めざまし占い生活5日目:さそり座10位 千手観音と呪われた靴
また10位だ。まったく週明けから快調とは言えないスタートである。
しかも文面から察するに誰かと揉めるのだろう。世間はひろゆき氏をはじめとする論破ブームだけれど、僕は誰かと喧嘩するのは極力避けたい。だいたい1対1の論戦のようなものは土俵に上がった時点で負けだ。先輩に噛み付いたら周りからも煙たがられ、後輩の女子など泣かそうものならA級戦犯扱いだ。同期と揉めたら両方ガキに見られる。先輩や上司がアルカイック・スマイルで仲裁に入り、保母さんと未就学児のような光景に、同僚たちからは微笑みを(あるいは嘲笑を)向けられることになる。このキンダー・ガーデン・アトモスフィアに一旦引きずり込まれると逃れる術はない。寄せては返す羞恥と後悔の波にさらされるだろう。
豊富とは言えない人生経験の中ではあるが、僕はこれらのことをよく学んできた。実際に痛い目を見たこともある。
中学時代、バレー部の練習終わりに同級生の井田くんと揉めごとを起こした。理由ははっきりと覚えていないが、確か先方がモー娘。の中で新垣里沙が一番かわいいと言い出したのが事の発端だったように思う。僕が彼を邪教徒扱いして井田がキレた。僕は断然ミキティ派だった。
お互いに相手を本気で傷つけるつもりのない、半ば予定調和的な殴り合いだったが、止めに入った人物が良くなかった。井田くんの方は穏健派の土手くんが止めに入ったが、こちらには空手有段者で、バリバリの武闘派の藤原という男が来た。これには焦った。僕は相手が井田くんだから強気に出たものの、空手有段者と渡り合えるビジョンは無い。また藤原くんは止めに来たというよりも「俺も混ぜて!」のテンションだった。そこから先はよく覚えていない。断片的に思い出せるのは、藤原くんの手が何本もあり、そしてほぼその全てが的確に僕のボディを捉えていたことだ。社会人になってから京都の三十三間堂で千手観音を見た時、僕は彼を思い出した。
人と揉めても良い事はない。そのことは中学時代に拳で僕の体に刻まれた。だから「強い主張でトラブル発生」のような事態はめったに起きないはずだ。「相手を尊重する気持ち」は忘れてはならない。今から思うと新垣里沙も悪くなかった。モー娘。が好きならそれでいいじゃないか。僕だってミキティが後にブーメラン・パンツで嫁の名を叫ぶ芸人と結婚すると知っていたら殴り合いまではしなかった。
さて、またラッキーポイントがしんどい。「スエードの靴」など持っていない。大学生の時に色気づいて一時期履いていたが、今ではスニーカー一択だ。歩きやすさが違う。
とはいえ、現在2周間ほど履いている靴にはちょうど殺意が芽生えてきたところだった。たしかにイズミヤで2000円で買った僕も悪い。だけどこんなにインナー・ソールがアクロバティックに動き回るとは思ってなかった。おまけに中途半端な接着剤が、ずれたインナー・ソールを前衛的な角度で固定してくれるので、3分に1回立ち止まって靴を脱ぐ羽目になった。また、靴は蝶の羽のように軽かったが、靴底も蝶の羽のように薄く、地球の感触が足裏からダイレクトに伝わってくる始末だった。逆に僕の足の裏がずいぶん分厚くなったような気がする。
そんなわけで靴を買いに行った。一応スエードの靴も見たが、結局アディダスの黒のスニーカーを買った。まあどちらも靴なので半分くらいはご利益があるだろう。我慢できずに購入直後に履き替えたら、視点が3センチほど高くなった。やっぱり靴底は大事だ。
○今日の良いこと
・呪われた2000円のスニーカーを捨てることができた。
・アディダスと丈夫な靴底を手に入れた。
○今日の悪いこと
・アディダスを手に入れる前に呪われたスニーカーで3駅ほど歩いたので足が痛い。
明日も良いことあるといいなあ。