2019年読んだ本を、300冊読んだ中から10冊選んでみた
今年もたくさん本を読んだ。
片道1時間電車に乗る生活が週数日あるので、そういうときはもう本がないとやってられない。ずっとTwitter眺めててもiPhoneの電池と通信量の無駄だ(しかも僕は使った分だけ通信量を払う契約にしている)。
昨年もはてなブログで読んだ本の振り返りをしたが、今年も例にならって10冊選んでみた。なお、2019年に発売されたものというわけではなく、あくまでも「2019年に初めて読んだもの」という基準で選定しているので、あしからず。
齋藤孝『不機嫌は罪である』角川新書
今年一番を挙げるとしたらこれ。
今年は「機嫌」というものをよく考えた1年だった。それは、教員や子どもと関わる上での僕の一番大きな軸が「機嫌良く接する」というものに落ち着こうとしていた、というところも大きいのだが、よりこの軸がどっしりと確固たるものになったのは、まぎれもなくこの本のおかげだ。
自身の青年期を「不機嫌」と完全に言い切っている齋藤孝先生が、世の中でいかにその「不機嫌」が悪影響を及ぼしているのかをズバリ指摘している。もちろんそれだけではなく、いかにすれば「機嫌」をよくしていけるかについても解説されているのが良い。
これを読むと、ネット上ではびこる「不機嫌」が本当に目につくようになるし、「不機嫌」の悪影響を知っているからこそ職場でも子どもと関わるときも「機嫌よく過ごそう」と思えるようになる。「機嫌」というものに悩んでいるのなら、今すぐこの本を手に取るべきだ。
工藤勇一『学校の「当たり前」をやめた。 ― 生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革 ―』時事通信社
これは書いてすぐ長々とした書評を残した。それくらい衝撃の1冊だった。教育関係者だけじゃない、普通の一般企業に勤めている人でも是非読んでほしい。これまで普通にこなしてきた(僕はこなしてないが)定期テストとかクラス担任とか、組織になんとなーくある「当たり前」を疑ってみるという気にさせてくれる。
詳細な書評はこちらを。
Jam『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』サンクチュアリ出版
実はこの本、ちょうどクリスマスの日に届いてつい数日前に読み終えた本である。今年はAmazonで月に1回くらいよく本を買っていたのだが、よく「あなたへのオススメ」で出てきていてなんとなく気になったので買った。
そしたらこれが大当たりだった。Amazon、いい仕事したぞ。
SNSや人間関係のあれこれを、かわいらしい猫の漫画とともにめっちゃくちゃ優しく丁寧に「気にし過ぎだよ」「こういう考え方もあるよ」と教えてくれる。これが1mmも押し付けがましいところがなくて、すごくいい。こういうできないこととか考え方についての本って、よく著者がそれを実践できてるからかやけに上から目線で書かれていたり、意図していなくてもそう感じてしまうようなものが多いのだけど、これに関しては微塵にも感じなかった。
それと、この手の本は、もちろん自分のために読んだりもしているのだけど、僕は関わっている子どもたちにいつでも勧められるように読んでいることがよくある。この年末というタイミングで、ようやく自信を持って子どもたちに勧めることのできる1冊を見つけることができたかもしれない。
宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』新潮新書
これもすぐに書評を残した1冊。これと、同じ新潮新書から出ている岡本茂樹『反省させると犯罪者になります』をあわせて読むと、教育において「反省させる」というやり方が果たして本当に意味あるの?と思わざるを得なくなってくる。
詳細な書評はこちらから。
武田友紀『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本』飛鳥新社
今年2019年は「HSP」(Highly Sensitive Person)にこれまでにないスポットライトがあたった1年になった。このnoteでもHSPに関するトピックを書き、同じように敏感な特質を持つ友人からもすごく共感した、と、たびたびコメントをもらった。
で、HSPについてなにかいい本ありませんか?と問われると、僕はこの本をいつも紹介するようにしている。これもまた詳細な書評を残しているのでそちらを読んでほしい。そういえば、HSP本の書評をまとめてガバっと書かなきゃいけないなー。
詳細な書評はこちらから。
崎谷実穂『ネットの高校、はじめました。 新設校「N高」の教育革命』角川書店
同業他社として気になっている学校のひとつが「N高」である。
通信制高校は数あれど、いったい「N高」がどんなシステムで、どんなふうに生徒と関わりを持っているのかが純粋に気になっていた。実は11月に神戸であった「エデュコレ」にN高がブース出展されていたので喜び勇んで20分くらい話を聞いたりもしたのだが、そのときもこの本の中身が非常に役立った。
興味を惹かれたのは「Slack」というコミュニケーションツールを多用しているところ。これで部活動やホームルームまで、全国各地をリアルタイムでつないでやり取りしているそうだ。これはちょっとやってみたい。中には「教室を間違えました」とひとつかみ持っていく先生もいるそうで、思わず笑ってしまった。
「子どもがN高校に進学を希望している」けど、N高校がどんなところかわからない・・・という層には絶対に読んでほしい。
デイヴィッド・S・キダー,ノア・D・オッペンハイム『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』文響社
この本は、今年1番読むのに時間を費やした。長くても3時間程度で読み切ってしまう僕が、なんと5時間もかけて読み切った。
そのタイトルの通り、1日1ページずつ読み進める前提で、月曜から「歴史」「文学」「芸術」「科学」「音楽」「哲学」「宗教」の順番で1週間まわっていく。ちなみにまあまあな値段する(Amazonで2618円)のだが、月々980円で読み放題のKindleUnlimitedで配信されているというのがやや謎。
個人的に興味深かったのが、やはり仕事柄月曜日の「歴史」。よく考えてみればこの本はアメリカで最初刊行されているので、歴史の目線もアメリカ寄りなのだ。最初こそアルファベット(=フェニキア文字が基になっている)やハンムラビ法典など、日本でも世界史の授業の最初らへんでやるような項目が並んでいるが、アンドリュー・カーネギーやジョン・ブラウンといった人物も登場してくる。このへんを日本の学校の世界史でやろうとすると相当コアな内容になってくるはずだ。
このシリーズには続編、続々編もあって、「大人の百科事典」という感じで本棚においておけばそれはそれは教養が深まるんだろうなあ、と思う。
山中 伸弥,平尾 誠二・惠子『友情 平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」』講談社
2019年といえばラグビーワールドカップであろう。ちょうどそのころに手にとったこの本は、3年前に亡くなった元日本代表の平尾誠二さんと、神戸大学時代にラグビー部だったiPS細胞の山中伸弥教授がいかにして出会い、そしてガンに侵された平尾さんを山中教授がいかに支えたのか、それぞれの視点から克明に記録されている。
彼らが出会ったのは2010年。そして平尾さんが亡くなるのは2016年。たった6年の付き合いだったにもかかわらず、期間というものはなにひとつ関係ない、「男の友情」というものがひしひしと伝わってくる。
強豪アイルランドを破り、その勢いそのままにスコットランドも倒して決勝トーナメントへ進出した今年のラグビー日本代表を平尾さんはどんな面持ちで眺めていたのだろう。
個人的には、平尾さんが亡くなったのがうちの親父が大腸ガンで亡くなる1週間ほど前だったこと、そして山中教授の愛読本の意外すぎるチョイスにびっくりしたのだった。
堀江貴文『刑務所なう。』文藝春秋
ライブドア事件で逮捕されたホリエモンが、長野刑務所に収監されていたということは有名な話である。そしてその様子を制約がある中で毎日事細かく記録していたこのシリーズの存在は図書館で見かけて前から知ってはいたのだが、KindleUnlimitedで配信されていたので興味本位でダウンロードした。
まさかこんな本だとは思わなかった。
僕がこの本でホリエモンに驚かされたのはホリエモンの記憶量、そして塀の中という厳しすぎる制約の中で以下に情報をかき集め、いかに情報を発信していたのかということ。毎日の三食のメニュー、仕事内容、そこでの受刑者の様子など、まあ1日の最後に限りある自由時間をフルに活用していたのだろうけど、本当に塀の中からこの情報を発信していたのか?と驚かされるばかりで、食い入るように読みふけってしまった。もちろん「刑務所」シリーズ全部読んだ。
よく知られていない刑務所という場所を知る上でも、この本は貴重な資料になりうると思う。あと、ただ服役しているだけで勝手にダイエットに成功してどんどんどんどんホリエモンが痩せていく様子と、刑務所の食事のおかげで明らかにホリエモンの味覚が変わっていく過程には少し笑ってしまった。
内田樹『先生はえらい』ちくまプリマー新書
内田樹先生の本も今年はちょくちょく手にしていたが、これは「ちくまプリマー新書」という若年層向けの新書シリーズの創刊ラインナップとして出たものなので結構前の作品になる。
が、「若年層向けの新書シリーズ」から出てる割には、少し難解な内容ではあるのだ。実際大学入試の問題としてこの本の文章もよく引用されているらしい。たしかに出てきそうな文章でもある。僕もところどころ、「先生これなに言ってんだ??」といったん戻ったりしながら読み進めた。正直に書けばほかにも印象的な本はいっぱいあったのに、ではなんでこの本を2019年の読んだ本のまとめの最後にもってきたのか。
それは、最後の一文に完全にやられてしまったからだ。「わかんねー!」と思いながらも読み進めて読み進めて、最後の最後に出会った一文。そうか、僕はこの一文を読むためにこの本を買ったのだ、と確信した瞬間だった。そういう意味で、この本を一番最後に持ってきたのだ。この体験はぜひ味わってほしい。あの一文のためにAmazonで858円払う価値はある。
まとめ
12月29日時点で今年読んだ本の数を整理してみたら、なんと312冊になっていた。昨年は280冊だったので「今年(2019年)は300冊を目標に」と、なんなら4月に職場で生徒の前で自己紹介したときもそう宣言したのだが、この目標冊数に達することができて少しホッとしている。
そして、実は今年、ほとんど地元の図書館を利用しなかった。理由は2月ぐらいにKindleUnlimitedを契約したのもあるのだが、「きちんと本を買う」ことをわりと心がけるようになったからというのもある(あと散々バカにしていたKindleをいざ使い始めたらうっかり「汚い本」に当たった、というストレスから開放されたのも大きい)。おかげでついに本棚の容量が限界に来ているという問題もあるのだが、「本を買う」という習慣がついたのは自分の中ではちょっと変わり始めたな、と思えたことだった。
来年もひきつづき、この調子で読み続けていく予定です。しかし、もうまったく余裕のない本棚の容量、マジでどうしよう。。。