Vol.9 アーティストの絵本「宝石少女」
こんにちは。
淑徳大学 杉原ゼミの丹野です。
今回は、ボローニャ絵本さんぽ2022でボローニャ展関連の展覧会として紹介されている、8月5日㈮~8月20日㈯に「不忍画廊」(しのばずがろう)での
「アーティストの絵本プロジェクト第四弾 佐藤文音個展 宝石少女」に行ってきました。
今回は、アーティストの絵本プロジェクトに参加されている版画家(リトグラフ)/絵本作家の佐藤文音さんにお話を伺いました。
「アーティストの絵本プロジェクト」とは
『宝石少女』とは
『宝石少女』は、佐藤文音さんが「アーティストの絵本プロジェクト」で制作した作品で、現実と非現実のはざまが描かれています。作品に登場する少女の身体に宝石が生えてくるという、不思議な物語です。黒いリトグラフを基調とした絵が佐藤さんの作品の特徴です。
(リトグラフ…アルミ板に描いて複製する描き方。)
佐藤さんにお話を伺いました
今回、アーティストの絵本プロジェクトに参加した佐藤文音さんに取材しました。
──作家を目指すきっかけは何でしたか。
佐藤さん: 子どものころ両親が、家族の物語を描いたハンドメイドの絵本をつくってくれました。それを見て楽しいなって思ったのが、絵本を好きになったきっかけです。そのあと、美術大学で絵を学んで、絵本をつくりたいと思うようになりました。
──ボローニャ国際原画展に出品したきっかけは何ですか。
佐藤さん:絵本作家になろうと思い、どうやったら絵本作家になれるのだろうと調べて、出版社に持ち込むかコンペに出すかのどっちかしかないなと考えました。ボローニャ国際原画展で見た作品に強く惹かれたので、どうしてもここで賞を取りたいと思いました。それから8年挑戦して8回落ちました。9年目でやっと受賞したのが2018年です。
──ボローニャ国際原画展への出品のエピソードをお聞かせください。
佐藤さん:もともと、学生時代からリトグラフで描いていてボローニャもリトグラフで挑戦しました。でも、子ども向けにしてはあまりにも怖すぎるので入選しませんでした(笑)。それで、7回目に落ちたあと「絵が怖いからなのかな」と思って、自分の味を残しつつ可愛い絵を描くようにしました。そして9回目で入賞できました。水彩画は、まだまだ勉強中です。
──宝石少女の作風の背景にはどういったことがありましたか。
佐藤さん: 2017年に、「宝石少女クリスタルシンドローム」という、女の子から宝石が生えている一つの作品としてつくりました。それが自分の中ですごく良いと思って、その続きをどこかでつくりたいと思ったときに、今回のアーティストの絵本プロジェクトのお話をいただきました。クリスタルシンドロームの絵本をつくりたいと思って、宝石少女をつくりました。物語は、自分の中の宝石少女に対するピースを集めてできた感じです。
子どものころに、月の光によって、実在しない生き物たちが目覚める話を書いていたので、実在しないものを描いたのは、この作品にもつながっていると感じます。
──宝石少女を通して伝えたいことは何ですか。
佐藤さん:奇妙な出来事はわりとすぐそばにあるということを描きたかったです。非現実的なことって日常にはないことだけど、わりと起こりうるかもしれないって思っています。不思議な現象は、隣人のようなものだと考えています。「非現実的なものを否定したくない」という考えが強いかもしれません。
──今後描きたいものは何ですか。
佐藤さん:希望としては、ニャーチカの第2弾を描きたいと思っています。それがかなわなかったら、本来あるものとないものを組み合わせて、半分のものをつくるのが好きなので、キメラみたいなキャラクターを入れた絵本をつくりたいです。
おわりに
今回、「アーティストの絵本プロジェクト第四弾 佐藤文音個展 宝石少女」を取材して、アーティストの方々の絵本出版までの厳しさも感じました。不忍画廊さんのアーティストの絵本プロジェクトや個展の開催が、一人一人のアーティストの方の夢をかなえる一歩として貴重な場となっていることが分かりました。大人向けの絵本は初めて見ましたが、大人にこそ感じ取れる作品のメッセージが込められていて、絵本を観ない大人にもこの記事を通して届いてほしいと思います。
佐藤さんの作品は、2022年9月22日(木)~27日(火)の期間には、2018年ボローニャ国際絵本原画展に入選してボローニャのブックフェアで出会った5人の展覧会「“Buon Viaggio ~良い旅を~”ボローニャで繋がった作家たち」でも展示されるそうです!是非チェックしてみてください!
以上、
淑徳大学杉原ゼミの丹野が担当しました。