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Vol.4 「絵本の編集者に聞く On the table 『おめんです3』ができるまで」

はじめに

こんにちは!
淑徳大学杉原ゼミの町田です。

今回は、2022年5月14日に板橋区立中央図書館で行われた、講演会シリーズ 
On the table 「私の作ったこの1冊ー編集者にきくー」
「第4回『おめんです3』ができるまで」を取材をしました。

講演会では、しかけ絵本ならではの制作過程や、おめんの研究から始まったエピソードなど、貴重なお話を聞くことができました。

まずは、「おめんです」についてご紹介します。
こちらの動画をご覧ください!

『おめんです』シリーズ 
出版:偕成社(かいせいしゃ)
作・絵:いしかわこうじ 

きつねのおめんに、おにのおめん。おめんをとると…、あれあれ!びっくりするしかけがあるよ。赤ちゃんから楽しめるしかけ絵本。
第1回積文館グループ絵本大賞を受賞。
おめんのしかけをめくると、だれもが思わずわらってしまう、みんなで楽しめる作品。保育園や幼稚園の読み聞かせでも定番の作品で、赤ちゃんのファーストブックとしても最適な1冊。

https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784031271103


2013年6月に『おめんです』が発売。
続けて2014年10月に『おめんです2』、2021年12月に『おめんです3』と
シリーズ化されるほど、大人気の絵本となっています。


講演会シリーズ 「On the table」

この講演会シリーズ 「On the table」は、昨年から行われている「絵本のまち板橋」のプロジェクトの一環で、定期的に開催されているイベントの一つです。
板橋区立中央図書館にて、「世界の書棚から」と「On the table」の2つのシリーズで行われています。

講演会シリーズ
〇「世界の書棚から」
・・・在日大使館の職員や、各言語の翻訳家を講師にお招きし、各国の注目の絵本作家や作品、最新出版事情などをお話しいただく講演会シリーズ。
〇「On the table」
・・・絵本の編集者を講師にお招きし、1冊の絵本が完成するまでの過程や、とっておきの制作秘話をお話しいただく講演会シリーズ。

https://www.city.itabashi.tokyo.jp/library/index.html

今回参加した「On the table」は、名前の通り、会場のテーブルに制作過程で使われた色校や原画が置いてあり、貴重な資料を見ることができます。

会場では、机の上にたくさんの資料が並べられました。
絵本の制作についてだけではなく、
編集者ならではの、お話も聞くことができました。


講演会のはじまり

講師は、株式会社偕成社(かいせいしゃ)編集部の小宮山いつかさんです。

偕成社は、『はらぺこあおむし』『からすのパンやさん』など、
子どもたちに大人気の絵本を数多く出版している会社です。


講演会は、小宮山さんの『おめんです3』の読み聞かせから始まりました。
参加者の多くが大人だったのですが、
最初は恥ずかしがっていた大人たちも、徐々に子ども心を取り戻しながら、しかけ絵本を楽しんでいました。

『おめんです』は、子どもに大人気の絵本ですが、
講演会やワークショップのオープニングでも読まれるそうです。
場を温める役割としても選ばれるのだとか。

会場内も、あっという間に空気が和んでいきました。

小宮山いつか さん
株式会社偕成社の編集者。
編集を担当した主な作品は、『もぐらバス』『さかさまたんけんんたい』『重力って・・・』などがある。


おめんオーディション

『おめんです3』では、6つのおめんと動物たちが6種類登場します。

「『おめんです1』では和のおめん、『おめんです2』では海外のおめん
そして、『おめんです3』では再び和のおめんというのがゆるやかなテーマになっています」
と教えてもらいました。

「ラフの段階で、いしかわこうじさんがおめんと動物の組み合わせを考えるようすは、まるで、出演者のオーディションをしているかのようです」
と話していました。

作者であるいしかわこうじさんは、絵・文・デザインなど
構成に関する部分は、全て自身で手掛けられています。
イラストを描く際には、天狗やなまはげなどのおめんを実際に手に入れ、「実物を見ながら描く」ということを徹底していたそうです。

石川浩二(いしかわこうじ)さん
絵本作家。1963年千葉県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。講談社童画グランプリで大賞受賞。イタリア・ボローニャ国際絵本原画展で入選。主な作品は『おめんです』『たまごのえほん』『まほうつかい』『つみきくん』『どうぶついろいろかくれんぼ』『ふねくんのたび』などがあり、海外でも数多く出版されている。

https://www.kaiseisha.co.jp/authors/13078

『おめんです3』には能面のページもあります。
子どもにとって怖さのある能面は、怖すぎないようにいしかわさんが何度も調整を行なったとのこと。

講演会の様子
板橋区立美術館館長 松岡希代子さん(左)  今回の講師 小宮山いつかさん(右)

そして、「おめんです」シリーズは、とりわけ「色校(いろこう)」の工程に時間をかけて作っていることを語ってくれました。

色校とは、印刷した際に指定した色で刷り上がるかを確認し、チェックするための校正のことをいいます。

入校→初校→再校 の後も「おめんです」では、
→三校→四校→五校…と何度も色校を繰り返し出し、色味の調整を行ったといいます。

絵本を作っていく中で重要な要素の一つである、色を細かく調整していることを知り、驚きました!


大人気になった「おめんです」シリーズ

『おめんです』シリーズは、絵本をめくって遊ぶだけでなく、
実際に顔にあてて、おめんとして遊ぶこともできます。

実際に私たちも遊んでみました!

おめんで遊ぶ大学生

また、『おめんです1』と『おめんです2』はビックブックとして通常の絵本の倍の大きさで制作されています。

ビックブックは、読み聞かせの時に、大勢の子どもたちが絵本の前に集まることができたり、おめんに指をさしながら楽しめたり、
みんなで一緒に楽しめる工夫もされています。

そして、つくってあそぼう!おめんブックは、自分で12個のおめんが作れる工作絵本として発売されています。

つくってあそぼう!おめんブック

『おめんです2』のおめんをかぶってみると、なんと目の穴がピッタリ!

目の穴に注目!

子どもだけではなく、大人の目にも合いました。
まさに、子どもと大人が一緒に楽しめるしかけ絵本です。

この目の穴をあける作業は、
板橋区にある製本会社「大村製本」さんが手掛けています。1ミリ単位で調整を行う大村製本さんの技術の凄さにビックリしました!


100年愛される絵本作りを目指して


「おめんです」シリーズは、企画や絵のすばらしさはもちろんのこと、色校に対して非常に強いこだわりを持っていることや、紙の厚さ・穴の開き方など、細部にまでこだわって作っていることが、大人気絵本へと繋がっているのだと感じます。

『おめんです3』

また、本のデジタル化が進んできている現在、紙の絵本の良さはこんなところにある、といしかわさんは言っているそうです。
「明日になってもなくならず、いつでもそこにあるということが、子どもにとっても大人にとっても大切」

お話を聞いて、本のデジタル化が進んでいく中でも、「リアルに残していくべきもの」もあるということを学びました。

最後には、「『おめんです』シリーズは、100年愛される絵本として長く読まれることを目指している」と話してくれました。


おわりに

今回、『おめんです3』の講演に参加し、「人気の理由は、細部にまでこだわっている制作過程にある」ということを学びました。

子どもの頃に読んだ絵本の記憶は、
いつまで経っても忘れない大切さを感じることができました。
大人になってもすぐ思い出せるように、絵本は手の届くところに置いておく必要があることも学びました。
そのために、デジタル化が進んでも、紙の絵本を守り続けていく大切さ感じることができました。

そして、最後に小宮山さん・松岡さんと一緒に写真撮影をしました。
真ん中に写っている方が、『おめんです3』の編集者であり、第4回講師の小宮山いつかさん。
その右隣にいる方が、板橋区立美術館館長の松岡希代子さんです。
松岡さんは、講演会で司会を担当していました。

『おめんです』シリーズは、しかけをめくったり、おめんをかぶって遊んだり、子どもと大人が一緒に楽しめる素敵な絵本です。この度は、貴重なお話をたくさんうかがうことができ、とても勉強になりました。

ありがとうございました!


これからも「絵本のまち板橋」は続く

板橋区では「絵本のまち板橋」のブランディングを進めるため、美術館や図書館を中心に、絵本に関するさまざまなイベントが開催されています。

板橋区立中央図書館で行われている「On the table」は、定期的に開催されていますが、全12回、全て違う出版社・テーマ・種類の絵本を紹介していくそうです。



以上、
淑徳大学 杉原ゼミの町田が担当しました。


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