#83 第二音楽室
「高校生」っていいですよね。
みんなこの単語を聞いて想起するイメージはそれぞれだと思いますが、
個人的には、「爽やかさ」「エネルギー」「不安定さ」とかそういうことを
想起します。
同じ佐藤多佳子さんの「一瞬の風になれ」という小説が中学の時好きで、
夢中になって読んでいたことを思い出し、手に取りました。
ご存知の方も多いと思いますが、
あの小説も、すごく青春の爽やかさと、フラストレーションと
心地よく体に入ってくる本だったと記憶してます。
※読んだの20年近く前になるので、記憶が曖昧なのはご容赦ください。
本書も多分に漏れず、すごくするっと体内に取り込まれる
スポーツドリンクのような読み口の本でした。
けれど中身は、すっごくモラトリアムさの塊
タイトルの通り、音楽室の話なので、学生をテーマに。
そして、音楽を切り口に、好きとか嫌いとか将来どうしようかとかではない
もう少し手前のフラストレーションを描いてくれていると感じました。
中学生高校生くらいって、
表現ができない言語の限界を超える気持ちとか関係があると思っています。
それをすごく感じることができました。
学校生活に必須な「音楽」という切り口がまた良かったです。
音楽が、学校生活をホリゾンタルに輪切りにする感覚。
卒業式、合唱コンクール、部活、さまざまな場面を音楽は切り取ってくれて
そこに人や感情を集めてくれる。
音楽をテーマに集まった感情や言葉や関係をうまく
キュレーションして、言葉に乗せて、本にしてくれている
周辺から枠組みを作って、察するように促してくれる。
そんな感覚でした。
あと、個人的には「第二」音楽室であることもすごくいいなああって思いました。
第一音楽室じゃないんですよ。
多分、第一音楽室は、ジャニーズと若手女優が主演する映画になりそうな人たちが使っていて、そうじゃない人たちがある意味押しやられた場所が
第二音楽室かもしれない。
ただ、この世のほとんどは、第一音楽室にいない人たちが構成している。
私自身もそう。
だからこそ、すごく想像できて、その頃を思い出せて
それが社会だとも思います。
その第二音楽室に集まる何かって
第一音楽室とはまた違う、郷愁にも近いエモさがあるのではって思います。
そういった、A面じゃない、7番バッターの、センターバックのところを
慈しみ人生を豊かに生きていけるような自分でありたいなと思います。