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「BUTTER」の壁

柚木麻子氏著「BUTTER」を読んだ。

主人公が比較的自分と似ているなと思いながら読み進めていたところで、似すぎているかも、くらいに思ったのは主人公が記者として追いかけている登場人物にこう言われたとき。

「あなたには壁がない。仕事もプライベートも、本音も社交も全部がまじりあってる。見ていると疲れる。」

直後、「どちらかといえば、自分はなかなか他人に心を開けない性分である」と思っているところまで似ている。

これは多分、好奇心が強くて本来は素直な性格ゆえ。
更に鈍感で、子ども時代に決して突き抜けはしないけど大して悩まないで済む程度の能力があったがゆえに、子どもの頃からの素直さが矯正されてこなかったから(と自分では分析している)。

主人公はとある焼き菓子を作ることでこれまで自分が作ってきたそれとは違う種類の「壁」が世界には存在することに気づく。

愚直に、ひとりで、真面目に向き合うために他人との間に立てる冷たく固い壁ではなく、人に甘えることも選択することで生まれる余裕が作る壁。
人を柔らかく包み込む、毛布みたいな壁。

自己責任論が蔓延るこの社会で、様々な制約の中でそんな壁を作り出すことは決して簡単ではない。この問は考え始めると資本主義や貧困問題、ジェンダーにつながっていってしまうが、まずは自分の壁をゆっくり眺めながら生き方以上に時間の使い方みたいなことを考えてみようと思う。

今日は何も予定がない有給休暇日だから。



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