「選べる面接官」をやってみて
2025年卒の新卒採用から、学生側が1次面接の面接官を自ら選べる「選べる面接官」という取り組みを導入してみました。
面接官は面接する学生情報を、履歴書やESなどで事前に把握できるのに対して、学生側はどんな方が面接官として出てくるのかもわからず臨むというアンフェアな状況を少しでも回避することで、リラックスして臨めるようにとはじめた取り組みです。
26新卒採用も始まるこのタイングで、昨年の「選べる面接官」の取り組みを振り返ってみたいと思います。
広報としての露出に関して
『面接官ガチャ』というワードがあったり、学生数の減少からますます売り手市場となっている市況感も合わさり、この「選べる面接官」という取り組みは、NHKの『おはよう日本』をはじめ、テレビ、ラジオ、新聞、web記事と多くのメディアにて取り上げていただき、想像以上の反響となりました。
この取り組みを行う上で、当然広報的な戦略も練ったわけですが、これは私が管轄するカルチャーデザイン室という部署の中に、新卒採用と全社広報の両ユニットがあり、担当していることが功を奏したかもしれません。複雑な連携や余計な確認もなく、初期段階から一緒に議論し、狙いや背景は直で伝えられるので、スピード感を持って進めることができました。
「新卒採用」というテーマな故、リリース時期に関しては迷いましたが、ナイルが新卒採用をスタートさせた10月にプレスリリースを配信して第一波を起こし、その後新卒採用が本格化する3月あたりに第二波を作るような設計で準備を進めました。
2023年には、リクルート就職みらい研究所、J−WAVE『STEP ONE』、Web担、ねとらぼ、HRNOTE、U-NOTE、NHKジャーナル(ラジオ)、日経COMPASS、トークキャンプ、AMP
2024年に入ってからは、共同通信、静岡新聞、TOKYO MX、みずほリサーチ&テクノロジーズ会報誌「Fole」、NHK就活応援ニュースゼミ(ラジオ&web)、日経BP、広報会議、NHK『おはよう日本』(&ラジオ&web)、『就職白書』、日経ビジネス、読売テレビ、日経MJ、TBS『ひるおび』、朝日新聞、日経ニュースプラス9、アドタイ、オフィスのミカタ、日本経済新聞(WEB)、AERAに掲載されました。※順不同
これだけ多くのメディアに取り上げていただくことになったポイントとしては、昨年の段階で『リクルート就職みらい研究所』に取材をしていただいたことが大きかったと思っています。「『リクルート就職みらい研究所』さんの記事を見て〜」とお問合せをいただくことも何度かありました。その後、『就職白書2024』でも取り上げていただき、とても感謝しています。
どれだけの学生が面接官を選んだのか
「選べる面接官」は、学生に1次面接担当者20名の中から最大5人を選んでもらい、その上でスケジュール調整をして一人に決めるものだが、学生によっては「別に誰でもいい」という人がいてもおかしくないので、「会社からのアサインにお任せします」と言う選択肢も作っています。
実際に、1人も面接官を選ばずにお任せした割合は約10%(正確には9.2%)という結果となり、90%以上の方は面接官を選んでくれました。
選ばれる面接官の傾向は、やはり自身の描くキャリアに近い人を選ぶ傾向が強いように思われました。女性は女性を、MGR志向の学生はMGRを、若手の裁量を意識する人は若手を選んでいる感じです。
昨年と比べての影響
先ほど記載したように、大幅な露出ができたからか、24年卒と比較してエントリー数は1.8倍の着地となりました。昨年末に上場したり、昨年とは異なる母集団形成(媒体掲載)にもなっているので一概に何がエントリー数の増加につながっているか断定は難しいですが、結果として約倍になったのはよかったです。
また大きな変化としては、一次面接後の離脱率が大きく下がりました。こちらの改善は明確に狙っていたわけではありませんが、24卒は約︎30%の離脱があったのに対して、25卒は離脱率が15%と大きく減少しました。一次面接前の離脱率も18%から15%へ下がっており、『選べる面接官』を体験する前後で離脱率がかなり改善された形になっています。
運用していく上で大変だったこと
運用面での苦悩もいくつかあったので上げておきます。
スタート当初、面接官はデジタルマーケティング事業部(以下、デジマ事業部)、メディアソリューション事業部、自動車産業DX事業部、バックオフィスと事業部ごとにこの順番で並べていましたが、選ばれる面接官がデジマ事業部に偏りがありました。主な配属がデジマ事業部になることもあり、学生向けへのメッセージはデジマ事業部を全面に出しているので、ある意味そうだよなという結果です。ただ、アサインに偏りが出ると一部の面接官に負荷が大きくなるため、面接官の掲載順をバラバラにシャッフルしました。これにより大きな偏りはなくなりました。
選べる面接官の数は20名としていましたが、それぞれ現場で第一線で活躍しているメンバーということもあり、彼らの仕事の状況が変わることでアサインができなくなることがありました。メイン業務への一時的な集中が必要になったり、別プロジェクトが走り出してリソースが確保できなくなったり、部署異動があったり……。こういったことは新卒採用を運用している側からすれば、よくあることではあるのですが、「選べる面接官」で選べる対象として露出していることで、この辺の調整は手間が増えました。結果的に途中で数人、面接官を入れ替えるなどの対応を行っています。
最後もう一つは、選ばれたのか、そうでないのかわからない問題です。
先にも書きましたが、「会社にお任せします」という選択肢も設けており、約10%の学生はお任せしているので、面接官は特に選ばれていない状態で面接をすることもあります。このことをしっかりと面接官にも把握しておいてもらわないと、「選んでいただきありがとうございます」「え、選んでないです・・・」「え・・・」みたいなことにもなりかねません(笑)。
選ばれていないパターンもあるからねと面接官には、改めてしっかり説明させてもらいました。
一番大きな変化は、聞きたいことを深く聞けること
取材の中でも「選べる面接官」を導入しての効果を何度も聞かれて答えてきましたが、一番変わったことは、学生からの質問の質が上がったことです。
「選べる面接官」の醍醐味は、当然面接官が選べることではありますが、その結果、どんな人が面接官なのか事前に把握できていることが大事なポイントです。だいたい面接では、最後に選考者から面接官へ質問の時間が設けられていることが多いですが、この時間がだいぶ有意義なものになりました。
これまでは大体、「入社した決め手は何でしたか」とか「やりがいを感じる時はどんな時ですか」「御社の強みは何ですか」といった誰にでも聞ける当たり障りのない質問を投げかけられることが多かったですが、今年は、「コンサルタント職からセールス職に異動した時はどういった思いや考えを持っての異動だったのですか」とか「前職は大手だったと思うのですが、転職してきて一番のギャップは何でしたか」とか「文学部出身でもIT業界で活躍できますか、文学部での学びが活かされたことはありますか」など、それぞれ面接官のバックグランドを踏まえた上での質問を投げかけてくれる学生が増えました。面接官側もこれにより、より寄り添った形で率直な回答をすることができているようで面接官にとっても好評です。
学生側は聞きたいことを答えてくれそうな人を選び、その人に深く質問できることで、その人や会社のことを理解、把握できるので無駄がなくタイムパフォーマンスがいいとも言えます。
こんな感じでやっているので、最終面接を終えて、内定をもらった学生に、他にも気になることや聞きたいことあったら気軽に言ってねと採用人事が伝えても、「これまでに聞きたいことは聞けたので今のところありません」みたいな返答をもらうことも多いようです。
とりあえず内定をもらってから、いろいろ気になることを聞くよりも、選考段階でどんどんクリアになっている中で、互いに対話しているので、これはとても健全なことだと思っています。
想定外の大きなメリット
面接の中での質問を有効に使えること以外に、会社にとっての大きなメリットもありました。それは、学生の企業理解度が例年よりも高いように感じることが多いと言うこと。
学生側が面接官を誰にしようか選ぶことできることで、学生は主体的に選択対象者の情報を拾いにいくことが考えられます。5人選ぶのに5人だけの情報を見ることはないので、まず6人以上のプロフィールを見てくれていることが多いと思われ、プロフィールには名前と写真、所属事業部、これまでのキャリアなどの基本情報のほかに、やりがいや学生時代の経験、休日の過ごし方が記載され、さらにはオウンドメディアのインタビュー記事まで載せているので、それなりの情報量になる。
採用ページに載っている社員紹介などは大体2〜3人のことが多いし、なんとなくで読んでいる人が多いと思うが、「選べる面接官」だと20人分載っており、しかも自分がその後、面接官として選ぶための情報収集なのでその熱量は違うはず。結果、どんな事業があって、どんな仕事をしている人がいるのかの全体像をある程度把握できることになっており、企業理解の解像度が高い状態になりやすい施策になっていました。
これは当初想定はしていたわけではなかったのが、会社側にとってとても大きなメリットになっているなと感じます。
2026年卒はどうする?
25卒の新卒採用を振り返ってみて「選べる面接官」はとても良い働きをしてくれたなと思っており、学生にとっても面接官にとっても会社にとっても良いことが多い、三方よしな取り組みなので、迷うことなく26卒の新卒採用でも実施します。
1次面接官を選べるという現状稀有な体験を通じて、『自分の未来、可能性、キャリアを自ら選び切り拓く重要性』を体感して欲しいし、ナイルにはそういうカルチャーがあることも選考体験の中で味わってもらえたらと思っています。
BET ON MYSELF 〜自分の可能性にかけよう〜 ということで、主体的に自分で決めて勝負することを楽しめる方に、またたくさんエントリーしていただけたら嬉しいと思っています。
あわせて、こういった取り組みが新卒採用の新たなスタンダードになったら良いなとは本気で思っているので、是非多くの会社さんにも同様の取り組みをやっていただけたらと願っています。全然難しくなくどこの会社でもできると思います。どんどん広がっていくと最高です。
そんなこんなでナイルの26卒新卒採用の募集も開始しました。
学生の皆さんは、ぜひ応募してみてください!