伝わるプレゼンを可能にする「サンドイッチ・メソッド」について

本記事の目的

ちょっと辛気臭い記事が続いたので今日は思いっきりノウハウ系の記事にしてみたいと思います。お題は「プレゼン」についてです。

こう書くとのっけから自慢話に聞こえるかも知れませんが、BCGに勤務していた当時、あるプロジェクトの最終プレゼンが終わったあとで、一緒にプロジェクトを担当していたあるパートナーから「山口さんは、僕がいままでに一緒に仕事をした人のなかで、一番プレゼンがウマいと思う。おそらく、東京オフィス史上、最もプレゼンのうまいマネージャーなんじゃないか」といわれ、その後、若手向けのプレゼン研修の講師を指名されたことがあります。 

実際に東京オフィス史上、もっともプレゼンが上手だったかどうかはわかりませんが、たしかに、プレゼンテーションについての「あるコツ」を言語化し、それをつねに意識していたことは確かです。実にシンプルで、知っていれば誰にでも実行可能なものですが、このコツを知っているだけでプレゼンテーションの準備にかかる労力を劇的に減らしながら、プレゼンテーションのクオリティを飛躍的に高めることが可能になるはずです。

本記事の目的は、読者の皆さんと、このコツ、僕が名付けたところの「サンドイッチ・メソッド」について共有したいと思います。

「クールなプレゼン」より「伝わるプレゼン」を目指そう

具体的なコツ=サンドイッチ・メソッドの説明に入る前に、外資系コンサルタントが大変重視している「プレゼンの心構え」について述べておきたいと思います。この点を踏まえないとサンドイッチ・メソッドの有効性をフルに発揮することは難しいと思うからです。その心構えというのは

カッコつけるな

というものです。

え?それだけ!?と思われるかも知れませんが、本当にそれだけです。しかし、この点を外してしまうとプレゼンのスキルはなかなか高めることができない。なぜかというと、「カッコいいプレゼン」と「よいプレゼン」というのは、必ずしも一致しないからです。

図1を見て下さい。

図1

クールでカッコよく、その上にわかりやすいということであれば、そのプレゼンは「最高!」ということになります。しかし、皆さんも日々の仕事で実感している通り、これはなかなか実現が難しい。そこで「クールさ」と「わかりやすさ」に要素を分解して、それぞれを改善するというアプローチを考えてみましょう。

このとき、まずどちら側から着手するか、という論点が出てきますが、筆者が見るところ、多くの人が「クールさ」を高めることに努力や工夫をしてしまうという傾向があるように思います。

典型例が「スティーブ・ジョブ○のプレゼン術」とか、ああいった類のコンテンツに手を出して表面的にそれを真似ようとするようなパターンですね。しかし、これは残念ながら「山の登り方」としてルート取りを間違えていると言わざるを得ません。なぜなら、プレゼンにおいて最重要なのは「こちらのメッセージが相手側にしっかりと伝わる」ということですから、まずはなにをさておいても「わかりやすさ」を高めることが重要だからです。

外資コンサルのプレゼンは実は地味

これは外資系コンサルティングファームの実態とも整合しています。というのも、コンサルタントのなかには「わかりやすさ」は高水準ながらも「クールさ」はそれほどでもない、という人が多いからです。

逆に言えば「わかりやすさ」さえ高めてしまえば、そこからさらに「クールさ」を高めることなく、十分にコンサルティングの現場において高い成果を維持できるということです。

外資系コンサルタントと聞けば、流暢で華麗なプレゼンテーションをイメージするかも知れませんが、それはまったくの誤解で、マネージング・ディレクターやシニア・パートナーといった高位の立場にある人たちも、比較的地味なプレゼンテーションをする人が多いのです。 

サンドイッチ・メソッドでプレゼン準備は必要なくなる

筆者が「クールさ」よりも「わかりやすさ」をまずは求めましょう、と主張するもう一つの理由として、「わかりやすさ」はコツさえ掴んでしまえば、比較的容易に高められる、という点があります。そしてこの「わかりやすさ」を高めるコツこそが、次節で皆さんに説明するサンドイッチ・メソッドなのです。

このメソッドを覚えることで、まずは「わかりやすさ」を改善する。このメソッドがそれなりに板についてきて、自分のものになった段階から、「クールさ」を改善するためにどうするかということを考えていく、というのが、筆者が推奨するアプローチです。 

ではサンドイッチ・メソッドとはどのようなものなのでしょうか?図2を見てください。これがサンドイッチ・メソッドの全体像です。 

図2 サンドイッチメソッドの基本構造

図2では、一枚一枚のスライドを説明する流れについて説明しています。サンドイッチ・メソッドでは、すべてのスライドをこの流れで説明します。

え?全てのスライド??読者の皆さんのなかにはこう思われた方もいらっしゃるかも知れません。つまり、スライドって一枚一枚で書いてある内容が違うのに、すべてのスライドを同じやり方でプレゼンできるものなの?という疑問です。

結論から言えば、はい、その通りということになります。これは試してみればすぐにわかることなのですが、すべてのスライドをサンドイッチ・メソッドで説明すると、プレゼン全体がとても流れやすく、わかりやすくなる上に、準備もプレゼンもずっと楽になるはずです。

プレゼン失敗の最大の理由=一枚一枚のスライドで話し方を変えるから

そもそも、多くの人がプレゼンの準備で頭を悩ましながら、結局はプレゼンで失敗してしまう理由は実にシンプルなものです。その理由とは

一枚一枚のスライドについて、どうやってプレゼンしようかといちいち考えるから

なのです。こんなことをやっていれば、例えば三十枚の資料であれば三十回のスライド説明を考えなければいけないわけで、とてもじゃありませんがやっていられません。結局、準備不足のまま本番、ということになるわけですが、その本番においても、一枚一枚のスライドについて、その場でアドリブするようにプレゼン内容を考えるから失敗してしまうのです。すべてのスライドを、同じ手順で、同じ枠組みで説明すればいい、となれば準備も心理的負担も大幅に軽くなります。

それでは、具体的なプレゼンの例はのちほどご紹介するとして、ここではメソッドの内容について説明しましょう。

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