「仕事=辛い」が隠すもの
「仕事なんだから、我慢して」
「働くって大変なことだよ」
社会に出てから言われ続けてきたことだ。
納得感はあった。
上司の指示に従わなければいけない
納期を守らなければいけない
結果を出さなければいけない
仕事にはルールがたくさんあって、守るので精一杯だった。
とても楽しむ余裕などなくて、
「仕事=辛いもの」
ずっとそう思っていた。
あの日までは
仕事=辛いもの
僕は、新卒で大手のメーカーに就職した。
職種は販売事業の企画。
年度や中長期の販売・収支計画を立てて、管理をするのが主な仕事だ。
キッチリした業務に聞こえるかもしれないが、内情はかなり地味で泥臭い。
経営陣の意向に影響され、無茶振りや短納期の依頼は日常茶飯事だ。
掌返しやはしご外しも多く、要望に応えるのに必死だった。
納得できないことも多かったが、
上司や同僚から「仕方がない、そんなもんだ」となだめられ、堪えていた。
そんな毎日が続くなか、いつしか
「仕事=辛いもの」という認識ができあがっていた。
オランダでの違和感
仕事に追われる日が続くこと、4年半。
転機が訪れた。
オランダへの駐在が決まったのだ。
正直、かなり運が良かった。
僕の年次での海外駐在は異例で、今でも、上司やタイミングに恵まれたとしか思えない。
欧米の会社に”解雇やリストラが当たり前”というイメージを持っていた僕の心中は期待4割、不安が6割だった。
張り詰めた気持ちで現地に到着すると、予想外の光景が広がっていた。
オフィスには殺伐さは無く、和やかさに満ちていた。
フレンドリーな会話。
同僚への配慮と尊重。
業務へのポジティブな提案
彼らはいつも楽しそうに働いていた。
どんなに忙しい時でも。
日本の職場でも、楽しそうに振る舞っている人はいた。
でも、どこか”ぎこちなく”無理をしているように見えた。
一方、彼らの姿は自然で純粋だった。
「なんで、仕事を楽しめるんだろう?」
”楽しみ”があるか
疑問が晴れたのは、数ヶ月後。
近くのチーズ屋に入ったときのことだ。
初老の男性店員が話しかけてきた。
つまみを探している旨を伝えると、
「どんな酒に合わせるのか」
「どんな味が好きか」
ニコニコしながら語りかけてきた。
彼もチーズや酒が大好きらしい。
会計を済ませた後も、彼はずっと楽しそうだった。
店を出るとき、頭の中で何かが繋がった。
「そうか、”楽しみ”があるから笑顔なんだ」
チーズ屋の彼は、チーズや酒の話をしているとき、キラキラしていた。
会社の同僚も、クルマや業務の話をするとき、少年のような目をしていた。
先に楽しみがあるから、前からワクワクできる。
旅行でも、目的地への道中も楽しく感じるものだ。
僕の”楽しみ”=誰かのため
僕は、業務内で”楽しいと感じた瞬間”を探しはじめた。
作った資料が受理されたとき
意見・提案が採用されたとき
経営方針に影響を与えられたとき
考えてみると、楽しい瞬間はたくさんあった。
辛い部分ばかりに目をやって、見えていなかっただけだった。
社会のため、国のため、そんな大層なものは僕に必要なかった。
自分のしたことが”誰かのため”になるなら、それだけで嬉しかった。
楽しみを意識すると、少しづつ笑顔が増えてきた。
先の楽しみを考えると、目の前の辛いことも受け入れられた。
気が付くと、仕事への不平不満をいうことも無くなった。
仕事を大変だと感じる人は多い。僕もそう思っていた。
でも、その大変さの中に”楽しい瞬間”は紛れていないだろうか。
その瞬間を思い浮かべると、自然と口角が上がらないだろうか。
楽しい瞬間が無ければ、作るか、楽しい仕事を探せばいい。
人生の30%の時間を笑って過ごせるのなら、
少し回り道してもおつりがくるだろう。
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