運動するなら夕方がベスト!?
本日(2024/6/22)の医療ニュースを紹介する。
アルツハイマーの遺伝的発症リスクは父親より母親から影響を強く受ける? - JAMA Neurology
アルツハイマーが発症する正確な原因はわかっていないが、これまでの研究で約25%は遺伝性であると言われている。(1)
これに対し、マサチューセッツ総合病院ブリガム病院の研究者らが、アルツハイマーの発症リスクは、父親の遺伝と比較して、母親の遺伝に強く影響する可能性があると述べている。(2)
研究者らは、無症候性アルツハイマー病の患者4413人を集め、アルツハイマーの原因タンパク質と言われている脳内アミロイドβを調べた。
母親に記憶障害がある患者は、父親のみに記憶障害がある患者、両親に記憶障害がない患者と比較して大脳皮質アミロイドβ蓄積量が高かった。
また、両親の記憶障害発症年齢を調べたところ、母親側には年齢による発症リスクの差はなかったが、父親側では、父親が65歳以下で記憶障害を発症していると、患者本人もアルツハイマー発症リスクが高くなるが、父親が65歳以上で記憶障害を発症した場合は、患者本人の発症には影響していないと述べた。
アルツハイマーを発症するリスクを予想したい場合は、まずは母親に記憶障害があるかが重要であるようだ。そうでなくても、父親が65歳以下で記憶障害になっていた場合には同様にアルツハイマー発症には注意が必要だ。
2型糖尿病患者にとって運動するのに最適な時間帯とは? - The Obesity Society
2型糖尿病患者や、肥満の人は、血糖値のコントロールが非常に重要だ。血糖値が高い状態は糖尿病が増悪してしまう。逆にインスリンなど血糖を下げるような薬を使用している患者は、低血糖にも注意する必要がある。
先行研究(3)から、「中程度〜激しい運動」は1日の血糖値を安定させる効果があると示されている。スペインのグナラダ大学の研究者らは、この運動を1日のどの時間帯で行うのが最も効果的なのかを調べ、夕方の運動が最も1日の血糖の安定化に寄与していたことを示した。(4)
186名(女性50%、平均BMI32.9)の肥満患者が参加したこの研究では、腕に血糖モニターを装着し、14日間にわたってモニタリングし、「午前」「午後」「夕方」の三つの時間帯での運動量と1日の血糖変化を観察した。結果「夕方」に運動することが、血糖の低下に最も寄与することがわかった。これは、代謝障害を持っている患者ほど強い影響があり、性別差はなかった。
歩くこと、は腰痛を改善させる? - The Lancet
腰痛は国民病とも言っていいほど、多くの人の悩みとなっている。腰痛から回復した10人に7人は一年以内に再発すると言われている。腰痛にかかる医療費や、仕事中の生産性の低下などを考えると大きな損失の原因となる。
どうやらこの腰痛が、「歩くだけで治せる」可能性があるようだ。
オーストラリアのマッコリー大学の研究員らは、最近腰痛から回復した701人(女性81%、平均年齢54歳)の患者を集め、6ヶ月の理学療法士が指導するウォーキングプログラムに参加する患者と、そうでない患者を1-3年追跡し、腰痛の再発がないかを調べたランダム化比較試験を実施。ウォーキングをした患者群では痛みの発症が少なく、対照群が腰痛の再発までの平均期間が112日だったのに対して、ウォーキングをした患者群では平均208日だった。
歩行が腰痛を改善する正確な理由はわかっていないが、穏やかな振動運動、脊椎構造と筋肉への負荷と強化、ストレス解消、エンドルフィンの放出(気分がよくなる)などの効果が関係していそうだと、同大学の理学療法科教授のMark Hancock氏は語る。
歩くだけなら、気軽に無料で取り組むことができる。それで約半分の時間を腰痛なくすごせるなら費用対効果は莫大だ。
参照文献
https://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/article-abstract/2820195
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(24)00755-4/fulltext