「自分という事業」の経営に、経営学の知識を活かす
経営学を知らないコンサルタント
経営学の勉強には興味はあるけど、ビジネススクールに通う時間はない。かといって独学しようと本屋を訪れれば、膨大な書籍を目の前にして、どの科目のどの本から勉強すればいいのかわからず途方に暮れてしまう、という人は多いのではないでしょうか?
その気持ちは本当によくわかります。というのは、ちょうど20年ほどの前の当の筆者自身がまさに同じ状況だったからです。
私は、2001年の5月、31歳のときに、大学卒業以来働いていた広告業界から身を転じて、外資系コンサルティングの世界で働き始めました。新しい世界で新しい仕事をやることにワクワクしていた一方で、大きな不安の種を抱えていたことをよく覚えています。というのも、これから経営コンサルタントとして仕事をしよう、というのに経営学に関する体系的な知識をほとんど持っていなかったからです。
今でこそ、戦略コンサルティングファームにMBAをとらずに入ってくる人は決して珍しくなくなりましたが、当時は中途入社で入ってくる人のうち、MBAを持っていないというのはとても珍しかったのです。周りの同僚のほとんどは一年~二年をかけてみっちりと経営学を勉強しているのに、自分だけはほとんど経営学の知識を持っていない。
現在となってはMBA学位のホルダーは珍しいものではなくなってしまい、学位と成果にはほとんど関係がないということが明らかになってしまっていますが、当時は、こんなんでやっていけるんだろうか、とものすごく不安に思ったわけです。
ある日、この点、つまり「MBAの学位も持っていないのにやっていけるのか」という不安がぬぐえずに、なかなか決断ができずにいたところを、当時のマッキンゼー日本代表だった平野正雄さんからお食事にお誘いいただいた際、お酒が入っていたこともあって、直接きいてみたことがあります。
僕:「ひとつお聞きしたいのですが、僕はMBAを持っておらず、経営学のリテラシーがほとんどありません。それが御社で仕事をする上でハンディになるのではないかという点が非常に心配です」
日本代表:「まったく問題ありません。マッキンゼーが採用で重視するのはジェネリックな資質で、知識やスキルではありません。経営学はプロジェクトをこなしながら勉強してくれれば、それで十分です」
ビジネス書の濫読を通じてわかったこと
この答えに、一度はとても安堵したのを覚えていますが、逆にいえば、いま現時点では経営学のリテラシーは問わないけれども、中に入った以上は身につけてくださいね、という意味でもあります。
ということで、僕はとてもシンプルな対策をとることにしました。つまり、ビジネススクールで用いられる教科書を中心に、経営学に関連する定番の書籍を、二年間かけてすべて読了してやろうと考え、それを実行したわけです。
今から考えれば、このアプローチは率直に言って、とても「スジの悪い」やり方だったと言わざるを得ないのですが、しかし、当時はそうするよりほかに仕方がなかったのです。
冒頭に記したとおり、経営学に関してはさまざまなジャンルで膨大な書籍が出版されていますが、この膨大な書籍を目の前にして、どこからどう手を付けるかの手引きがない以上、不安を解消するためにはリストの上から順に一つずつつぶしていくしかなかったわけです。
どれを読むべきか、ということに頭を悩ましているくらいなら、図書館にある経営関連の書籍を棚の一番上の端から一番下の逆の端まで全部読めばいい、と考えたわけです。
この様な経緯からブルドーザーのような濫読を初めることになり、最終的に三年間で二百冊弱の本を読了し、今になってつくづく思うのは「読む量がこの一割だったとしても、九割の効果は得られただろうな」ということです。
問題は「どの一割」が、九割の効果を生む本なのかを、読む前に知ることができなかったということです。
本当に読むべきビジネス書
ここでは、今の僕の知的生産の基礎となった「九割の効果を生む一割の書籍」を厳選してご紹介し、さらにどのような順序で読んでいくかというプロセスについての目安も提示できればと思っています。
筆者はこの「読むべき本」の全体像を「ビジネス本マンダラ」という枠組みで説明していきたいと思っています。中心に、どんな業界・職種であっても、ホワイトカラーとして知的生産に従事している以上、絶対に読んでおいてほしい必読本を配置し、外側に行くに従って、各分野での専門性が高まり、その分野で求められるハードコアな書籍を紹介する、という枠組みになっています。
逆にいえば、専門家としてその分野を追及していく、ということでない限りは、マンダラの中心からせいぜい二階層目までの読書で基礎教養としては十分であって、あとはその時の仕事上の要請に従って読んでいけばいい、ということです。
ここから先は
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?