2021年 BOOK REPORT
こんにちは。
2021年で一番変わったことと言えば、本を読む習慣ができたことだと思う。
これまで読書が大の苦手だった私が去年は合計27冊読むことができた。
ただし、ただ読むだけでは内容が抜けてしまっていることが多く、読書の効果を最大化するためにはアウトプットする必要があると感じた。そこで、その年の終わりに特に良かったと思う本を厳選して、感想や学び、印象に残った文をメモ程度に記していこうというのが本noteの目的である。
2021年は以下の10冊を紹介していきたいと思う。
01.アルケミスト
パウロ・コエーリョ 著/1997.2.21 発売
一冊目は、全世界でベストセラーとなっているこの本である。
物語の内容は、羊飼いの少年が様々な困難に襲われながらも、道中で出会った人たちから多くのことを学び、宝物を見つける旅を描いた話である。
この本では、少年サンチャゴの旅を通じて、夢を追い続けることには苦難が伴うが、尊いことだと伝えている。
どんなに周りに反対されようと、どんなに困難に襲われようと、夢に向かうのは他の誰でもなく、自分自身である。夢を諦める人生も、夢をかなえる人生も、どんな人生を選ぶかは自分次第である。
本書では、夢を追う者、夢を諦めた者、金だけに魅力を感じる者など、様々な登場人物が出てくる。著者は、どの人物も否定するわけではなく、ただそれぞれが選んだ人生があるだけということを強調している。間違ってはいけないことは、選択に正解があるのではない、ということである。
<羊飼いの少年サンチャゴが最終的に見つけた宝物は何だったのか。>
サンチャゴは、夢を追い求める旅に出発し、道中で様々な試練に立ち向かう。そして、物語の最後、少年はついに目的地に辿り着くが、その場所とは、物語の冒頭、サンチャゴが夢に向かって出発した場所であった。
物語はここで終わっているので、ここからは私の考察に過ぎないが、夢を追いかける旅で少年は様々な人に出会い、その度に人生にとって大切な多くのことを学んできた。少年が最後に見つけた宝物とは、その目的地に行き着くまでに体験し、学んだ教訓のことなのではないか、と私は思う。
この教えは多くの現代人に勇気を与えるものだと思う。
挑戦には多くのリスクがある。時には失敗に終わってしまうかもしれない。しかし、その過程で得た経験というのは、かけがえのないものであり、その学びこそが重要である。
たった一度きりの人生、せっかくならば挑戦したほうが面白い。そう思わせてくれる本である。
02.観察力の鍛え方
佐渡島庸平 著/2021.9.15 発売
今年読んだ本の中で一番お勧めしたいのがこの本である。私が漫画の中で唯一全巻持っている『宇宙兄弟』の編集者である佐渡島さんが、タイトルの通り「観察力」について自身の経験を基に考察している本である。
本書では、前半に良い観察と悪い観察について定義し、後半では観察を通して生き方の話を展開している。
様々な情報が飛び交っており、何が正しく、何が間違っているかがわかりにくくなってきている昨今において、本質をつかむことの重要性は日々高まってきていると感じている。
そして、「本質をつかむ」ことにおいて、観察というのは効果的な方法の内の一つであり、この本を通じて、「観察力とは何か」という問いに対する考えが言語化されただけでなく、様々なバイアス、感情に歪められないための考え方について学べた。
03.東京藝大美術学部究極の思考
増村岳史 著/2021.6.1 発売
ふと本屋で目に留まり、買ってみた。藝大はもともと「プロフェッショナルでかっこいい」というイメージを持っていたので、その人たちの思考法を学べるのは面白いと感じた。
なんとなく手に取った本が思わぬ出会いとなることはよくあることで、この本もその「思わぬ出会い」の一つであった。
本書では藝大卒の著者が藝大の入試や現役藝大生へのインタビューを通じて藝大生の思考はどのようなものか、また、その思考法はどのようにして獲得されているのかについてわかりやすく書いている。
それだけでなく、藝大生の思考法(アート思考)がVUCAの時代と言われる社会において、いかに重要かを論じている。
藝大生はデッサンや日々の制作活動を通じて、2つの力を養っている。
一つが自分と向き合う力、本書ではこれを「自分ごと化を突き詰めること」と表現している。そして、もう一つが問を立てる力である。
アートにおける最終目標とは、今までにない表現を発明することである。つまるところ、答えがないものに対し、自身で問を立て、自らの表現を用いて解決を試みることであり、社会課題の解決に従事するビジネスパーソンにとって重要な思考や感覚だと感じた。
そして、この2つの能力は徹底的な観察によって強化される。
改めてこれからの時代を生き抜いていくためには観察力が重要であることを学んだ。
04.直感と論理をつなぐ思考法
佐宗邦威 著/2019.3.6 発売
上記の東京藝大の本を読んでから、アート思考に興味を持ち、より理解を深めるために複数の書籍を読んでみた。その中で特に面白いと感じたのがこの本と次に紹介する山口周氏による本である。
本書では前半で4つの思考についてわかりやすく整理し、後半で具体的にビジョン思考の実践方法や、それを強化するためのトレーニングについて説明している。
重要なことは、常に自分自身の内面と向き合い、ワクワクする妄想から始めることだと述べている。そして、「トライ&エラーのサイクルを短くしつつ、そのイタレーションを長期にわたって継続する」ことである。
本書で特に秀逸だと感じた点は、4つの思考法をしっかりと区別し、それぞれのコンセプトの関係をわかりやすく整理している点である。
以下、メモ程度に4つの思考法をまとめておく。
05.世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?
山口周 著/2017.7.20 発売
『直感と論理をつなぐ思考法』では、アート思考とは何かについて説明しているのに対し、本書はよりビジネス的な側面において、なぜアート思考・美意識が重要なのかについて述べている。
現在の世の中は、外部環境として、論理的・理性的な情報処理スキルの限界という問題がある。その要因としては、AIの発展等による正解のコモディティ化であったり、VUCAという言葉に代表されるような先の見えない時代ということがある。
このような正解がない環境の中で生き残っていくためには、内在的に「真・善・美」を判断するための「美意識」が求められる、と本書では述べている。
この美意識というは、クリエイティブ的な文脈ではなく、ビジネスにおける「良い」「悪い」を判断するための認識基準である。
確かに、新しいことに挑戦するときは正解がない。それは人生における選択においても同じことであり、正解がないからこそ自分の中に判断軸を持つ必要がある。それを本書では美意識という言葉で表現している。
複数の書籍を通じて、これらの感覚の定義、なぜ今後求められてくるのか、どのようにして養っていくのかについて学べた。今後は実践に注目していきたい。
06.イノベーション・オブ・ライフ
クレイトン・M・クリステンセン 著/2012.12.6 発売
本書はハーバード・ビジネススクールの看板教授であり、企業におけるイノベーションの研究における第一人者であるクレイトン・クリステンセンが、「自分の人生を良いものにするために、どのように物事を捉え、考えていけばよいか」について、自身が教える経営理論を基に語っている。
本書の中で特に好きな一文がある。
非常に単純明快で、頭では理解しているが、ついつい忘れてしまいがちなことである。
仕事で昇進することも大事だが、自分に幸せを与えてくれるものは何かという視点を常に忘れてはいけないと改めて気づかせてくれた。
今後社会人として働く中で、仕事ばかりになり、私生活や周囲の大切な人たちとの関係を疎かにするようになった時に、立ち止まって考え直すきっかけとして、定期的に読み返したいと思う一冊である。
07.宇宙飛行士選抜試験
内山崇 著/2020.12.15 発売
あまり漫画を読まない私が、唯一『宇宙兄弟』だけ全巻揃えていることからもわかるように、宇宙飛行士という職業に少し興味がある。
この本もまた前述の『東京藝大美術学部究極の思考法』と同様に、本屋でぶらぶらしていたらふと目に留まって、買ってみたシリーズである。
本書は、2008年~09年にかけて行われたJAXA宇宙飛行士選抜試験にて、著者の内山崇さんの挑戦の物語である。実際の試験の内容だけでなく、その時々の心情がリアルに描かれており、感情移入してしまう本だ。
特に、最終選抜に残った10名のファイナリストの中から2名だけが選ばれるという状況の中で、落選を知らされた際の著者の心情描写は、本を読んでいることを忘れさせるくらいのリアルさであった。選ばれた2名を心から祝福したいという気持ちと、すぐそこまで手に入れた夢が自分のもとから離れていく無念な想い、という2つの相反する感情がぶつかり合う。
夢を追うというのはなんて残酷で、尊いものなのかと改めて認識させられたと同時に、挫折を乗り越え、次の目標に向かって邁進する著者の様子は自分も見習わなくてはならないと感じさせられた。
人生のすべてを懸けて、全力で夢中になって挑戦する。
著者にとってそれは宇宙飛行士という職業であり、私にとってはサッカーであった。
これからはサッカーだけでなく、ビジネスというフィールドで、尊敬できる仲間たちと一緒に夢を追いかけてみたい。そう思える一冊だった。
08.自分の中に毒を持て
岡本太郎 著/1993.8.1 発売
まだ100%理解できているわけではないが、この本は、簡潔に言うと自分の人生から逃げるなということを伝えていると思う。
変に稚拙な私の言葉で伝えるよりも、岡本太郎の生の言葉の方がストレートに伝わると思うので、いくつか印象に残った文を引用していく。
09.サーチ・インサイド・ユアセルフ
チャーディー・メン・タン 著/2016.5.25 発売
近年、よく耳にするようになったマインドフルネスについて、より理解を深めたいと思い、手に取ってみた。結果として、マインドフルネスの定義から、実践、現実世界への応用まで幅広く学べた。
以下がマインドフルネスに対する私の解釈である。
マインドフルネスには様々な解釈があるが、私自身は、今ここにある瞬間に注意を向け、ありのままを受け入れる心の状態のことを指していると考えている。
マインドフルネスな状態であることにより、客観的に感情を捉える力を身に付けることができる。本書の言葉で言うと、「意のままに心を鎮める方法を学べる。集中力と創造性が向上する。自分の心のプロセスや情動のプロセスをしだいに明瞭に知覚できるようになる。」ということである。
また、マインドフルネスは筋肉と同様に鍛えることができ、その方法は多岐にわたる。本書でも様々な方法を提示しているが、共通して今の心の状態に目を向けることを大事にしている。瞑想はその方法の一つに過ぎない。
もちろんこれ以上のことを本書では伝えており、また、私の解釈は完璧ではないかもしれない。現状での理解を言語化しておくことで、今後アップデートされたときにズレを認識し、知の更新をしていきたい。
去年読んだ本の中でホットなワードである、観察力、アート思考、マインドフルネスは全て共通して「ありのまま」がキーワードだと感じた。
10.表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬
若林正恭 著/2020.10.10 発売
最後に紹介したいのはお笑い芸人のオードリー若林さんのキューバを始めとする数カ国の旅行記である。
丁寧な情景描写であたかも自分自身が旅行しているかのような高揚感を与えてくれるだけでなく、旅先での若林さん独特な社会の見方が面白かった。
社会主義という日本とは全く違う社会システムのキューバという国で、若林さんの感じたことについて触れる中で、多様な価値観について考えさせられた。
私自身、これまで海外で過ごした経験もあり、多様な価値観に触れてきたつもりでいたが、それはあくまでも競争が求められる資本主義の国々での考え方に過ぎなかった。
普通とは何か、当たり前と考えることの危うさを改めて気づかせてくれた。
以上で2021年のBOOK REPORTを締めたいと思う。
改めて本が与える影響のすごさを実感することができた。
2022年の終わりにはどんな考え方・価値観を持っているのか、楽しみである。ワクワク