「動くことがない」から、気持ちが切り替えられない【HSPとテレワーク】
まだまだテレワークが続く。しかもここに来てテレワークが増えた。新年度入ってすぐストップしていた仕事が、来週からテレワークという形で動き出すことになったのだ。おそらく5月の1ヶ月間、というか下手したらこの先ずっと「テレワーク」の仕事を両立させなければならないのかもしれない。
さて、この一月、ZoomやSlackを中心に動いてみて、わかってきたことがたくさんある。
一番は、「切り替えの難しさ」という点だ。
いろんなコミュニティに参画しているので、以前だとたとえば日中滋賀で仕事をした後、夜は大阪へ移動して打ち合わせという日があった。これもいまやZoomを使えばその場から1mmも動くことなく仕事や打ち合わせをハシゴすることができるわけだが、こうした予定を楽しく完遂できた大きな要因のひとつが「移動」という時間だった。
滋賀から大阪へ向かう新快速に揺られながら約1時間、ゆっくりじっくりと頭を切り替える。途中寝たりすることもあるが、大阪駅に降り立つころにはしっかりと打ち合わせモードに頭が切り替わっている。しかし今はそんな「移動の1時間」なんてものはなく、自宅のデスクでZoomを落ちて5分後にはまた新たなZoomがスタート、なんて日もある。
「Zoomを落ちて5分後にはまた新たなZoomがスタート」ってたしかにすごく便利なのだけど、これが4つも5つも重なってくると次から次へと頭を切り替えていかなければならないので、非常に疲弊する。実際、Zoomを5本やった日があったのだが、その翌朝は起きることができなかった。合間に1時間か2時間あれば少し散歩をして再びZoomに戻るだけでずいぶんと違う。それくらい、僕の生活スタイルに「移動する」ことが密接に関わっているということを、とても痛感している。
そしていま、この「移動で頭を切り替える」時間がまったくない生活を送っている。この移動時間がないからこそ戸惑っていることが、実はもうひとつある。
現在、弊団体の昼の教室(オンラインフリースクール)・夜の教室はすべてZoomでやっている。月曜日にやっている夜の教室が終わるのは21時半だ。以前なら、この夜の教室が終わったあとはといえば、
・駅まで歩く(5分)
・電車に乗る(1時間:その間は本を読む)
・最寄り駅から歩いて帰る(15分)
という流れの末に、ようやっと夕食の席についていた。この間、ざっと1時間半ほど。つまり、教室を終えて生徒を帰してから自宅に戻って夕食の席につくまでそれくらいかかっていた。
が、いまや、生徒と別れてから夕食の席につくまで、
・「また来週~」とZoomを切る(10秒)
・席を立って自室を出る(30秒)
・階段で居間へ降りる(30秒)
で、たったの1分ちょいで済んでしまう。直前まで生徒と(オンラインで)話をしていたのに、いま目の前には家族がいて、テレビでは水曜どうでしょうが流れる「家での時間」が広がっている。これもまたたしかに便利だけど、「頭の切り替え」という面で言えばかなり負担がかかっている。
以前にも書いたけど僕は「アイドリングタイム」と「ダウンタイム」が必要な人間で、そのためにどれだけ無駄だ!と言われようとわざとそこそこ長めの通勤時間を取っていることも書いた(「逆に、通勤時間をかける必要がある人」)。電車に乗って本を読みながら徐々に気持ちを高めていって仕事のスイッチ(子どもと接するモード)を入れて、逆に帰りはまた本を読みながらゆっくりとそのスイッチをオフにする。この移動時間の使い方が、僕の働く上での「ルーティン」だった。
「移動」だけではない。思い返せば前職場でも職員室に閉じこもることが少なかった。昼休憩には必ずフリースペースや自習室に顔を出していたし、たとえば採点の仕事やデスクワークが続いて気持ちがだれてきたなあ、と感じたら席を立って、そのへんにいる生徒と会話をすることが多かった。そもそも校内をうろうろするだけでそれは立派な「校内巡回」という仕事だ。生徒が少ない日でもトイレに立ったり、空き教室の椅子を整頓してみたり、と、何かこう「動くこと」をできるかぎり取り入れて気分転換を図っていた。
この「動く」というルーティンが、テレワーク以降まったくできていない。
もともと多動なところが大きくあるので、いくら家にいるのが好きだとはいえずっと同じ場所に閉じこもるのは非常に辛い。いくらテレワークとは言っても、やりたかったこと、働きたかった場所、自分に向いている仕事だと思ってこの日常を送ってきたが、どこか閉塞感があったのはこの「動く」というルーティンの欠如なんだと気がついた。電車移動はもちろんのこと、前の職場で言う校内巡回や長い廊下を歩いてトイレに立つことは、仕事において頭を切り替える上でとても大事な行動だったのだ。
テレワークは確実に普及した。2ヶ月くらい前、JRの電車の放送で「なるべくテレワークを」みたいなことを言ってるときは絶対ムリだろと思っていたものだが、今や僕もテレワークだ。テレワークは便利だ。家にいるだけで距離関係なくいろんなコミュニティの人と次から次へと打ち合わせ、教室だってオンラインで開ける。すごい時代だと思う。実際この1ヶ月、テレワークのみならずオンライン飲み会も基本的にZoom開催だったので、いろんな意味でZoomに助けられたし、これからも助けられるのは間違いない。
冒頭に書いたように来週からはテレワークが増える。テレワーク明けのことも含めて不安になりながら、次から次へと頭を切り替えて疲弊しながら、動くこともままならない世の中でテレワークし続けるしかいまは道がないのだろう。となればこの「テレワーク」とのうまい付き合い方を考える必要があるのだと思う。いや、今の目標は「死なない」「心折れない」の2つだ。これが達成できればなんだっていいや、もう。