ、前進を試みていた鹿児島。

リーグ戦でも成功体験を積み上げてきましたが、その4人が使えるスペースをハイプレスで埋めるという対策を練られている今、その「理想」に囚われすぎている気がしました。

勿論、個人戦術の不足もあります。
福島のプレスに対して正対出来ないため、福島が追い込みたい方向へボールを運んでしまう、そもそものデュエルに負けてしまう、という前節からの宿題も多々ありました。

その一方で、そこでショートパス繋ぐのか、という場面もちらほら。
これまでの「理想」に、選択肢が収束してしまっていたんじゃないかなと妄想しています。

そんな中、前半から解決策を提示してくれていたのが田辺と酒本の2選手。
「誰かが背負ったスペースと時間の不足は、誰かが得られるスペースと時間だよね!」という関係性をピッチ上で表現してくれていました。

その「誰かが背負ったスペースと時間の不足は、誰かが得られるスペースと時間だよね!」を、チーム全体で共有出来たのはHTだったようです。

3.呪縛からの解放

まずは試合後、米澤のヒーローインタビューを書き起こします。

ーまずは1点目のシーン、ビルドアップを続けた中でロングフィードにてゴールに結びつくという形になりました。

ハーフタイムに勝俉君が持った時に、あのスペースが空いてるっていう風に話し合ってた中で、上手いこと裏に抜けれて得点に繋げられて良かったです。

続いて、パパス監督の試合後会見。

ー福島のプレスへの対応について

前半そのプレスに苦戦したところもありますが、深く守られるのではなく、プレスをかけてくると、逆に使えるスペースがあります。
最初の得点のところでもハーフラインで、こちらのFW3人に対してDF3人のマンツーマンでついてきて、そこのスペースを突きました。
常にどこにスペースがあるのか、どのスペースを有効に使うかを考えています。
自分たちのチャンスを作れたシーンは、福島のプレスをかけてきたところに空いたスペースを見つけたところを使っていきました。
リスクとのバランスはありますが、そのリスクをとって攻撃的に行きたいと思っています。
福島は前からプレスをかけてくるので、マンツーマンであれば米澤令衣、萱沼優聖、野嶽惇也の質を持った3人がいるので、後方からのロングパスのようなオプションもあるということは伝えています。

これらを踏まえて、1点目のシーンを見ていきます。

始まりはスローインからのビルドアップ。
前半に点を取れなかった福島は、前プレ続行を余儀なくされていました。

この時、牛之濱が降りることで福島両DHが前線まで引き出されています。このことで、前線の選手が広大なスペースを得られました。黄色の円と、緑の四角はほとんど同じ幅ですが、それぞれに入っている人数を見ると、密度の差が分かりやすいかと思います。

牛之濱が降りる動きも、GKが前線へ届ける意識が無ければショートパスを通すスペースを無くすだけの動きですが、米澤のコメントによるとHTに意思統一出来ていたので、意味を成しました。

この得点を見ると、「ショートパスを繋いで崩していくのが、パパス監督がやりたいことでは?」と意見があるかもしれません。しかし開幕戦レビューから言及してきた通り、「密集を作って、オープンなSHに展開」という概念が上位にあると考えられます。

その上位概念を実現するための手段が、これまで見てきた「DH・トップ下・SBが中央で絡んで前進」なのであって、手段はいくつもあって良い、いやあった方が良いと言えます。

今回は、密集が一方のサイドではなく、自陣ゴール前になったのでシンプルにSHへロングボールを送ろう!に帰結しました。パパス監督の言う、「プレスをかけてくると、逆に使えるスペースがあります。」のところです。

前項で言及した「誰かが背負ったスペースと時間の不足は、誰かが得られるスペースと時間だよね!」も同じ意味です。「誰かが背負った負債は、誰かの資産だよね!」という会計の考え方と似てますよね。突拍子も無いですが。

とにもかくにも、ショートパスで繋いで前進!という「呪縛」から解放された後半でした。こういった経験を増やしていければ、ピッチ内でも様々なチームに対応出来ると思っています。今は何がなんでもトライですね。

ーーーーーさて、話はその後に移ります。

困ったのは福島です。
ハイプレスを90分間維持できるチーム作りはしていなかったはずなので、疲労が見えてきました。さらに、1点目で鹿児島SHの脅威を見せつけられたWBは、リトリートの選択が多くなり、WB vs 鹿児島SHの構図が生まれます。

一方、逆転のため前線で奪いたい福島前プレ隊は、依然として最前線までボールを追います。しかし、疲労の影響とWBが出てこないスペースもケアしなくてはならないので、上手く嵌め込めなくなりました。

このことで、水を得たのが牛之濱と砂森。
27番堂鼻が残された広大なスペースを使い、両選手がビルドアップの出口となります。これまでの試合で見てきた「型」ですね。

後半、面白いようにパスが繋がり、優勢にゲームを進められたのはこういった背景がありました。2点目も綺麗に右サイドへ福島DFを誘導し、米澤がフリーで打てています。鹿児島の選手にとっては、イージーにボールを運べた後半だったかもしれません。

また、その後の守備については、ありがとう大西!が続きましたが、なんとかシャットアウト。そこでイスマイラ見失う?の被決定機もあったので、DFラインの意思統一も積み上げが要りそうです。

なんにせよクリーンシートで勝てたことは、チームの自信になったはずです。

4.那須の金言

最後に、ゲームの流れとは外れますが、主にCFへの言及です。特に萱沼。
まずは、那須アニキのYouTubeチャンネルで上がった、神村学園の練習参加回を載せます。

(以下、10:00~書き起こし)

動き出しでやっぱ、そこでさ、こうやってさ、DF引き連れて下がるとどうしてもプレッシャーかかってキープしづらいけど、FWなんてこうやって張ってていいから。ビルドアップの時にセンターバックが運んだ・みんながボールばっか見てる、したらちょっと外すだけでボール出てきたりするから。自分から動き出したら勝手に出てくるくらいのイメージを持った方が良い。

特に前半の「DF引き連れて下がるとどうしてもプレッシャーかかってキープしづらいけど、FWなんてこうやって張ってていいから。」が重要です。

ビルドアップが上手く行っていない時に、下がって受けてしまうのは、誰でもやってしまうところはあるかと思います。その全てが悪いとは思いませんが、特にパパス体制では前線で張って、DFラインの押し下げに寄与してほしいものです。

さらに、DFを引き連れて下がり、スピードに乗らせた結果潰されるというプレーは牛之濱・萱沼に多く見られました。1項で挙げた24:30~のシーンで、牛之濱が潰されたシーンはまさにこの典型だったと思います。

またCFに目を向け、萱沼と薗田を比較すると、薗田の方が中央で張ってくれていることが多く、その中でゴールも挙げており、これまでの試合で先発が多いのにも影響していると推察しています。

CFに関しては、那須のアニキが言うように相手DFがビルドアップしているCBに注目している時や、サイドでクロスを上げる選手に注目している時など、マークを外してゴール前で仕事して欲しいです。まさに興梠慎三。

CFが「焦れずに前線で待てる」ことにも今後期待です。

5.あとがき

福島戦、見てきました。

ヒヤヒヤはありながらも新たなパターンが得られ、相手の出方に応じ優位に進められた中で勝ち点も得られて、有意義なゲームだったと思います。

そんな「『ショートパスの呪縛』から解放された」チームを、エヴァの呪縛から解放されて、見た目も少し大人になったエヴァチルドレンの姿に重ね合わせた次第でした。何言ってんだって方は聞き流してください、すみませんでした。

3月は1勝1分1敗フィニッシュ。なかなか良い出だしでした。
4月は2試合のみ。暇になりますね、サポーター側からすると。

チームにはこの間に少しでも多く準備していただいて、連勝を重ねたいところです。

次は2週間後、YS横浜戦。よろしくお願いします。

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