『100年の価値をデザインする』
【マーケティング定番書籍】その16
『100年の価値をデザインする』
著著:奥山清行
出版社:PHP研究所(PHPビジネス新書)
第1刷:2013年8月30日
1. 本書を読んだ背景
数年前、たまたま実家にあったので気になってしまっておきました。
兄か甥が読んだと思われます。
著者の奥山清行氏のことは存じておりませんでしたが、フェラーリやマセラッティのデザイナーでもあられたこともあり、新幹線E6系「スーパーこまち」(JAPAN RED)までデザインされており、私も興味はありました。
2. どんな人に向いているのか?
これも反語的に書きましょうかね?
以下のように考えている方々の大きな「誤解」を解くということで。
2-1. 日本人は集団でのプレイに長けており、個人プレーには向いていない(仕事でもスポーツでも)。
2-2. モノづくり日本の企業をリストラで追われた人たちが、中国や韓国はじめアジア諸国で仕事をすることは、日本の技術の流出でありけしからんと思っている。
2-3. デザインとは最初に絵を描くことから始まるものだ。
3. 本書のポイント
上記の3ポイントの「誤解」を解くこと自体、本書のポイントではありますが。
民主主義とデザインは根本が同じ。それは「言葉を通じてコンセプトを生み出すこと」だから、とか眼から鱗の知見がいくつも得られます。
やはり、バブル経済崩壊(1991年)と金融危機(1997、1998年)あたりから現在に至る日本の経済・社会の元気のなさ、“失われたウン十年”のマーケティング面から見た要因と解決策が提示されているのは大きいですね。
どうして、こんな簡単なことができないんでしょうか?
4. 感想
マーケティング畑の人が読んでも面白いでしょう。
著者が実践されている「アドバンスド・マーケットリサーチ」とか、頭の固い(スンマセン・・・)ほとんどのリサーチ関係者の皆様は参考にされたほうがいいと思いますよ(笑
なので、引用しときますね。
-----------(以下引用)-----------
今開発している商品が市場に出回るのがたとえば二年後だとする。だがお客様に「二年後の好みを予測する材料を集める様にダイレクトに二年後の好みを聞くのではなく、二年後の好みを予想する材料を集めるのだ。
これは親しい人に誕生日のプレゼントを贈るのに似ている。「何がほしい?」と聞くのでは野暮だから、雑談の中から遠回しにヒントを得ようとする。それがアドバンスド・マーケットリサーチなのである。
「最近何をよく食べる?」「過去半年で一番感動した映画は?」「無人島に持っていきたい本は?」といったしつもんをたくさん用意してヒントを集め、それを並べて一生懸命に考える。考えることによって、未来のお客様の気持ちを推理し、何を欲しているのかを読むのだ。
-----------(引用以上)-----------
いかがでしょうか?
こういう調査ってできますか?
最後に、掃除機に革命を起こしたダイソンさんのエピソードが紹介されてますので、最後はそちらの引用で締めさせていただきます。
「こんなの、あえて聞くことじゃないでしょ?」
-----------(以下引用)-----------
彼の会社の人たち、特にマーケティングの専門家たちはそのアイデアに猛反対した。汚いものを見せるなんて冗談じゃないとうわけだ。実際に市場調査も行われ、「あなたの掃除機のゴミのタンクが透明だったら買いたいと思いますか」という質問に対して、100%の人が「買わない」と答えた。しかし、ダイソンさんはひるまなかった。
彼は「なぜ?」と聞いた僕にこう切り返した。「人間は、何かことを成し遂げたら、その結果を見たいものなんだ。ミスター・オクヤマ、あなたはトイレに用を足しに行ったら、立ち去る前に見るだろう? きれいなものであろうと、醜いものであろうと、自分がやったことはみたいものだ。だから俺は、『さっき掃除したばかりなのに、もうこんなにゴミが取れた』ということを視覚として見せるために、タンクを透明化したんだ」
-----------(以上引用)-----------
定量調査で100%却下されたのにも関わらず、
大ヒットを誘発したたった一人の「インサイト」。
素敵ですね!
以上です。
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