本気の「学校かくれんぼ」がおもしろい
フジテレビのバラエティ「新しいカギ」の「学校かくれんぼ」が面白い。
とても秀逸な企画だと思い、感想と期待を書き留めておきたいと思う。
■「学校かくれんぼ」とは
個人的な心持ちでいうと、「新しいカギ」には、90年代後半生まれの私の世代でいうところのめちゃイケやはねトビのように、今の学生にとって「見てて当然」と言われる番組になっていくことを期待している。
そんな「新しいカギ」内で定番企画となりつつある「学校かくれんぼ」は、現実に存在する高校を舞台に、そこに通う本当の生徒が総出で、学校のどこかに隠れた芸人6人を探すという企画である。
キャッチーで、家族団らんにも適しており、前回を見ていないと分からないようなノリも特になく取っ付きやすい。テレビでしかできない企画である。
さらに、コロナ禍で入学式や修学旅行が開催されなかった生徒たちにとって、思い出作りとしての場も提供出来ていると思う。
■魅力は「本気」なところ
私がこの企画の好きなところは主に2点。
生徒が本気になっているところと、大人が本気になっているところ。
1)生徒が本気になっている
この企画は「生徒VS芸人」という構造であり、生徒が本気にならないと成立しない。そのため、企画上は総額100万円分の図書カードが報酬として設定されている。しかしながら学生のモチベーションはその限りではないように見受ける。「やばい!いない!」「見つけた!?」「どこにいるのー!」「会いたい!」と会話しながら無邪気に楽しそうに走り回る生徒。やはり、芸人側の知名度や人気が後押ししていると思う。
今をときめくチョコレートプラネット、霜降り明星、ハナコというメンバーだからこそ生徒が本気になれるのではないか。これまで舞台となったどこの学校でも、生徒が「岡部に会いたーい!」「粗品さーんどこですかー!」と声を出しながら探し、いざ見つけると「みーつけた!」と飛び上がって喜ぶ。悔しそうな芸人を取り囲んで嬉しそうにスマホを向けてパシャパシャと写真を撮っている。その様子を見ると、図書カードどうこうよりも、人気芸人とのかくれんぼ自体をとても楽しんでいるのだなと感じる。その姿が爽やかで可愛くて、学生にスポットを当てたTBS「学校へ行こう!」を大人になってから観た時のように、自分が大人になったことを実感しなぜか苦しくもなる。
2)大人が本気になっている
この番組の面白いところは、美術スタッフにスポットが当たるところだと思う。芸人が隠れる場所を美術スタッフたちがその力を全てを注いで本気で作る。その学校にはもともとなかった「柱」や「ダクト」、本物と見間違えるクオリティの「グランドピアノ」や「切り株」など、あまりにばかばかしい傑作を全力でつくり「絶対負けない」と豪語するプロの姿に、勇気さえもらう。レギュラーのゴールデン番組でここまで美術スタッフにスポットが当たるのをあまり見たことがない気がする。この番組・この企画のスタッフの労力はえげつないものだろう。スタッフが様々な方向への配慮や説明や手続きをおこなったりロケハンをしたりカメラの位置を検討したり手間をかけて準備していることが想像できる。この規模の企画を何度も立ち上げ放送してきたフジテレビのノウハウが生かされていると思うし、フジテレビ!!これこれ!!ありがとう!!と嬉しくなる。
■これからの「学校かくれんぼ」への期待
フジテレビが作ってきた子どもが憧れるテレビ企画として「逃走中」と比較したい。「逃走中」はもはやブランドとして確立されていると思う。「逃走中」が「鬼ごっこを特別な場所で特別な設定で特別な相手とやる」というコンセプトなのに対し、「学校かくれんぼ」は「かくれんぼを慣れ親しんだ場所でいつもの感じで特別な相手とやる」といったところか。全国どこにある特別な場所ではなく多くの人が慣れ親しむ「学校」を舞台にしていることで、「うちにも来てくれないかな」という気持ちを沸き立たせる。教育の場がこのような企画を許すということ、なんなら先生たちも楽しそうに参加していることは、テレビがまだ媒体として信頼されているということも示してくれているような気がする。
「逃走中」がその企画単独で番組化していて名前が広がりやすいのに対し、「学校かくれんぼ」は番組の中の一企画なので、認知が広まるには、まず「新しいカギ」という番組そのものを知ってもらう必要があるのが若干ハードルではあると感じるものの、冒頭でも述べたように、この企画への私個人の期待は大きいので引き続き定期的に放送してほしいと願う。
「学校かくれんぼ」ひいては「新しいカギ」の認知がさらに広まり、小学校や中学校や大学も舞台になっていくと面白いと思う。新しいカギ御一行が地方の学校にも足を運ぶようになり、いつか私の母校にも来てくれたら、その時は泣いてお酒を飲みたい。
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