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#3 家と車を役割分担させること

#1 家と車で暮らしを広げる の記事による構想のイントロを経て、この回では、私たちが住宅の暮らしの中での「動的活動」をどのように可動させるのかを思考した経緯を詳しく話していこうかと思う。

過去の記事
#1 家と車で暮らしを広げる
#2 構想から価値創造する仲間

少し振り返ると住宅の中での「動的活動」とは、家の中で料理をする、ご飯を食べる、会話をする、仕事をするといった家の中での活発なアクティビティを指す。この動的活動を思い立った時に可動できるようにすることで、我々の日常に広がりを与えると考えている。
この動的活動を可動させるには空間や環境だけの移動では成り立たず、「使い慣れた道具」が必要となる。料理をするのにキッチン道具、食事をするのにテーブルとイスのように。キャンプの時をイメージしてもらえばわかると思うが、それらをまとめて外に持ち出そうとすると「荷物」として車に積載することになる。
日常で使っているものを外で使おうとすると「荷物」として持っていくことになるので、逆転の発想で、別拠点で使う前提で日常的に車載したまま使い慣れた道具を使えば、移動先に自分が使い慣れた道具が常に横にある環境が整う
一方で、人の住宅での活動は「動的活動」のほかに「静的活動」(寝る、お風呂に入る等)があると#1で言及したが、この「静的活動」では必要な道具は借り物や拠点ごとの備え付けても大きく生活に支障はないのではないかと考えている。
この仮説が正しければ、拠点ごとに備え付けられた静的活動空間に、動的活動に必要な日常的な道具を持ち回ることさえできれば、「人の生活の移動」が成り立つのではないかと考えている(下図)。以前にも申し上げたがこれはノマド生活を推奨するようなことを目指しているわけではない。

「人の生活の移動」に必要なこと
・動的活動で日常的に使う道具と共に可動させること
・静的活動は可動させない。必要な空間や道具は、拠点ごとに備え付ける

静的活動は拠点ごと備え付けられ、動的活動を可動とすることで暮らしの移動が実現する

建築と車両の役割分担


動的活動に必要な日常的な道具を持ち回ることさえできれば、「人の生活の移動」が成り立つと言及したが、動的活動に可動性を持たせよう思うと、キャンピングカーのように快適性の追求から空間は肥大していき、最終的に大きなトレーラーハウスのようなものになってしまう。
人の生活を可動させるにあたって、移動機能を持つ車と、空間機能を持つ建築とで役割分担させることを考えている。生活に必要な機能や道具の可動性は車に、その周りを囲う空間の快適性は建築側で設える考え方である(下図)。

建築と車両の役割分担

そのことにより、キャンピングカーのように人が車両の中に使う前提の設計から転換し、車両の周りから車に積載された道具を使うことで移動機能を持つ車と、空間機能を持つ建築とで明確な役割分担させることができると考えた。
以下の図で示すように、車両の中から使うキャンピングカーを、その中にあるものを外側に裏返して外から使う発想である。
これは、車単体だけでも、建築単体だけでも成り立たず、車と建築のセットにより、人の生活の可動性を持った住環境が整うと考えている。

中から使う前提のキャンピングカーから逆転の発想

可動性の持つ車と、空間の快適性を与える建築のセットにより、動的活動に可動性を持たせ、静的活動はその土地に根付いた環境に備え付けることにより、以下に図示したような生活シーンが想定される。
それぞれの想定シーン、それらの組み合わせによって作られる生活パターンはさまざまである。これらについては次回説明することにしようかと思う。
次回に続く >>

井手 駿

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