【北大】シュールストレミングを大学内で開けても大変なことにならなかった話
本編
今から7年前、2016年の思い出の話です。
10月のある日、天啓を預かりました。
「シュールストレミングを食べるのです。雪が街を覆う前に。今すぐに。今年やらないと、一生食べる機会は来ないでしょう。」
当時大学生で、若さと暇を持て余していた私は、その詔を信じ、友人を誘い、シュールストレミングを食すことにしました。巻き込まれた友人は、名を「はっちー(https://twitter.com/hatchy_bee_)」といい、今でも仲良くしています。これもシュールストレミングのおかげです。
まずは缶の調達からです。日本に在庫が常にあるわけではなく、インターネットを通じて個人輸入のような形で仕入れるしかありませんでした。気圧で缶が爆発しないよう、空輸はできないそうです。そのため、お値段なんと1缶約6,000円。塾講師のバイトに換算して4時間分もする大金です。
「いや、塾講師のバイト代安!」と思った方、正解です。当時の北海道の最低賃金の安さはナメてはいけない。(ですがそれはまた別の話)
6,000円という大金をなんとかするために、我々はさらなる共犯を求めることにしました。札幌農学校の教えが身体のどこかに身についていれば、みんなきっと来てくれるはず。
しかし、今度は場所の問題が生じました。
はっちー邸を完全防臭体制にしてやるにしても、手間がかかることや、
もし想像以上に匂いの広がりが強くて異臭騒ぎになってしまったら、ご近所トラブルを越えて賠償モノの被害が出てしまうかもしれません。
そこで我々は考えました。「大学の中で開けよう。」
何のために北大はべらぼうに広いキャンパスを所有しているんだと。これだけ広い土地であれば、どこかにシュールストレミングを開ける用の土地だってあっていいじゃないかと。
そして実際に出した案内文がこちら。
何の脈絡もなく、面白がってくれることを信じて、発信しました。
さて、当日までの準備です。Youtubeでシュールストレミングの開封動画を観たり、開ける際の注意点を学習したりしました。
シュールストレミングで退学になることは、何としても避けなければならないからです。
結果、我々は以下の準備をすることにしました。
今後シュールストレミングを買う予定がある方は参考にしてみてください。
<買ったもの>
・カッパ(開封作業にメインで関わる人は着るべき)
・バケツ(開缶は水の中ですると匂いが抑えられます)
・リッツ/パン/おにぎり(塩味が強いので、味の薄いものがよく合います)
・飲み物(最悪、口をすすいで吐き出せるので水が推奨)
そして当日。
集合場所には幹事2人の他に3,4人が集まりました。
朧げな記憶ですが犯行現場はこのあたりだったはず。
(施設関係者の方ごめんなさい。時効だと思いますが許してください)
みんな軽い気持ちで参加してくれたので嬉しかったです。
そしていざ、開封。
事前学習通りに、水の中で缶の蓋を切りました。
「ププププ、プシューーーーー、ゴポポポポ」
あたりが生臭さに包まれました。
中の液体が服に直接付着したら。その服は二度と着られないと聞いていたので、開封班はさながら爆弾処理班です。一滴の跳ね返りも許容しません。
遠巻きにいた参加者も、バケツに近づくや否や眉間にシワを寄せました。
カッパを着た我々主催者は缶のそばから逃げられず、
しかし缶から発せられる異臭も収まらず、地獄でした。
しかしその異臭を越えた先、いや、異臭の根源に向き合わなければシュールストレミングは体験できません。水で洗って、実食です。
味は、思いのほか人間の食べ物でした。舌はそれを「食べ物である」と感知しました。ただし鼻の方はアラートが鳴りっぱなしです。腐敗と発酵でいえば、完全に腐敗寄りの、強烈な匂い。
ただしその匂いになれてしまえば、味は塩辛に近かったです。「何年か放置されたが奇跡的に食べられる塩辛」でした。
クラッカーに乗せたときが一番食べ物の味がしたので、非常におススメです。
他の参加者も、引き続き眉間にシワを寄せながら食べていました。
そしてなんとか完食(したはず)。
シュールストレミングよりは、その後に吸った空気の方がはるかにおいしかったです。空気をおいしく吸うためのスパイスか?
そして食べた後も、匂いは残ります。
口や食道からの異臭が止まりません。口をすすいでも食道からにおいがやってきます。
「もしかして、我々がやっていたことは、シュールストレミングを食べたのではなく、異臭の元を胃というハコに封印したに過ぎないってコト……?」
若干の想定外はありましたが、事前準備の甲斐あって、何とかシュールストレミングを食べることができました。
ただしここで詰めが甘いのが大学生。我ながらさすがです。後始末のことをあまり考えていませんでした。
最大の誤算は、匂いがカッパを貫通していたこと。
カッパは二重に袋に入れてゴミ箱へ捨てようとしましたが、袋詰めする人の手も服も臭い訳ですから、二重の袋の外まで臭いです。
ない頭を絞ってどこに、どのように捨てたかというと・・・・・・
ちょっとここでは伏せておきます。責任を持って捨てました。
次の誤算は、うがいをしても口臭が凄かったこと。
シュールストレミングの口臭は、瞬く間に部屋に広がり、学生部屋の環境汚染の原因となりました。おそらくですが、今後食べる方は、食後に公共交通機関やタクシーには乗らない方がいいとおもいます。
最後の誤算は、臭いは金属にも移ること。
はっちーの時計がしばらく使えなくなりました。(臭すぎて)
そんな誤算もあったので、しばらくは大学から呼び出されやしないかと、初冬の札幌で冷や汗をかきながら過ごしていましたが、何事もなく終えることができました。
こんなこと二度とできないと思いながらも、やっておいてよかったという気持ちで一杯です。
こぼれ話①
シュールストレミング開封から約1年後、
教授に学内でシュールストレミングに開けた話をしました。
すると笑いながら話を聞いてくれた後に一言、
「俺もやったことある。二十数年前だけど。その時も大学で開けたわ。」
・・・さすが札幌農学校の先輩です。
こぼれ話②
理系の友人にシュールストレミングを食べた報告をすると、
「馬鹿だなー、そういうのはドラフト(化学系の実験などで使用する排気装置)で開けるんだよ。」と言われました。
なるほど賢い。皆さんもシュールストレミングを食べるときは化学系の知人を頼りましょう。
免責:
本noteは迷惑行為を助長するものではありません。
シュールストレミングを食べる際は、周囲の環境に十分に配慮して楽しんでください。(マジで)
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