首里城は僕等のもの
首里城が燃えて約半年経ちましたね。
僕は那覇市首里に育ちました。
首里城を中心として「城北」「城南」「城東」「城西」と小学校があり、平成4年に首里城が再建された年、僕の通っていた城南小学校はみんなで首里城を見学に行ったりしました。小学一年生の何も分からないガキだったくせに、首里城という存在が妙に誇らしかったのを覚えています。
その年に首里城公園で行われたりんけんバンドのライブを父親に肩車されながら見たのは大事な思い出。
小学校を卒業して、校歌の歌い出しが「中山城下に栄えたる」で始まる中学から「中山城を仰ぎみて」で始まる高校に進み、20代の頃は首里城公園で琉舞ステージの裏方というアルバイトをして過ごしました。(中山城を細かく説明すると面倒なのでザックリ言いますが、中山城とは首里城のことです)
首里城に対して沢山の思い入れがあります。
首里城が燃える数年前、そんな首里城への想いを僕なりに戯曲にしました。
戯曲というと難しく聞こえますが、ただの長編コントです。おきなわ文学賞の戯曲シナリオ部門で佳作を頂きました。
本当に首里城が焼失しちゃうなんて思ってもなかったので「首里城を爆破します」という独白から始まる書き出しに今では妙な気持ちになります。
書き出しだけ公開して、後半は有料にしてみます!
これがやりたかったからnote始めたんだもん!えっへん!
『首里城は僕等のもの』 作・金城秀吾
疾走感のある音楽が鳴り響く
音楽に混じって、何秒かおきに破壊音も聞こえる
そして比嘉の独白が聞こえてくる
N 世界遺産に数えられた瞬間から首里城は俺なんかの遊び場所じゃ無くなった。
琉球王国のグスク及び関連遺産郡…なんかそれ。
歴史的文化遺産?急にな?昔まで俺なんかの遊び場だったやし?
ユネスコ認定?ユネスコってたーやが?なんで急にキャッチボールしたら駄目になったば?
俺なんかがかくれんぼとか陣取りして遊んだのがなんか歴史的だったば?
高校生のにーにーとねーねーが夜な夜な首里城公園の隅でエッチなことしてるの覗きにいくのが文化だったば?
…違う?分かるよフラー。
自分の島に世界遺産があるのが県民の誇り?
沖縄の・・・誇り?・・誇りーい?
・・・ホントか?なぁ?本当に誇りに思ってるか?
じゃあ、お前らの誇りを俺が揺さぶってやる。
俺は今日、首里城を爆破します。
爆発音
N 首里城に夜な夜な侵入して爆弾を仕掛けることにしました。
侵入は簡単。いくつの時から首里城公園で遊んでたと思ってるからよ。
もちろん正面から入るわけは、無い。守礼の門のあたりなんて目立ちすぎるし。
城南小学校正門側の坂から汀良向けに下っていったら、左側に石畳の道路があるちっちゃい十字路に出る。
その石畳の道路を進んだらY字路にあたる少し手前右手に、城郭の裏口に回る道がある。
首里城警備員とか首里城で働いてる人間が車で入ってく道。先は駐車場になってる。
ほら、ブラタモリでタモリが土の説明してたあそこよ。
夜中にそこから徒歩で進入。警備ゲートはあるけど、どうせ大して緊張感も無い警備員がいるだけ。
裏の陰から隠れて行けばホント余裕で通過できる。
そこから首里城内に進入したら警備は手薄。爆弾を何箇所かに設置して起爆ボタンを押すだけ。
音楽のボリュームが上がり、また下がり、
・・・わけの分からん工事をされて無理やり文化遺産にされた可愛そうな首里城を、
俺たちが遊んでたあのころの状態に戻してあげるだけ。
あははっ!
びっくりするだろうなみんなは。みんなっていうか、お前よ、お前。
本当の首里城の姿も知らずに首里城を当たり前に自分たちの誇りと勘違いしているそこのお前。お前お前お前!
俺が確かめてあげるよ。
本当に、誇りを失ったって言って、悲しむ奴らが、一体何人居るのか。
心から涙を流す奴らが何人居るのか。
音楽に混じって比嘉がなにやら作業音が聞こえる
N よし侵入成功・・・・あとはこの自作の爆弾を、
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