エア本屋・いか文庫の空想ブックフェア【第14回】 どんな「住まい」がお好み?フェア
お店も商品も持たない「エア本屋」・いか文庫。
テレビにラジオに書店の棚に、神出鬼没のいか文庫が『小説すばる』誌上で開店しました!
第14回のフェアのテーマは「住まい」です。
いか文庫 ◆店主(リアルでも書店員)と、イカが大好きなバイトちゃん(ベトナム支社)、バイトぱん(東京支社)、バイトもりもり(関西支社)、バイトいも(イギリス支社)の計5名で活躍中のエア本屋さん。
店主 バイトちゃん、おつかれさまー。今日もフェアの妄想会議、お願いします!ちなみに今回から、いか文庫のほかのメンバー、バイトもりもりとバイトぱんにも参加してもらうことになりました。
バイトちゃん(以下、ちゃん) おつかれさまです。みんなも一緒に会議できる日を楽しみに待っていました!
バイトぱん(以下、ぱん) よろしくお願いします!
バイトもりもり(以下、もりもり) 緊張しますが、よろしくお願いします!
店主 バイトちゃんはベトナム、バイトもりもりは関西、私は西東京、バイトぱんは東東京、それぞれの支店に勤務しているから、オンライン会議ってすごく便利だよね〜。
ぱん あっ!実は私引っ越しすることになって、今度は東京の北の方になるんです。
店主 引っ越すんだ!いいね〜。そう言えば最近、引っ越しにまつわるマンガを読んだよ。
ぱん どんなマンガですか?
店主 水凪トリさんの『しあわせは食べて寝て待て』という作品で、体調を崩してしまって、仕事も減らさざるを得なくなった主人公の女性が、築45年、家賃5万円の団地に引っ越すお話です。
『しあわせは食べて寝て待て』水凪トリ(秋田書店)
もりもり あ、そのマンガ気になっていました!
店主 その団地には、よく言えば面倒見が良い、悪く言えばお節介な大家のおばあちゃんが居て最初は戸惑ってしまうの。でも、その大家さんと同居している謎めいた若い男性が、薬膳料理を教えてくれて、食べることとか、生活自体を見直していくんだ。キャリアウーマンとして生きていくつもりだった主人公がその道を断たれたあと、どう生きていくのか?を見守っていく物語だよ。
ぱん 最近そういうご近所との繫がりって珍しいですよね。どう生きていくか、私も常に考えているテーマなので、気になります!
ちゃん 私は“家に住む”ということについて深く考えさせられる本を紹介したいなぁ。住宅を中心に、多くの物件を手がけてきた建築家の宮脇檀さんのエッセイ集『日曜日の住居学』です。衣食住とよく言われるけど、衣食に比べると住に重きを置いている人は少ないのではないか?という問いかけから始まります。皆はどうでしょう?
『日曜日の住居学 ─住まいのことを考えてみよう』
宮脇 檀(河出書房新社)
もりもり たしかに住って、決められた似通ったものから選ぶ……という受身な感じの印象があります。
ぱん 私も今までは食さえあればって思ってたんですが、今の家が日当たりゼロで色々不都合があったので、住環境って大事なんだなって最近しみじみ感じていました。
店主 私も去年今の家に引っ越したんだけど、前の家より不便ではあるけど日当たりも環境も良いから、だいぶ気分が良くなった気がするんだよね。だから重要だなって感じるよ。
ちゃん 店主とバイトぱんは住への関心が高まっているところなんですね。著者はまさにもりもりのコメントのような、均一間取りの話を例に挙げていて。住む人の生活様式によって間取りは変わるべきだと。
もりもり うんうん、そうですよね。
ちゃん この宮脇さんが手がけた家は、リビングにソファはなく大きなダイニングテーブルが一つあるだけだったり、キッチンとリビングが離れた場所にあったり、家主の要望に応えるかたちで間取りができているんです。雑誌などの部屋づくりのノウハウをそのまま自分の部屋に当てはめようとする人への苦言も。それは見た目は良いかもしれないけれど、自分の生活に合っているの?っていう指摘にもハッとさせられます。もし家を建てるなら?って、子供のブロックを使って自分にしか作れないマイホームの間取りを妄想しています!
もりもり 妄想といえば、私も以前大竹昭子さんの『間取りと妄想』という本を読んだのを思い出しました。
『間取りと妄想』大竹昭子(亜紀書房)
店主 間取りを妄想するの?
もりもり 間取りを妄想というより、まず最初に架空の間取りを決めて、そこから住んでいる人や暮らしを妄想して描いたちょっと変わった小説集なんです。例えば、室内よりも巨大なベランダがある部屋に住むカップルがいて、ケンカ中なんですけど、彼氏はベランダの片隅に小さなテントを張って中で猫とまるまって暮らしているとか。ああそういうことができちゃうんだなと。
ぱん 楽しそう!間取りって見てるだけでも楽しいですよね。
もりもり ですよねー!それにこの本、1つの話の最初にまず間取り図が載っていて、その後に文章が続いているので、間取り図と文章を交互に見ながら、こういう部屋になっているのかと想像をふくらませることができるようになっているんです。だから読んでいてわくわくが止まりません!バイトちゃんが言っていたみたいに、私も今までアパートとかマンションの間取りしか見たことなかったんですが、この本を読んでいたら初めて“家”というものに興味が湧いて、妄想したくなりました。
ちゃん いい間取りは人の生活様式を想像できるって私が読んだ本に書いてあったの。なので、間取りから妄想を膨らませられるというもりもりの本、とっても気になる!
店主 どう生活したいか?によって、選ぶ間取りも変わってくるだろうしね。私も間取り見るのすごく好きで、引っ越す前はもちろん、引っ越した後も、日常的にインターネットで見ては、いろいろ想像して楽しんでるので、この本も楽しめそうだな〜。ところでバイトぱんは、今回の引っ越しで、間取りのこだわりはあった?
ぱん 間取りというか、全体に日の光が当たる広い部屋がいいなと思っていて。というのも最近『暮らしの図鑑 グリーン』という本を読んで、観葉植物に囲まれた暮らしをしたいって思ったからなんです。
『暮らしの図鑑 グリーン
楽しむ工夫×いま取り入れたい観葉植物64×基礎知識』
境野隆祐/AYANAS(翔泳社)
ちゃん いいね!私もいま緑豊かなプチジャングルみたいなところに住んでいるから、日本に戻るなら植物に囲まれて生活したいという願望が強くなってるよ。
店主 うんうん、いいね!私は引っ越してから、切り花を買って飾るようになったよ。観葉植物もいつかチャレンジしてみたい!
もりもり 私はわりと枯らしてしまうパターンです……観葉植物憧れるんですが、難しそうな気もしてしまい……。
ぱん この本は観葉植物の種類や基礎知識はもちろん、自分に合った植物の選び方や、タイプ別の水やりのコツなんかも紹介されていて、一冊を読み終わる頃にはグリーンに囲まれて暮らしているイメージが摑めるんです。なので、もりもりみたいな人にもおすすめ!
もりもり すごい!助かります!やっぱりちゃんと育てようと思ったら本読んで知識をつけなくちゃですよね。本と一緒にチャレンジしてみたくなりました!
店主 今回のフェアの選書、あっという間に集まったね。テーマは「住まい」でどうかしら?
ちゃん やっぱり4人だと早い。テーマ、賛成です!
もりもり 賛成です!
ぱん いいですね!個人的にもタイムリーで勉強になりそう!
店主 じゃあ決まり!それぞれ選んだ本にPOPつけたりして、盛り上げましょう!
ちゃん、ぱん、もりもり (声を合わせて)がんばります〜!
※本記事は『小説すばる』2021年7月掲載分です。第15回は『小説すばる』2021年8月号誌面にて掲載予定です。(http://syousetsu-subaru.shueisha.co.jp/)