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疲れの原因は「○○○タスク」だった?【川野泰周『「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方』ディスカヴァー・トゥエンティワン】

おそらくこんな状況だからこそ、いつもとは違った疲れを感じている方も多いと思う。かくいう僕もそうで、最近はちょっと買い物に出ただけで変な気疲れを感じるようになってしまった。睡眠はわりとしっかり取ってる方だと思うが、それでもこう、精神的な疲れがどうにもとれない。

しかし、この本を読むうちに、それは当たり前のことだという確信を得られた。

結論から先に書けば、僕は知らず知らずのうちに勝手に「マルチタスク」を脳内で繰り広げていたのである。というか、お恥ずかしながら今もそうだ。

この本では一般的な「疲れ」の要因は身体的なものではなく「脳の疲れ」である、と「はじめに」で断言している。よく休みの日の過ごし方として「家でごろごろする」なんてことが言われるが、それも脳が「マルチタスク」状態ならば脳を休めることができていないので、意味がないという。

ではその「マルチタスク」とは何か。これは今の僕の行動をそっくりそのまま書き出せばだいたいはわかっていただけると思う。

今僕は、デスクに座り、AlexaでJUDY AND MARYの『ラッキープール』という曲が流れている状況でこの文章を書いている。が、「文章を書くことに集中できているか」と言われればそうではない。いまちょうど ♪ラッキープール小さな庭に出してー! というサビの部分が流れているのだが、文章を書きながら必ずやってくるこのサビの瞬間を心待ちにしていた。そして、数分前に流れていた『Over Drive』の曲が終わるころには、やはり文章を書きながら「次は何が流れてくるかな?」とそっちに意識が飛んでいた。

これだけではない。胡座をかいた足が若干痛くなってきたとか、夜になってちょっと寒くなってきたとか、もう19時半か、夕飯何時に食べようか、ということさえも、文章を書きながらふと考えてしまう。

おわかりだろう。マルチタスクとは「ひとつの作業に集中せずに、いろんなことを考えてしまう」状況を定義している。こういう状況、あらゆる人に心当たりがあるのではないか。さっきあげたInstagramのストーリーは誰が見てくれただろうか、Twitterに通知が来てないだろうか。さらに、仕事をしていても「必ず今日中に終わらせなければ」という焦りが入ってくることだってある。そんなことを意識していると、まったく気づかぬうちに脳が疲弊してしまうのだ。

また、「考えごとや悩みごとが頭から離れない」状況でも脳は激しく疲弊する。そう、いまこの状況なのだ。どれだけ続くかわからないこの外出自粛期間、仕事がない期間、終息するのがいつなのか。何をしてても無意識にこんなことばかり考えているからこそ、僕は一見自堕落な生活だとしても疲れを隠すことができないのだ。

この本では、疲れを「身体の疲れ」「心の疲れ」「マルチタスク」の3つに分類して、「理論編」「実践編」の2パートで話が展開する。とくに「実践編」はさらに食事や睡眠などに細かくジャンルを分け、合計41個ものメソッドをとりあげている。

この41のメソッド、一部例外はあるが基本的に「今、ここに集中する」という大きな共通点でくくることができる。つまり「マインドフルネス」そのものであり、マルチタスクと反する言葉で説明するなら「シングルタスク」ということだ。たとえば食事ひとつとっても、ラーメンの色合いや具材の配置をじっくり観察し、メンマやチャーシューの歯ごたえを感じ取りながら食べる。またはていねいに料理してみる。こうして余計な感情や考えを排除して、目の前の食べ物にしっかり集中することで、脳の疲れも軽減する。

実際、ゲームにのめり込んでいる状態でも、身体的な疲れこそあれど脳の疲れはほとんど感じていないそうだ。集中力を高めるために瞑想をする、ということも一定の効果があることが知られている。

いまなんか疲れを感じる人も、明日から「なにかひとつのことに集中してみる」生き方をしてみると、少し違った1日が待っているかもしれない。かく言う僕は、これを書きながら ♪麦わらの帽子の君が揺れたマリーゴールドに似てる~ と、やはりAlexaに合わせて口ずさんでしまったので、まだまだ訓練が必要だな。



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