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フェルミ推定を解く際の思考プロセス(5ステップ)

※当記事は約6分で読めます【約2,600文字】

1. 当記事の目的

フェルミ推定については、

①    フェルミ推定との向き合い方

②    フェルミ推定の基本体系

こちらにて説明してきました。

練習の際に役立つフレームワークなど細かい知識は置いておくと、フェルミ推定を解くにあたって必要な知識の全体像は、当記事の「フェルミ推定を解く際の思考プロセス(5ステップ)」を理解することで完結となります。

それでは早速見ていきましょう。

2. フェルミ推定を解く際の思考プロセス(5ステップ)

特定のプロセスに沿って進めていくことで、容易にフェルミ推定の問題を解くことが出来るようになります。それが、以下の5ステップになります。

<フェルミ推定を解く際の5ステップ>
①    前提確認
②    アプローチ設定【横への因数分解】
③    モデル化【縦への要素分解】
④    計算
⑤    現実性検証

出典:東大ケーススタディ研究会

5ステップについて、フェルミ推定の過去問の中でも有名なテーマ『日本に電柱は何本あるか?』を例に具体的に見ていきたいと思います。

3. 5ステップを使った具体的な解答思考プロセス

<テーマ>
『日本に電柱は何本あるか?』

(1)   前提確認

フェルミ推定のどの基本体系で考えるのかを確認します。

⇒今回は、「ストック」の「空間」の中の「面積」で解くことを確認。

※今回のテーマの中には存在しないが、抽象的な概念がある場合は、この段階で範囲を限定します。

(2)アプローチ設定【横への因数分解】

求められている数字を出すための合理的な方程式を考えます。

日本の電柱の数=(a)日本全体の面積÷(b)電柱1本あたりの面積

(3)モデル化【縦の要素分解】

横の因数分解で考えた方程式に対して、さらに縦の要素分解で細かく分けて考えることで、フェルミ推定の精度を上げて、近似値を導き出せるようにします。

(a)日本全体の面積を「都市面積」と「田舎面積」に要素分解
(b)電柱一本当たりの面積を「都市の場合」と「田舎の場合」で要素分解

上記、モデル化によって分けた要素を、それぞれ横の因数分解に当てはめます。

<都市と田舎それぞれの電柱の数を求める式>
(c)都市面積(全体の10%)÷ 都市の場合(50m×50mで1本)
(d)田舎面積(全体の90%)÷ 田舎の場合(150m×150mで1本)

(4)計算

縦に要素分解したそれぞれの面積の値

日本面積=380,000㎢とすると、
・都市面積(全体の10%)=38,000㎢
・田舎面積(全体の90%)=342,000㎢

<都市と田舎それぞれの電柱の数を求める式>に代入すると

(c)都市にある電柱の数
38,000【×1000×1000(mに変換)】/2500(m/本)=15,200,000本
(d)田舎にある電柱の数
342,000【×1000×1000(mに変換)】/22500(m/本)=15,200,000本

<都市部と田舎の電柱の数の合計>

 日本の電柱の数=(c)15,200,000本+(d)15,200,000本=30,400,000本

(5)現実性検証

【導き出した答え】
日本の電柱の数=30,400,000本

実際には、【33,211,965本(NTTのデータより2011年)】

ということで、近似値をはじき出すことができました。

実際の戦略コンサルの面接などで、かなり的外れな数字を出すと突っ込まれることになるため、数字の妥当性を確認し、妥当でない場合は、再度アプローチ設定(横の因数分解)とモデル化(縦の要素分解)を見直します。

戦略コンサルのケース面接において与えられる時間は短いため、思ったような数字が導き出せなかったとき焦りますが、下記を念頭に入れておくと、ロジックのボトルネックについて見当がつきやすくなるため、軌道修正がしやすくなります。

<point>
①    数字が大きすぎる場合
因数分解で必要な要素が不足している可能性が大きい。
(例)市場規模などを考えるとき、シェア率を考慮できていない時、母数が大きくなるなど。

②    数字が小さすぎる場合
計算時に代入した実数の値を小さく見積もり過ぎている。

③    数字の合理性に欠けると思う場合
縦の要素分解が足りていない。
(例)当記事の場合、電柱の数を求めるとき、都市と田舎で面積当たりの電柱の数が異なるという概念が抜けているなど。

4. フェルミ推定が簡単に思えるようになるためのポイント

5ステップに沿って、『日本に電柱は何本あるか?』というテーマについて計算の流れを見ていきました。

ここで重要なのは、計算式一つ一つではなく、答えを導いていく過程の大きな流れ(ロジック)です。
そして、この大きな流れさえ理解していれば、いくつか過去問を解いていくうちにパターンに慣れるため、計算式も「あっ!今回はあの流れで、あの方程式を組み立てればいいんだ!」となってきます。

また、このパターンの見極めをする段階が、5ステップの【前提確認】で、その考えの元になるのが、記事の冒頭で紹介した「フェルミ推定の基本体系」となるわけです。

この基本体系の分岐先で方程式のパターンがほぼ固定化されるため、それぞれの基本体系に基づき、

・所有(個人、世帯)
・空間(面積、ユニット)
・市場規模
・売上

これら4パターン、最終分岐で細かく考えると6パターンの計算の流れさえ覚えていれば、ほぼ全てのフェルミ推定を解くことが出来るようになります。

したがって、

「フェルミ推定の基本体系」
     ×
「フェルミ推定を解く際の思考プロセス(5ステップ)」

この二つの考え方を身に付けてしまえば、どんなフェルミ推定も容易に説くことが出来るようになります。

5. まとめ

冒頭でも話しましたが、フェルミ推定については、「基本体系」と「解答における思考プロセスの5ステップ」を理解すれば怖いもの無しとなります。

あとは、基本体系別に過去問を実際に解いていくことによって、それぞれの方程式の組み立て方を理解すれば、中身を置き換えて計算するだけの遊びに変わっていきます。

たとえば、個人の所有の計算の場合、鞄になろうと帽子になろうと対象が何であれ、方程式の組み立て方は全く同じです。

つまるところ、6パターンの組み立て方を理解して、毎回5ステップの順に計算するのがフェルミ推定との向き合い方だと思ってください。

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