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【考察】祥子はAve Mujicaで何を目指し、求めているのか?
「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」の内容と、「BanG Dream! Ave Mujica」#4までの内容を踏まえたネタバレありの考察となっています。
●疑問
「Ave Mujica」第4話までを見ていて筆者は気になったことがある。それが祥子はAve Mujicaというバンドで何を目指しているのか?ということだ。
もちろん、Ave Mujicaを成功に導こうとしていること、しかも長期的な目線で、商業的な成功をかなり意識しているであろうということは見てとれる(※)が、その先に祥子が何を目指しているのか、というのは実はよくわかっていないポイントなんじゃないかという気がする。
※以下のような祥子のセリフから。
<「MyGO!!!!!」#12より>
(にゃむに対して)「顔と、数字ですわ」
「バンドとして、盤石の布陣ですわ」
「私たちは、最短でメジャーデビューいたします」
<「Ave Mujica」#1より>
「Ave Mujicaは安売りをいたしません」
「私はこのバンドを、いっときの流行で終わらせるつもりはございません」
「言ったでしょう、残りの人生、私に下さいと」
「皆さんの人生を預かるのですから」
「プロとしてやっていく」
●CRYCHICを忘れるため
「何を目指しているのか?」については、実は「アニメージュ」2025年1月号の柿本広大監督インタビューですでに言及されている部分がある。祥子がAve Mujicaを結成したきっかけは「春日影」をMyGO!!!!!がライブで歌ったのを目にしてしまったことであり、その目的はCRYCHICを忘れるためだというのだ。
<インタビュー記事>
※当該インタビューは、誌面に掲載されたものの訂正版が以下のページに全文掲載されている。
――祥子がAve Mujica結成に向けて動き出したきっかけは、『It's MyGO!!!!!』の#7ですか?
柿本 はい。祥子が作曲したCRYCHICの「春日影」を、MyGO!!!!!がライブで歌ったのを目にしてしまったことが大きいです。祥子にとっても「春日影」は大事な楽曲でしたから。
――当時、燈がノートに書いた歌詞を見て涙ぐんでいましたね。
柿本 祥子は、残されたメンバーには到底理解のできない辞め方をして、自分でCRYCHICを壊しました。けれど、本当は壊したくなんかなかった。矛盾のある行動ですが、祥子にはそうするしかなかったんです。あのライブで祥子は、CRYCHICも「春日影」も二度と自分には届かないものになってしまったことを身を持って知ってしまって、だから自分から捨てた夢だけど、その夢があったことすら忘れたいと思ったんです。
――だからこそ、あのライブの後に、Ave Mujicaのメンバーとなる幼馴染の三角初華に電話をして、「全部……忘れさせて……!」と言ったのですね。
柿本 失ってしまったことがあまりにも辛くて、忘れないと保てなくなってしまったんですね。そうして祥子が組んだのが、Ave Mujicaです。このバンドは活動する際に本名ではなくステージネームを使っているのですが、由来はバンドのシンボルである月の地名です。祥子は「忘却の湖 (Lacus Oblivionis)」から取って、オブリビオニスを名乗ります。彼女はこれまでのペルソナでは自分を取り繕えなくなっていて、それを守るために、オブリビオニスとして立つ必要があったんです。
――祥子は、自分の心を守るためにもAve Mujicaを作ったとも言えるのですね。でも、忘れたいのにまた音楽を選んだのは?
柿本 そうなんですよね。忘れてしまいたい、逃げ出したいのに、忘れられない心の機微がそうさせているのか、または自尊心の高さか。彼女が彼女として生きるために、無意識のうちに同じフィールドを戦いの場として選んだのだと思います。
※太字による強調は筆者
●お金が必要?
監督のインタビューに「正解」を求めるのはちょっとどうかなと思う部分もあるが、なるほど祥子がCRYCHICを忘れるためにAve Mujicaを結成したのだということはこれでわかった。
しかし、冒頭で述べたように祥子がAve Mujicaで商業的な成功を目指しているように見えるという点については(その見方が正しいとすれば)まだその理由がよくわからないように思う。もし理由があるとしたらお金が必要だから・・・つまり金銭的な問題が絡んでいる可能性が考えられる。
具体的には祥子の父・清告に借金があるというパターンが考えられるが、今のところ作中ではそのような明確な描写は無いはずだ。父・清告が詐欺の被害によって祖父の会社に与えた損害は168億円ということだが、それだけの額を一人で背負わされたとは考えにくい・・・背負わされたところで、現実的に言って個人でどうこうできる範疇を越えているだろう。
だが、もし168億円全額とはいわずとも、その一部についてでも父・清告が返済の義務を負っているのだとしたら、父親はあんな様子だし、祥子がその返済のために稼ぎを必要としている、という可能性はあるかもしれない。
ちなみに、やはり父・清告に負債があり、かつその金額がまるまる168億円で祥子がそれを父に代わって返済するつもりなのだとしたら矢沢永吉もびっくりのド根性(※)だと思う。スーツケースひとつに収まってしまう祥子の荷物の中に、何度も読み返してボロボロの「成りあがり」が入っている・・・とか想像するとなかなか胸熱だ。(そうか?)
※矢沢永吉氏は詐欺被害で負った借金35億円を6年で返済したと言われている。
借金が無いにしても父・清告がまともに働けるような状態ではなさそうだということを考えれば、祥子が父を養っていく覚悟でバンド活動に臨んでいる、ということも考えられる。祥子ひとり、自分だけが食っていくくらいなら、何ならバンド(ミュージシャン)でなくてもなんとかなるかもしれないが、父も・・・ということなら、祥子が自分の武器として使えるもの(ピアノが弾けることや容姿)を利用して手っ取り早く稼げる道としてバンドを選んだ・・・ということはじゅうぶんあり得るんじゃないだろうか。
そんなわけで、整理すると以下のようになる。
仮説A:父に借金(祖父の会社に与えた損害168億円の一部または全部)があり、その返済のために稼ぎが必要で、バンドとしての成功を目指している。
仮説B:父に借金こそ無いが、働けない父を養っていくために稼ぎが必要で、バンドとしての成功を目指している。
仮説C:上記A、Bの両方。つまり父に借金があり、かつ父を養っていくための稼ぎも必要と考え、バンドとしての成功を目指している。
●しかし・・・
このように考察しておいて何だが、実はこのへん(祥子がAve Mujicaの商業的成功を目指しているように見える点)については、今後特に理由とか語られないのではないか?という気もしている。
というのも、この点についてはことさら「謎!」みたいな描かれ方もしていないように思うし、筆者の仮説のように借金の問題などがあったとしてもそれほどドラマティックにも思えないからだ。「実は祥子(父)は借金を返さなきゃいけなくて・・・」というのがもし今後提示されたとしても、視聴者としては「あ、そうだったんだ」くらいの感覚だろう。
なので、身も蓋もない言い方をすればこの「商業的成功~」については話の都合というか、制作側が見せたいストーリーや展開の都合が先にありきで、整合性とかはあんまり考えられていないのではないか・・・とすら思ってしまう部分がある。
●とはいえ
非常に細かいところまで作り込まれている「MyGO!!!!!」そして「Ave Mujica」だから、筆者としてはそこらへんが疎かになっているとはあまり思いたくない・・・というのが正直な気持ちだ。なので今後のエピソードの中で筆者の疑問に対する答えが用意されていればいいなと期待している。
了