イケメン効果

 子どもの時に好きだったテレビアニメに「銀河鉄道999（スリーナイン）」があります。当時、大人気でした。劇場版が公開されました。親に頼んで見に連れていてもらいました。劇場でびっくりしました。
　主人公、鉄郎の顔がかわっているのです。テレビ版では愛嬌のある個性的な顔でしたが、劇場版ではイケメンになっていたのです。
　もう、大人だからなぜこうなったのか分かります。鉄郎は心優しい、勇気ある少年です。テレビシリーズでは長い時間をかけて鉄郎の魅力を描いていくことができます。しかし、劇場版では、短時間で観客の心をつかまなければいけないのです。手っ取り早い方法は、主人公をイケメンにすることです。
　私は客席でこの事態に戸惑っておりました。隣の席には、知らない大人の女性が座っていました。当時小学生の私からはだいぶお姉さんに見えました。一人で見に来ていたようです。
　銀河鉄道999は鉄郎が謎の美女メーテルとアンドロメダまで銀河鉄道に乗って旅する話です。
　もちろん、鉄郎はメーテルに恋心を抱きます。物語の中盤、鉄郎は食堂車でメーテルに告白します。不器用だけど誠実な告白です。その精一杯の告白に、謎の美女メーテルは悲しそうに黙っているばかりです。
　その時、私は確かに聞いたのです。隣に座っていた、知らないお姉さんが、一言、独り言を言ったのです。
　私は子どもだったので、何を言っているのかよくわかりませんでした。やがて私は大人になり、あのお姉さんが何を言っていたのか、わかるようになりました。
　あのお姉さんは鉄郎の告白にメーテルに代わって答えていたんですね。
　男性目線から見た「銀河鉄道999」は謎の美女と旅する話ですが、女性目線から見れば、勇敢で優しい少年と旅する話です。
　どうせ一緒に旅するなら、イケメンの方がいいですね。
　あのお姉さんがテレビシリーズの鉄郎をどう思っていたのかはわかりませんが、鉄郎がイケメンになったことで、女性でも楽しみやすい作品になったかもしれません。
　美男美女には集客力があります。もし、メーテルが美女じゃなかったら、私も「銀河鉄道999」が好きになったかどうか、自信がありません。
　美男美女を主役にしないで作品を作るのは簡単ですが、美男美女が主役じゃない作品で集客するのにはかなりの工夫が必要です。
　これは難しい問題だなぁ！
 イラスト by kawano