【オンライン授業が不安な先生へ】オンライン授業を助ける小技を9つ、こっそり教えます。
昨日、オンライン授業がいかにたいへんか、そう簡単にできるものじゃないということをなんと5500文字にわたって書きました。
回線や機材のトラブル、誤操作、サボり、リアクション・・・。こんなにも長々と課題点を上げてもなお、すでにオンライン授業の導入を決めた自治体があります。確かに昨年の実績があるのかもしれませんが、ここにきてまた明らかにイレギュラーな対応に不安を感じる先生方もきっと多いと思います。
僕は昨年度から定期的にオンライン授業に携わり、今年度も(昨年度ほどではありませんが)オンライン授業や、不登校の子どもたち向けにオンラインの居場所づくりに参画しています。そこで今日は、あまりに未知すぎる「オンライン授業」に不安を感じる先生方に向けて、少しでもオンライン授業を運営しやすくなるヒントをまとめようと思います。
この記事が、みなさんにとって慣れないオンライン授業の運営の一助になればとても嬉しいです。
なるべくカメラはオンにしてもらう
まず「サボり」と「リアクション」の解決策をいくつか。
オンライン授業でリアクションが伝わってこない大きな原因は、ずばり「生徒が恥ずかしがってカメラをオフにしているから」です。生徒側は、たとえば寝起きの顔を映したくない、部屋を見られたくない、親が後ろをうろちょろする、と様々な理由をつけてカメラオンを拒絶します。
カメラオフによって授業運営が困難なら、いっそのことルールとして「カメラはオンにする」と決めてしまうのはひとつの手段です。これは正直に言えばいいと思います。どれくらいちゃんと聞いてるか不安だから、みんなカメラオンにしてね、と。これは生徒の側にとっても顔が見える安心感にもつながります。
で、ここからが超絶大事なのですが、実際にカメラオンにしてくれたらきちんと「ありがとう!」とお礼を述べましょう。それがたとえ家の中なのにマスク姿であろうと、うまいこと細工して顔を隠した状態で映ってようと、です。本当は人に部屋を見せたくないのに、ものすごい勇気を出してカメラをオンにしてくれる子もいます。それで顔を隠していても、最低限「パソコンの前にいる」ことが確認できれば話し手はちょっと気が楽になるはずです。
ただし、本当にオフにせざるを得ない生徒がいるというのも事実なので、100%オンにすることはまず無理と割り切ったほうがいいです(だらだら全員オンにするのを待つのも時間の無駄です)。その際はちゃんと事情を申し出させるとか、きちっとルールを決めたほうがいいです。
たまに呼びかける
カメラオフのままで、本当にパソコンの前にいるかどうか不安な場合にもいくつか手段があります。
まず授業中であれば、平時の授業のように問いを作って、それを誰かに当てて答えさせるというのは授業参加の意欲を測るひとつの方法です。
ここで大事なのは、「声で答えなくてもOK」ということ。「○○くん、室町幕府の3代将軍といえば誰?」と発問したとして、声ではなくチャットで「足利義満」と返事が来たらOKです。これで大成功です。少なくとも、○○くんにはその発問が届き、○○くんもその意図を理解しています。
何十人もいるオンライン授業ではいつどこで誰の生活音が入るか予測がつかないので、なるべく聞き手は発表や話し合い活動でない限りは全員ミュートさせるのが望ましいです。うっかりお母さんの「あんたちゃんと聞いてんの?」って声が入っちゃったら授業は止まるわお母さんは恥ずかしいわ、で誰も何も得をしません。なので、声で答えられなくてもそこを絶対に責めてはいけません。
チャット欄を有効活用する
発問はチャットで返してもOK、と書きましたが、オンライン授業においてこのチャット欄は使えます。超絶使えます。声出せないならとりあえずチャットに誘導すればオールオッケー。リアルタイムで文字で反応をもらえるのはオンライン授業ならではです。どんどん使っていきましょう。発表を伴う授業の場合、チャットに「パチパチ」や「888」といった拍手の音を表現する文字を書くよう促すだけでも発表の質がぐっと高まります。
そして、たとえば1時間目の授業の頭に「みんなチャット欄に今日朝ごはん何食べたか書いてー!」なんて呼びかけたら、それはもう立派なアイスブレイクです。いつもと違う授業に戸惑いを感じたら、こういうワークを取り入れて雰囲気を和らげるのは超大事です。
もちろん、いわゆる荒らし行為とか、ちょっとチャット欄が暴走気味だなと思ったらやんわりと静止するのも大事です。ってか、これがけっこう難しかったりするんですが。
スタンプを有効活用する
チャットのほかにもうひとつ、スタンプがめちゃくちゃ使えます。しかもこれは適当に問いを作って呼びかけるより効果がめちゃくちゃ高いです。「とりあえず、なんでもいいからスタンプ押して」と呼びかけると、すぐさまみんな何かしら適当に押して返事してくれます。
Zoomのスタンプ機能では、❤や👍🏼という定番の絵文字から、感情を表す😂や😮というものも使えます。さっき「チャットで拍手の音を促そう」と書きましたが、👏のスタンプもあるので、なんか発表が終わったあとにみんなで「👏」押して反応してあげてねー!っていうやり方もできます。
「スタンプ押して」と言って❤️や👍🏼の絵文字が表示されたら、少なくともその生徒はカメラオフでもパソコンの前にはいて、しかもこちらからの声も聞こえていて指示もきちんと伝わっていると見なすことができます。僕は休憩時間の終わりにちゃんと戻ってきてるかどうか確認するために、よく「戻ってたらスタンプ押してー」と声をかけています。
このスタンプかなり便利で、たとえば「今の「末期養子の禁」の話、理解できたら❤️を押してください」という使い方ができます(ホントに理解できてるかはさておき)。プリントなど何かしら作業をさせる授業なら、作業ができていれば👍🏼を押させるという運営も良いでしょう(ホントにできているかはさておき)。
もちろん授業前のアイスブレイクにも使えます。ちょっと高度な使い方として「今の気分に近いスタンプ押してみてー」と絞ってスタンプを使わせてみましょう。😮が多かったらみんな眠いんだろうなぁ、みたいな受け取り方をするとなんとなく気が落ち着くはずです。
「ありがとう」は頻繁に言おう
カメラオンのところでも触れましたが、オンライン授業ではこのコミュニケーションの基礎中の基礎を疎かにすると、あっさり破綻します。
○○くんが発問に「足利義満」と答えたら、正解判定とともに「ありがとう!」ときちんとお礼を言う。アイスブレイクでみんなチャットに今日の朝ごはんを書き込んでくれたら、ひとしきり盛り上げたあとに「みんなありがとう!」と一言添える。「適当にスタンプを押して!」と呼びかけてみんなスタンプを押してくれたら、「みんなありがとう!」と協力してくれたことに感謝する。
こうやってお礼をすることは、「離れていてもみんなこのオンライン授業の一員なんだよ」というメッセージを暗に伝えることになります。先生も慣れない環境ですが生徒も慣れない環境です。そんな中でも「学び」に参加してくれるその姿勢は称賛に値します。これめっちゃくちゃ大事です。「ありがとう」を惜しみなく言っていきましょう。
「生配信」の感覚で
みんなカメラオフだし表情もわかんないな~、なんか話しにくいな~、と思ったときの小技です。
考えてみれば、「聞き手の顔が見えない」ことってけっこうあります。たとえばYouTubeの生配信。コメントという形で可視化はできますが、表情まではわかりません。ラジオもそうですね。僕は「ナインティナインのオールナイトニッポン」が好きなんですが、あれもリスナーからのメールではじめて岡村さんが反応に気づく、なんてこともよくあります。
カメラオフが多いな~と思ったら、もちろん授業をやりつつも、感覚を「授業」ではなく「生配信」とリフレーミングすると少し話しやすくなるかもしれません。僕も反応が薄かったりカメラオフが多いときは、「授業をやる」という意識を少し削いで「ラジオ感覚でひとりでしゃべる」方向性に走ることがあります。でないと、孤独で死にます。
授業者がもし2人いるなら、ラジオの掛け合いみたいに進めていったほうが絶対食いつきがいいです。パーソナリティが1人でも、たまに放送作家や番組スタッフがマイクの外からなんかしゃべってるラジオがありますが、あのイメージです。
リアクションはオーバーすぎていい
「孤独で死にます」という話をしたついでに。
Zoom上で生徒に発表させるような授業を展開する場合、生徒が話し手になるときには自動的に教員側は聞き手になります。そのときには、率先してオーバーなくらいリアクションをしましょう。具体的にはうなずき、あいずち、拍手といったところです。
白々しいリアクションは逆効果ですが、うなずきは首もげるぐらいやっても不思議とZoom上ではオーバーに見えません。拍手も同様です。逆に動きが小さいとびっくりするほど伝わりません。意識してどんどん身体を動かしていくべきです。
オンライン授業での発表時には、こういう人間がひとりでもいると話しやすさが段違いです。授業者となる先生方は、生徒が発表して聞き手に入れ替わるときには率先してリアクションをハッキリと見せていきましょう。場も盛り上がります。
事前にZoomを練習しておく
これけっこう大事です。別に授業しなくてもいいので、なんかおしゃべりだけでもZoomを経験しておくと心強いです。
たとえばマイクの使い方。iPhoneの付属のイヤホンにマイクがついてますが、あれそんなに性能良くありません。数センチ離しただけでぜんぜん聞こえなかったりします。ちなみに僕はオンライン授業やZoom用にヘッドセットを新たに購入しました。
このマイクなどの音量調整は忘れがちですがかなり重要で、一度授業中に「音が割れすぎて何言ってるか全然わかりません」と言われたことがありました(設定見たら最大になってて超絶ビビった)。あとなぜかZoom側のスピーカーがオフになってて、なんかおかしいなぁと思いつつ喋ってたら生徒が質問に声をあげていたようで、それに気づけずチャットに「○○さんが質問したいってずっと言ってます!」「先生気づいて!!!」という声がものすごい勢いで殺到したこともあります。
以前の記事では意図しない画面が共有されてしまったり、間違ってブレイクアウトルーム閉じたり、わりとZoomを使っている僕ですらこういう初歩的なミスを容易に犯すので、事前に練習をしておくのは大事です。
宣伝ですが僕が運営スタッフで入っている「センシティブティーチャーズ」という繊細さんの教員のコミュニティでは隔週でZoomを開いてますので、ここでいろいろ練習してもらって構いません。声の大きさとかここでどんどん調整しておきましょう。
オンオフのメリハリをつける
これは大人である僕もそうなんですが、「自宅から授業につなぐ」というのは意外とだらけてしまうものです。だからこそ、オンライン授業にログインしたら「確かに自分の部屋にいるだろうけど、ここは学校だぞ」という意識を持たせないと、オンライン授業が成功する確率は一気に低くなります。
たとえば起立礼着席とまではいかないものの、挨拶をいつも以上にしっかりやらせるとか。「今から学校の授業だぞ」という頭に切り替えさせないと、子どもたちが自宅という場でオンライン授業を集中して受講するのは難しいでしょう。
まとめ:「凡事徹底」
1にも2にも、オンライン授業を不安なりに実りあるものにしたいのなら、この4文字熟語ほどぴったりのものはありません。
カメラをオンにする。きちんとお礼を言う。授業開始/終了時の挨拶を徹底させる。オンラインであってもここは学校だぞ、当たり前のことをオンラインと言う場だとしてもきちんとこなそう、という意識の植え付けが大きな鍵を握っています。
前にも書きましたが、対面授業をそっくりそのままオンライン授業に持ってきても失敗します。でもそれは授業の構成の話であって、対面でもオンラインでもできることを疎かにしてはなりません。
どういう形であれ、今回のオンライン授業で子どもたちの学びに大きく支障をきたさないためにも、授業者や先生方は難しく大きな問題に直面していると思います。でも、凡事徹底さえしておけば、簡単に瓦解することはないはずです。みなさんにとっても、子どもたちにとっても、よりよいオンライン授業が展開されることを心の底から祈っています。
(追記)
はじめて図解というものをつくってみた。