他者の表現を読み解く◆Madonna/Ja t'aime Moi Non Plus◆超ゲンズブール偏向解釈
マドンナのMDNAツアーパリオランピア公演、これは全体の尺が短めなのだが、この会場限定の演出でそうなっている上、とてもとても気になる謎の箇所があったのだ。
最後の方に出て来るゲンズブール役の人がいて、マドンナがエロい振り付けでクネクネと絡みつつ2人で「ジュテームモワノンプリュ」を歌い、マドンナがゲンズブールをどんどん縛りあげて行き、曲が終わると同時に射殺し、そこで終演なのだ。
簡単に観れば007映画の拷問セックスなのだけど、その選曲は何故なの?
うわあ、何を表してるのコレ?!って気になってたんだよ。
だが、その謎が先日ようやく解けた(?)から、ちゃんと記録して置くね。
あ、因みにゲンズブールが初期イメージにしていた暗色スーツ・赤い薔薇の花・ピストルのモチーフ、マドンナ様はちゃんとおさえてますよ。
射殺される人物がゲンズブールと違ってたら、寧ろ大変な侮辱という事にしかならんでしょう。
Madonna Ja t'aime Moi Non Plus
他のアングルは各自YouTubeで探してみてちょう。
◆謎解き開始◆超ゲンズブール偏向解釈◆
まず、ごく最近のゲンズブール曲カバー動画があって、今回の大きなヒントになった。
それは、ジェーン・バーキンとイギーポップのデュエットで「エリザ」。
イギーポップが割と真面目にゲンズブール役をつとめているのよ。
オツに取り澄ました姿も素敵だけど、イギーポップって普段は全裸のあばれはっちゃくという芸風の方でしょ?
そう、ゲンズブールも私生活ではアル中でDV男で…オツに取り澄ました姿だけではなかった。
ジェーン・バーキン&イギーポップ「Elisa」
そして、この曲「Elisa」と同じタイトルのゲンズブール関連映画があるのを思い出した訳です。
ヴァネッサ・パラディ主演「Elisa」
ヒット曲が一曲しかない酒場の貧困ピアニストオジサン(ジェラール・ドパルデュー)を、幼い頃に捨てられた実の娘(ヴァネッサ・パラディ)がピストル持って殺しに行くというストーリー。
ゲンズブールが射殺されそうになる映画は他にもあったですね、本人が監督した「シャルロットフォーエバー」がそうです。
その焼き直しかどうかはともかく、それっぽさはあるゲンズブール関連映画なのは間違いない。
予告編
ジェラール・ドパルデューのキャラクターはゲンズブールの嫌われる醜悪部分だけ集めたかの様なアル中高慢ちき乱暴不潔親父で、カッコイイ要素が1つも無いわけ。
設定としては、一曲だけレコードをリリースして失踪した元ヒモで、後悔に暮れる日々の中でそのまんま死ぬくらいの不健康加減に調整してある。
言ってみれば仮想ゲンズブール落伍者バージョンなのね(※1)。
公開時期は本人の死からたったの3年後で、実の娘シャルロットへの(父親がああいう風なので幼い内から複雑に葛藤があり、実父の死を素直に悲しめないという)同情が集まっていた時期でもあり、ゲンズブール曲モチーフで父娘対決を描くと言ったら、テーマは親子間の殺し合いしかなかろう!というタイミングでもあった。
故にこの作品はゲンズブールをジェラール・ドパルデューに置き換えているとするなら、娘役には元嫁や実子たち全員が当てはまっちゃうという感じの、普遍性の高い親子間殺意問題映画となっている、そういう仕組みなんですわ。
この話、ヴァネッサ・パラディは殺す決心がつかず、最終的には赦し和解するという、後味爽やかなまとめ方となっている。
だけど、これはこれでモヤモヤするのよ、現実にはこんな早くキレイにまとまらないからw
MDNAツアーパリオランピアの「ジュテームモワノンプリュ」、これは多分だけど、娘(ヴァネッサ・パラディ)がちゃんと父親にトドメを刺すマドンナなりのバージョン、つまり映画「Elisa」の続きとか補足なのだろう。
…若しかすると子供たちのうち誰かが仕留めてやる必要があったのかも知れない。
だから、実際に親子ほど歳の離れたマドンナが代行として射殺してるんだろなーと。
まあ、そんな理由もあって、確実に殺るためにも色仕掛け使ってギュウギュウに拘束したんだろーな。
この曲でマドンナの言いたい事はたぶん、
「おいヤリチン親父、よくも兄弟ばっかり大勢ブリブリ殖やしたな?お前の捨てた嫁や子供たちがどんだけ苦労するか判ってんのか?それを顧みるためにも、一度は始末されねばならんよ。相も変わらずロリ少女のケツ追っ掛けてチャラチャラしてやがって、案の定色仕掛けにホイホイ引っ掛かりおって。生まれ変わったら、次はもう少し責任感を持ちな」
バキューン
「ヴァネッサ、あなた少し甘いわ。ほだされてはいけない。自分側の隙に付け入らせてはダメ。向こうはその作戦ひとつで生き延びてるのよ?奴はそういう病気なんだし、どうせ反省しないのよ。あなたに飽きたら相手を取り替えるだけ、その繰り返し。だから憐れんでやる必要も無いの。復讐しに行ったのなら、確実に仕留める方法で目的を遂げなさい。でないと、あなた自身の人生が開始出来ないわ」
なのだろうね。
だって、マドンナの処も実家がカトリック教義に従ったためヤリチン親父が子供あちこちに作って、マドンナの異母兄弟10人以上いるんだもん…マドンナ当人も父親と和解するまでにドえらい時間掛かってるし、カトリック教義に従うのは不正解じゃなかろうか?という諸問題で言いたい事があるのは当然だろーよ。
まあね、複数の材料を集めた上の推測による、勝手な妄想的深読み仮説ですよw
言ってみれば、超ゲンズブール偏向解釈ですよ。
※※※
あ、これはひとつの物語、メロディネルソンとおれとの。
あ、これはひとつの物語、マドンナルイーズと死んだ母とヤリチン父との。
あ、これはひとつの物語、持てる者リュシアンと持たざる者ルルーとの。
【了】
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【注釈】
※1
ゲンズブールの要素は複数人に分割されており、ロリコン担当や成功者担当などもちゃんとそれぞれ配置されている。
これらの仮想ゲンズブールを統合すれば、ゲンズブール当人の特徴や問題がほぼ全て揃うという仕組み。
【スペシャルサンクス】
但馬オサム氏
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2020年4月13日初版発行
©️夙谷稀
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