ゼンブ・オブ・トーキョー(感想)
監督:熊切和嘉
脚本:福田晶平、土屋亮一
出演:正源司陽子、渡辺莉奈、藤嶌果歩、石塚瑶季、小西夏菜実、竹内希来里、平尾帆夏、平岡海月、清水理央、宮地すみれ、山下葉留花小坂菜緒、真飛聖、八嶋智人
東京に修学旅行に行くことになった優里香(正源司陽子)は、どうせなら「東京の全部」を味わいたい!ということから、自由時間の班行動で東京のあらゆる名所を回ることを計画する。
しかし、同じ班のメンバーはそれぞれの思いを抱えており、ふとしたきっかけで途中からバラバラで行動することになってしまう。
日向坂46に4期生として加入した11人のアイドル映画だが、青春というものについてストレートに描いている映画にもなっている。また、タイトルの通り都市としての東京論のようにもなっているところも面白い。
日向坂46の4期生については正源司陽子さんくらいしか事前に顔と名前が一致していなかったが、そんな程度のテンションで観ていたのに終盤の展開には虚を突かれて涙ぐんでしまった。
東京都心に電車で30分くらいで行ける近郊の都市で暮らしている身としても、東京は劇中の修学旅行生と同じようにまだまだ行ったことが無い場所が多く、しかも再開発などで少し前と姿が変わってしまう街も多い。
この映画では、そのような東京の特徴が主人公の友人たちにも重なって見える。例えば実は推しキャラがいたり、例えばアイドルを目指していたり、例えば中学から姿が変わっていたり。
そして、実人生で地方から東京に行くことは、当然仲の良かった友人と離れ離れになるということであることが多い。この映画の、東京でバラバラに行動し始めるという展開自体もその青春時代の終わりの予感を誘うものになっていることも切なく感じた。
ただ、一部のセリフがコント的な言い回しだったり、展開に無理があったりする部分があることは否めない。
また、ギャグであるとはいえ今時友達が「オタク」というだけで引くような高校生はいるのだろうか…最終的にはその人物のオタクである部分も受け止めているであろうことは分かるものの、せめて一言セリフであの件について謝ったり、見識の狭さに対するフォローのセリフがあった方がよかったと思う。
細かい部分だが、先生にアイスクリームを当てた時に自分の服にもアイスが付いてしまっている映像がはっきり映っているのに、直後のシーンでは綺麗になっていたりするところや、後ろに人がめちゃくちゃ並んでいるのを気にせずUFOキャッチャー論を語り出すあたりなど、ディティールのおざなり感は感じてしまった。
とはいえ、映画のプロローグとエピローグにあたる部分で、優里香が映画全編=修学旅行を「思い出している」ことが判明するところは映画としてスマートで、ストレートにグッとくるし、何よりメンバーについてよく知るファンにとってはさらに楽しめる映画になっているのだろうと思った。