Vol.2 2022 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展 in板橋区立美術館
はじめに
Buon giorno!!
淑徳大学 杉原ゼミの町田です。
6月25日(土)~8月7日(日)に、板橋区立美術館で開催されている
「2022 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」に行ってきました。
「2022 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」について
まずは、「 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」について紹介します。
18歳以上の方がエントリーでき、子どもの本のために制作された原画を5枚1組の作品にして応募します。
世界中のイラストレーターの登竜門としても知られています。
また、審査員が毎年変わるのも特徴です。
今年は、日本・フランス・ポーランド・イタリア・ベネズエラの5人が審査をし、29ヵ国 78名のイラストレーターが選ばれました。
板橋区立美術館では、「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア(BCBF)」で、入選し78作品を日本で最初に見ることができます。
絵本の原画を鑑賞した後、
美術館の館長、松岡希代子さんに取材をさせていただきました。
絵本原画の魅力
私は、世界中から集まった絵本原画を鑑賞し、感じたことが2つあります。
1つ目は、表現の仕方は「人それぞれ違って良い」ということです。
絵本の原画5枚をどのように使い、表現するかは、作家によって人それぞれ異なります。
沢山の色を使ったカラフルな作品もあれば、
白と黒の2色のみで描かれたモノクロの作品もありました。
紙の大きさや向き、5枚の組み方など、表現の仕方はみんな違いますが、
同じものがないからこそ面白いのだと気が付きました。
また、「原画」ならではの、修正の後や痕跡などが生で見られるのも原画展の魅力だと思います。
型にはまらない表現が、唯一無二の作品となり、個性を表していました。
そして、2つ目は「世界は繋がっている」ということです。
現在、新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵攻など、世界には様々な問題が起こっています。
作品から、戦争・幸福・人生・動物・社会・環境など、様々なテーマを読み取ることができました。
話す言語は国によって違っていても、絵本は世界共通の交流ツールであると思いました。
絵を見れば作者の込めた想いが伝わってきます。
世界の作品に触れ、離れていても世界は繋がっていると肌で感じました。
松岡館長に取材をさせていただきました
今回私は、板橋区立美術館の館長である松岡希代子さんに取材をさせていただきました。
お話を伺う中で、ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア(BCBF)では、
「多様性を重視すること」と「対話と橋を架ける場として世界が繋がること」の2つを大切にしていると伝えてくれました。
多様性
世界の絵本原画を見ていると、国によって文化的背景が違うことが分かります。
松岡さんは「国によって価値や考え方は人それぞれ異なるけれど、みんな違って良いんです」と言っていました。
また、このコンテストには「一等賞」や「グランプリ」がありません。
選ばれた作品全てに「入選」という表記がされます。
「このコンテストに、順位がないのは優劣なく入賞作品を選ぶ審査をしているからです。今、世界は繋がるのが難しいけれど、人々が繋がれる橋を架ける場所としてボローニャ展はあります」と教えてくれました。
日常生活の中からインスピレーションを受けること、
自由な発想で表現をすることが大事だと学びました。
対話と架け橋
ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア(BCBF)は、
「対話と橋を架ける場」を大切にしています。
しかし、今年はロシアによるウクライナ侵攻があった影響でブックフェアでは、
ロシアの作家の作品を展示させるか悩んだといいます。
「今年はウクライナの作家が2人、ロシアの作家が3人入選しています。
『ロシアの入選作品の展示を認めないようにしよう』という意見もあり、展示するかどうかについて話し合が行われました。
ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア(BCBF)は対話と架け橋の場であるため、排除するのではなく、ロシア人の作家個人として入選した3人も同じように展示しようという考えになりました。」
世界中の作品が1つの場所に集まるからこそ、起きてしまった出来事なのだと思います。
今回取材をし、世界で起きている問題は、他人事ではないと気が付きました。
世界には、差別・偏見・貧困・ジェンダーなど、問題に悩んでいる人たちがいます。私たちにできることは何か、考えていかなければいけないと学びました。
これからも世界が繋がっていくには、もっとお互いを認め合える場所が必要なのではないかと思いました。
絵本さんぽの取り組み
ボローニャ展の期間中、板橋区内や周辺で、行われている
「ボローニャ絵本さんぽ」のイベントについてもお聞きしました。
「ボローニャ絵本さんぽは、ボローニャ展と同時多発的なことをしようと 10 年以上前からやっています。ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア(BCBF)をお手本に、絵本さんぽをはじめ るようになりました。」
イタリアのボローニャでは、ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア(BCBF)の期間中、街全体で児童書を盛り上げる取り組みをしているそうです。
「最初は、知り合いの人に声をかけて少しずつはじめました。その後、おさんぽMAPが作られたことにより認知度が高まりました。今では、こちらが企画をしなくてもお店の方から声をかけてくださいます。」
最初は小さかった絵本さんぽも、今では板橋区全体で、
カフェやギャラリーでボローニャに関するイベントが行われるようになっています。
今回、取材をさせていただき、世界について考えるだけでなく、
自分を見つめ直すきっかけにもなりました。
とても貴重なお話をありがとうございました!
「絵本さんぽ」について
ボローニャ絵本さんぽ2022とは
ここでは、松岡さんの取材の中にも出てきた「絵本さんぽ」について紹介します。
「絵本さんぽ」は、「2022 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」と同時期に行われている、板橋区内や美術館の周辺でボローニャ展に関連するイベントのことです。
毎年カフェや書店、ギャラリーなどを会場にし、
展示・ワークショップ・新作グッズの販売等が行われています。
今年からの初参加は 「リトルフラワー(ときわ台)」さん、
「自然派ワインとパン まさもと(下赤塚)」さんです。
今後、絵本さんぽの様子を私たちが取材し、このnoteでレポートしていく予定です。
世界の絵本から学ぶこと
あの子は ぼくらの スーパースター
鑑賞中、私が印象に残った作品は
スペイン作家、ラクウェル・カタリーナ・レデスマさんの
「あの子は ぼくらの スーパースター」という作品です。
この絵本は、「貧困」や「家族」をテーマに描かれています。
2022 年のボローニャ展入賞作品で、裸足でサッカーをする少年が主人公です。
少年が持っている「優しさ」に、読んだ後心が温かくなる一冊で、
絵本から「生き方」と「思いやり」が伝わり、とても感動しました。
鑑賞後はグッズショップへ
美術館の1階には、グッズショップが併設されています。
2階の原画展では、過去の入選作品など世界各国の絵本が読める
読書コーナーがあるため、気になった本は、ショップで購入が可能です。
ショップには、展示室で展示されている国内外の絵本が販売されている他、
ボローニャ展の図録もあります。(※現在、2階の展示室で紹介している絵本はショップではほぼ売り切れとなっています)
ボローニャ展の図録「ILLUST RATORS ANNUAL」では、
2022年に入選された作品の一覧が載っています。
図録や絵本作家のグッズは、原画展の思い出になりますよ。
杉原ゼミでは、「ILLUST RATORS ANNUAL 2022」と
2015年に入選し、戦争をテーマにした絵本「戦争が町にやってくる」を購入し、今後の学びに繋げました。
おわりに
板橋区立美術館にて行われている、「2022イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」は、2022年8月7日(日)まで開催されています。
詳細は板橋区立美術館のホームページからご覧ください。
また、ボローニャ展と同時期に開催されている「絵本さんぽ」では、
過去に入選した作家の展示やグッズの販売などが行われています。
大人になった今だからこそ感じる
絵本の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
2021年度の「絵本のまち板橋」プロジェクトnote記事より
次の記事では、絵本さんぽに参加されている「Cafe & Gallery Patina」さんと、「cafe arica」さんを紹介します。
以上、杉原ゼミ 町田でした。