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恋と愛の違い

結婚してよかったことは、恋愛に振り回されなくてよくなったことだ。

結婚してよくなかったことは、誰かと恋に落ちる喜びを味わえなくなったことだ。

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僕の人生にとって恋愛は不可分なものだった。

生きていく上で、恋愛はいつも僕の隣にあった。受験の時は当時付き合っていた彼女に振り回されたし、一人の女性に何年間も片思いしてしまったこともあったし、重い重い愛の告白を妻となってくれた女性にしてしまったりした。

全て自分の責任ではあるけれど、僕は恋愛に振り回されて生きてきた。

恋愛が好きだった。それは生きていると実感するための僕の数少ないツールであり、画期的なメソッドのひとつだった。恋愛をしている間、僕は本当の僕でいれるような気がしていたし、実際そうだったのだと思う。

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結婚すると、恋愛はできなくなる。もちろん、夫婦の間に恋愛のようなキラキラした感情があるのは事実だけれど、それはどちらかと言えば愛がもたらすものだ。

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話を少し変える。

昨年4月に会社を辞めて小説家になってからというものの、身の回りが騒がしくなった。正確に言えば、会社を辞めてからだいぶ経った12月くらいからうるさくなったのだけど、でも総合的に言えば、4月からずっと激動の渦の中にいたのだと感じる。

僕は精神的におかしくなってしまいそうな限界と戦いながら、ずっと小説を書いてきた。そして時々、本当におかしくなってしまう瞬間があった。それはニーチェが指摘したように、闇を垣間見た瞬間でもあった。

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何を言いたいのかと言えば、そのような闇を見ている間も、僕は大きな何かに守られている感触があった。

大きなものに守られている。それはなんというか、神秘的な感情に近い。その大きなものがなんなのかは未だによくわからないのだけど、僕はとても大きなファミリーのような存在に守られていると感じている。

愛は温度だ、と思う。例えば誰かと抱きしめあった時の温もりがそう。それ以外にも、寒いに日に外のトイレを使った時、手洗い場から流れる水が温かかったりするのもそう。

そのような愛を、僕は日常的に感じている。

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それなら恋とはなんだろうか。僕には、ひとつの答えがある。

恋は、病気だ。どんな人間でもかかる疑いのある病のひとつだ。それは苦しくて、切なくて、時にはとてつもなく苦い。

病気だからすぐに治ってしまうこともあるし、悪化すると慢性化してしまう恐れもある。だけど恋の病は、僕たちに、その薬がとても美味しいのだということも教えてくれる。

僕は、どれだけ年老いていこうとも、この恋の病にかかることのできる人間でありたいな、と思う。それがなぜなのか言葉にするのは難しいけれど、一言で言えば、やっぱり僕は恋が好きなのだ。

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日本語には「恋」と「愛」と二つの言葉がある。だけど例えば英語で考えてみると、恋も愛もどちらも「LOVE」となってしまう。

日本人は恋愛というものに、他の民族よりも真剣に向き合ってきた人種なのではないかな、と感じる。そして、そんな日本人として生まれてこれたことを、僕は嬉しく思っている。

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菊池俊平
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