幸せに生きる方法㊼
自動車の社会的費用
宇沢氏の経済思想が如実に表れている例として、「自動車の社会的費用」についての論考があげられると思います。ずばり「自動車の社会的費用」という著作も発刊されていますが、私が目にしたのは著作「社会的共通資本」でした。
「自動車の社会的費用」とは、本来、自動車の所有者ないしは使用者が負担しなければならない費用を歩行者あるいは住民に転嫁して、自らほとんど負担しないまま自動車を利用しているとき、社会全体でどれだけの被害を被っているかをなんらかの方法で尺度化するものです。
自動車を運転するのにかかる社会的費用として、どんなものが考えられるでしょうか。宇沢氏は、次の5つの構成要素をあげておられます。
①道路を建設、維持し、交通安全のための設備を用意し、サービスを供給するための費用
②自動車事故によって惹き起こされる生命、健康の損失
③自動車通行によって惹き起こされる公害、環境破壊
④道路建設等による自然環境の破壊
⑤自動車の生産、利用の過程で使われるエネルギー資源の希少化それに伴う地球的環境の均衡破壊
今や自動車1人1台の時代。自動車の社会的費用など考えずに私たちは、自動車を乗り回しているのではないでしょうか。
宇沢氏は、著作「自動車の社会的費用」でその費用を自動車1台あたり年に約200万円と試算されました。
もし、自動車1台保有するのに年間200万円支払わなければならないとしたら、私たちは自動車を保有し続けるでしょうか。考えさせられます。
自動車の所有者・使用者に限らず誰もが幸せに生活していくにはどうしたらよいのか真剣に考えられた方だということがよくわかります。