Xのサービス利用規約更新についてのメモ【AI学習】

※記事作成時点での情報をもとに筆者の理解・解釈した内容であり、正確性を保証するものではありません。


●Xの利用規約更新とAI学習に対するクリエイターの懸念

Xのプライバシーポリシーとサービス利用規約更新(2024年10月16日に発表され、11月15日から発効する)に伴い、イラストレーターなどのクリエイターの間で自身の作品をAI学習に使用されてしまうことへの懸念が広がっているようだ。プロのクリエイターに限らず、自身の作品をXに投稿したことのあるユーザーにとっても気になるところだろう。

今回のプライバシーポリシーとサービス利用規約更新の詳細についてはITmedia NEWSの以下の記事がわかりやすい。

●今回の更新のどこが懸念されているのか

今回のプライバシーポリシー、利用規約の更新でそれぞれ以下の内容が明文化されたことが、前段のようなクリエイターの懸念(作品がAI学習されるかも)の原因となっていると思われる。

・プライバシーポリシー・・・「ユーザーがオプトアウトしない限り、サードパーティがXのデータを使ってAIモデルをトレーニングすることを許可する」と明文化された。
(※オプトアウト・・・拒否の意思表示)

・利用規約・・・ユーザーによって「提供されたテキストやその他の情報」を「生成型か他のタイプかを問わず、当社の機械学習や人工知能モデルへの使用やトレーニングなど」に使うということが明文化された。

太字部分は上記ITmedia NEWS各記事より引用

これによって、自身の作品をAI学習に利用されたくないと考えるユーザーが過去の投稿を削除したり、今後の投稿をしない、あるいは制限する意思を示したり、X以外のプラットフォームへの移行を検討しているようだ。

●AI学習についての記載は以前からある?

こういった懸念に対し「AI学習へのデータ利用は以前から(プライバシーポリシーや利用規約に)記載されてるだろ」といった指摘を見かけた人もいるかもしれないが、実際どうなのだろうか。

プライバシーポリシーについて

Xが公開データをAI学習に使うという方針自体は、2023年9月29日から発効となった現行のプライバシーポリシーですでに明記されており、この部分は今回の更新でも変わっていない。

なので今回の更新のポイントは「ユーザーがオプトアウトしない限り、サードパーティがXのデータを使ってAIモデルをトレーニングすることを許可する」と明文化されたことの「サードパーティが」の部分ということになるだろう。

<現行および新プライバシーポリシーより、AI学習についての記載が同一(変わっていない)部分>

2.1 当社のサービスの運営、改善およびパーソナライズ
当社は、Xのプロダクトおよびサービスを提供し、運営するために収集した情報を利用します。また、当社は、より関連性のあるコンテンツおよび広告をユーザーに表示したり、フォローすべき人およびトピックを提案したり、ユーザーが関連会社、第三者アプリ、サービスを発見する手助けをすることを可能にしたりするなど、ユーザーがXでより良い経験をすることができるよう当社のプロダクトおよびサービスを改善およびパーソナライズするために当社が収集した情報を利用します。当社はまた、本ポリシーで概説されている目的のため、当社が収集した情報や一般公開された情報を、機械学習または人工知能モデルのトレーニングに使用することがあります。

現行および新プライバシーポリシーより引用。太字は筆者による

<参考記事:2023年9月のポリシー改定について>

利用規約について

AI学習について現行利用規約には無かった文言が新利用規約で追加されているので、利用規約に関しては「以前から載っていた」という指摘は当てはまらないと思われる。

<新利用規約「3.本サービス上のコンテンツ」より、AI学習についての記載部分>

ユーザーの権利およびコンテンツに対する権利の許諾
ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介して、自ら送信、投稿、または表示するあらゆるコンテンツに対する権利を留保するものとします。ユーザーのコンテンツはユーザーのものです。すなわち、ユーザーのコンテンツ(他のコンテンツに組み込まれたユーザーの音声、写真および動画もユーザーのコンテンツの一部と考えられます)の所有権はユーザーにあります。
サービス上でまたはサービスを通じてコンテンツを送信、ポスト、または表示することにより、お客様は、現在知られているまたは今後開発されるあらゆるメディアまたは配信方法で、あらゆる目的で、かかるコンテンツを使用、コピー、複製、処理、適応、変更、公開、送信、表示、アップロード、ダウンロード、および配信するための、世界的、非独占的、ロイヤリティフリーのライセンス(再許諾の権利を含む)を当社に付与するものとします。明確にするために記すと、これらの権利には、たとえば、キュレーション、変換、翻訳などが含まれます。このライセンスによって、ユーザーは、当社や他のユーザーに対し、ご自身のポストを世界中で閲覧可能とすることを承認することになります。お客様は、このライセンスに、当社が(i)お客様によって提供されたテキストやその他の情報を分析し、その他の方法で本サービスを提供、促進、改善する権利(生成型か他のタイプかを問わず、当社の機械学習や人工知能モデルへの使用やトレーニングなど)、および(ii)当社のコンテンツ利用規約に従い、サービスにまたはサービスを通じて送信されたコンテンツを他の企業、組織、または個人が利用できるようにする権利(サービスの改善、および他のメディアやサービスでのコンテンツのシンジケーション、放送、配信、リポスト、プロモーション、公開など)が含まれることに同意するものとします。ユーザーが本サービスを介して送信、投稿、伝送またはそれ以外で閲覧可能としたコンテンツに関して、当社、またはその他の企業、組織もしくは個人は、ユーザーに報酬を支払うことなく(ユーザーは、ユーザーによる本サービスの利用がコンテンツおよびコンテンツに関する権利の許諾に対する十分な対価であることに同意するものとします)、当該コンテンツを上記のように追加的に使用します。

発行日:2024年11月15日の新利用規約より引用。太字は筆者による

●Xの利用を継続しつつ、AI学習を防ぐことはできるのか

できればXの利用を継続したいユーザーにとってはこの点も気になるだろう。しかし、現状では完全な対策は困難だと思われる。

現状で可能な対策と限界

・アカウント・投稿の非公開化: AI学習への利用を最も効果的に制限できると思われるが、過去に公開された情報は保護されない可能性がある。
また、作品の露出や他ユーザーとの交流の機会が制限される、というトレードオフが生じるだろう。

・投稿内容の制限:完全な作品ではなく、低解像度のサンプルや一部を削除したバージョンを投稿するなど、AI学習のリスクを軽減する方法が考えられる。

・モデルトレーニングのオプトアウト: 設定でAI学習へのデータ提供を拒否できるとされているが、効果範囲や過去のデータへの適用については不明瞭。

●他サービスへの移行でAI学習を防げるのか

公開データのAI学習への利用について、プライバシーポリシーや利用規約で明確に否定していたり、少なくとも「利用しますよ」という記載が無い、という場合はプラットフォーム自身によって公開データをAI学習に利用されるリスクは下がるかもしれない。
それでもリスクがまったく無くなるわけではないだろう。と言うのも、そういったプラットフォームからのデータ収集→AI学習への利用を完全に防ぐことは難しいと思われるからだ。

※どのSNSプラットフォームがどういったポリシーや規約を持っているかは各自で調べてください。

●どう難しいのか

例えばStable Diffusionの学習には、LAIONデータセットと呼ばれる大規模な公開画像データセットが利用されているが、このデータセットはWeb上から収集されたものであり、著作権のある作品が含まれている可能性がある(と言うか、含まれているだろう)。

で、この(スクレイピングやクローラーによる)Web上から収集ということを完全に防ぐのが、現状難しい。本記事では説明を省くが、詳しくは以下の記事などを参考にして頂きたい。
※勝手ながら引用させて頂きました。

<参考記事>

●じゃあどうすればいいのか

これだ、という決定的な解決は現状無いだろう。
ただ、すでに多くの人が指摘しているが、過去に投稿した作品を削除する、完全にアカウントを消去する、というのは今しばらくは思いとどまった方がいいかもしれない。あなたが去ったあとであなたになりすまそうとしたり、あなたの作品を自分のものだと偽る人間が出てくるかもしれない。
AIだけでなく、まずは人間を警戒しなければならないのがツラいところだが・・・

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