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起業家からみたSPACのメリット

近年米国でSPAC経由の上場がたびたび話題となっており、SPACの数は急激に増加しています。

通常のIPO、ダイレクトリスティングに並び、第三の上場手段と言えるSPAC。このSPAC自体は昔から存在していますが、昨今この分野に人一倍力を入れているSocial CapitalのChamath Palihapitiya氏が複数のメディアでその詳細や起業家目線のメリットを語っていたので、ここにまとめました。

SPACとは

SPAC (Special-Purpose Acquisition Company = 特別買収目的会社) は Blank Check Shell Company で、他社(スタートアップ)の買収を目的として作られる企業です。SPAC自体は現金のみを資産とする上場企業で、未上場企業と合併することで、結果としてその未上場企業を上場させることができます。

コストの考え方が異なる

従来のIPOでは主幹事(投資銀行、証券会社)に支払う手数料 (underwriting discount) は3.5 - 7%程度と言われています。SPACではこのunderwriting discountは5.5%(うち2%がIPO時、3.5%がM&A後)とさほど変わりませんが、SPACの場合はこれがエクイティーという形でSPACスポンサーに渡るため、アンダーライターと企業のインセンティブが一致する形となります。

比較的素早く上場できる

通常のIPOはそのプロセスに通常12 - 18ヵ月程度の時間がかかりますが、SPACはM&Aというプロセスとなるため、その期間をかなり短縮することができます。その長さは100日という目安がよく使われるようです。

株価の確実性

通常のIPOでは、IPOポップと呼ばれる株式公開直後の急激な株価の上昇が起こることが多々あります。このIPOポップは現実的には企業にとってはキャプチャできたバリューと捉えることができ、機会損失とも言えます。

このように通常のIPOで発生する不透明な上場時の株価は既知の問題であり、SPACでは certainty of price (価格の確実性) という特徴、これがメリットであるとChamath Palihapitiya氏は述べています。

将来性を語ることができる

SPAC経由のIPOはM&Aの形となるため、通常のIPOやダイレクトリスティングのようなS-1 fillingではなく、S-4 fillingとなります。そのため、将来的な成長戦略やロードマップを語ることができ、それを理解するスポンサー(アンダーライター)からの投資を呼び込むことができます。結果、従来のIPOよりも圧倒的に企業側とスポンサーとのインセンティブ(長期的な成長)が一致する良い形となります。

特にハイグロースが期待されるテック企業であればIPO時点で過去の業績はほとんど意味をなさないことが多いため、特にこの点はメリットになり得ます。

少人数への株式の集中を回避

仮にグロースステージでプライベートエクイティ1社から資金調達を行う場合に比べ、例えば5000人から(形成されるSPACから)資金調達を行うことができれば、保有株数の多い1社(or 1人)が現れないので起業家としてはより会社をコントロールしやすいというメリットが可能性としてあります。

もちろんこのメリットは必ずというわけではなく、場合によっては、という条件付きです。

従業員のリテンション

急成長テック企業では従業員の平均勤務年数は数年と短いです。長期的に成長する企業を作るためには、企業文化の形成含め、優秀な人材により長く在籍してもらった方が良いのは明らかです。

Chamath Palihapitiya氏は、給与を普通かあるいはやや抑えてその代わりストックオプションを渡すような一般的なスタートアップでは、プライベートマーケットにより長くいることは、従業員にとってストックオプションを流動化できない期間が長くなるため、人材の流出が発生してしまう原因になると語っています。

SPACを利用してより早めにパブリックマーケットに出ることにより、従業員が持つSOに流動性ができ、それによって人材の流出を防ぐことができる、という理屈です。ちなみにSPACでは通常のIPOのようなロックアップ期間もありません。

個人的にはこれがメリットなるかはケースバイケースかと思う部分もありますが、彼の主張は一理あることは確かです。

リソース