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 「このままでいいのか?不動産業界」 修士論文・執筆その2 (※ご意見・ご助言・コメントを是非お願いします)

 筆者は現在、大学院の修士論文を鋭意執筆中です。
 これを書き上げて提出して審査に通らないと単位は足りていても卒業できませんので、非常に大事な論文です。

その1って書いてないけど、その1はこちら↓

 日本では、公的資金による住宅の新規供給の支援を通じて住宅の「量」の確保を図るそれまでの政策から、国民の豊かな住生活の実現のための健全な住宅市場の環境整備や居住環境を含む住宅ストックの「質」の向上を図る政策へと、転換を図るため、2006年6月に「住生活基本法」が公布・施行されました。

「計画策定後の住宅政策は、住生活基本法に定められた基本理念に基づき、同計画に掲げた目標の実現に向け、住宅単体のみならず、居住環境を含む住生活全般の質の向上を図り、良質なストックを将来世代へ承継していく政策に転換していくこととなった。」(中澤・2019)

「これまでの住宅政策は、終戦直後の絶対的住宅不足や大都市への人口集中に伴う住宅需要に対応するため 、住宅の量的確保を重視してきた。住宅の質については、低質な住宅の建て替えを含めて、新規建設を通じて向上を図るという考え方に立っていた。しかしながら、住宅の量的課題は緩和され、投資余力にも限界が見えてきた今日、リフォームにより既存住宅の質を高め、世代を超えて利活用していくことが求められている。このため、住生活基本法及び住生活基本計画(全国計画)においては、従来の『住宅を作っては壊す』社会から 、『いいものを作って、きちんと手入れして、長く使う』社会に移行することを目指して」(加藤・2006)

とあるように、我が国では「住生活基本法」の公布・施行を境に、スクラップ&ビルドの住宅政策からストック活用型の政策へと転換を図っています。

 国土交通省住宅局「平成30年住生活総合調査(速報集計)結果」によると、今後の持ち家への住み替え方法(新築・中古)に関する意向では、調査のたびごとに中古住宅への住み替え意向が増えているのですが、最近5年間に持ち家に住み替えた世帯の住宅の取得方法を確認すると、実際には中古住宅の購入割合はそれほど増加していません。

今後の持ち家への住み替え方法(新築・中古)に関する意向
最近5年間に持ち家に住み替えた世帯の住宅の取得方法

 国土交通省「中古住宅流通促進・活用に関する研究会(参考資料)平成25年6月」の「中古住宅流通シェアの国際比較」(p2)によれば、我が国の中古住宅流通は米英仏と比較して5分の1〜7分の1程度と低い水準になっています。

齊藤(2011)によれば、「新築住宅は,売主が不動産業者(いわゆる,宅建業者)でプロである。ゆえに,取引上の問題があれば,消費者を守るために宅建業者側の規制を強化する形で問題の予防をはかることができる。売主責任の強化である。しかし,中古住宅の売買になると,宅建業者が買い取りをしない限り,売主および買主ともに消費者となる。売主責任の強化体制では,売主が責任を回避したいとの意向から,市場に中古住宅を出すことを阻害する可能性がある」という。
 また、日本を含む7か国の不動産業者の免許制度と役割、中古住宅の取引体制、中古住宅売買の時の専門家の役割分担をまとめた上で、わが国の不動産業者、宅地建物取引主任者(宅建主任者)の役割を、諸外国と比較して、「日本の取引形態は,主に1社の不動産業者が総合的に独占的に取引に関与し,契約業務まで関与するにも拘わらず,不動産業者全員に資格を求めない,諸外国に比するとかなり特殊な取引形態となっている」と述べています。

不動産業者の免許制度と役割
出典:齊藤 広子「中古住宅取引における専門家の役割とそのための課題」 (日本不動産学会誌/第25巻第3号・2011.12)
中古住宅の取引体制
*1 2010年5月中止 *2 ドイツとイタリアではエネルギー証明書作成者
出典:齊藤 広子「中古住宅取引における専門家の役割とそのための課題」
(日本不動産学会誌/第25巻第3号・2011.12)
中古住宅売買の時の専門家の役割分担
出典:齊藤 広子「中古住宅取引における専門家の役割とそのための課題」
(日本不動産学会誌/第25巻第3号・2011.12)

 他にも日本の中古住宅市場の取引量が少ない理由として、「日本の中古住宅市場は、取引時点における住宅の品質を検査する制度が未整備なため、売手と買手との間に情報の非対称性がある」原野ら・2012)、「中古住宅の取引価格を考えても、売り手と買い手の希望価格に差が生じ、実際の取引価格は取引業者から『土地の価格しかみない』『解体費用がかかるから』と建物に関する価格が不当に低い」(竹内・2005)などの指摘があります。 
 有効活用されていないすべての既存住宅や土地を市場で流通させて活用することは、建物の管理状態や権利関係等の問題もあって簡単ではないですが、そのまま放置することは管理不全や相続を重ねることによる所有者不明化を招きますます活用することが困難となっていくという悪循環を招くため、そのような観点からも早急な改善が必要です。

 今回は、先行研究等を交えての日本の住宅政策の流れや日本における中古住宅市場の状況、問題点などをまとめさせていただきました。
・中古住宅を買ってリフォームしようと思っていたのにやっぱり新築を建てる理由ってなんだと思いますか?
・私は新築のここがいい!
・私はこんな理由で中古住宅を選んだ!
・そもそも家なんいて買わなくていいじゃない

など、この記事をお読みになって思ったことがあれば是非なんでもいいのでコメントください。
 あなたのコメントが筆者の研究の励みになりますし、とんでもないヒントになるかもしれません。
 是非よろしくお願いいたします。

 いち大学院生の修士論文に皆さまを付き合わせてしまってすみません・・・。



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