体系立てて技術を学ぶ必要性と難しさ
Twitterを眺めていたところ、とあるツイートが目に留まりました。
ああーなるほどなあーこういう考えの層が出てくる時代になったかー!
でもこれ時流的にそうならざるを得ないんだよねえー!
私が上記の感想を述べた理由を、分かりやすく例えるならば。
「自動車の自動運転が百パーセント普及した世代に生まれた人が、昭和~平成の交通の様子の映像を見て、『何で皆自分で車の運転してんの? 事故るし疲れるんだから機械に任せればいいじゃん、理解出来ない!』とびっくりしている」感じでしょうか。
そもそも車は人の手で運転する前提で設計されたこと。自動運転なんて技術が昔の時代にはなかったし、テクノロジーも追いついていなかったこと。法律の整備もなされておらず、安全性も保障されていない時期があった(二〇二〇年の現在がこの状態)こと。
日常に技術や文化が定着してしまうと、そうした進化、改革の過程があった事を理解するのが難しくなることがある。それが今、パソコンで作ったモデルデータを動かす業界でも起こっていると知りました。
ここ二、三年で誕生し、次第に存在が知られるようになってきたバーチャルYoutuber。2D(平面の絵)や3D(立体のモデル)をアバターとして人が操作し、様々な企画やトークなどをする動画を投稿したり、生配信する人達をこう呼びます(通称Vtuber)。
名前からしてYoutubeでの配信者が多いようですが、ニコニコ生放送やSHOWROOMなど投稿先も多岐に渡ります。
沢村の推しは、特撮大好き吸血鬼(姫)ルル=ルチカ様!
企業がVtuberを販促に役立てる例も。サントリー所属の燦鳥ノム(さんとり のむ)さん、歌がとても上手くて素敵です。
小峠教官と電脳少女シロちゃん他Vtuberさんとの掛け合いが面白くてためになる「超人女子戦士ガリベンガーV」も好き。
ときのそらちゃん、猿楽町双葉ちゃん、響木アオちゃんの三人のVtuberが、Vtuberの姿のまま役を演じてドラマを作った「四月一日さんちの。」も、最後まで楽しくおっかけてました。
いずれの動画でも、Vtuberさん達は表情豊かに話し、動き、時にダンスしたりドラマを演じられるほど、違和感なく動いています。
これはVtuberの魂と言える、中の人が動画を作ったり配信するにあたり、ちゃんと機材を設定して中の人の実際の動きをVtuberのモデルに反映するようにしているため。技術が発達したおかげで、動作の読み込みの遅延などが少なくなりリアルタイムで反応している感が増しています。
ですが、これだけスムーズにモデルが動かせるようになったのもここ三年くらいの話。
キャラクターの3Dモデルを動かす特性を持つソフト『MikuMikuDance』(MMD)が誕生した二〇〇八年二月には、リアルタイムで演者の動作を取り込む技術は大手企業くらいしか有していませんでした。演者の動作を取り込むためのモーションキャプチャーツールも市場に広く出回るものではなかったのです。
(直接人の動きを取り込める技術が広まるきっかけは、二〇一〇年十一月発売のKinect for Xbox360あたりでしょうか)
そのため『MMD』でキャラクターを躍らせるためには、手打ちと呼ばれる作業が必要でした。キャラの手や足、体のパーツを少しずつ動かして、躍らせたい動作を記憶させていく非常に地道な作業です。
「踊ってみた」動画を表示し、それをなぞるようにキャラモデルを動かすモーショントレースが、MMD界隈の盛り上がりに華を添えてきました。
百舌谷さんのこちらの動画を見ればノウハウは分かりますが、元になる動画があるとは言え、ここまで流麗なダンスモーションを作るには相当の研鑽が必要。現在でも、MMD界隈でダンスモーションを手打ち作業で作成する方は多数おられます。
手打ちの何がいいって、作者がダンスを覚えて踊る必要がないこと。ダンススキルのない人でも、根気よく作業すれば好きなキャラを躍らせられる。それもまたひとつのエポックメイキングだったと言えます。
これらの十年以上の歴史がMMD動画にはあるのですが、最近MMD動画の存在を知った人にはその進化の過程はなかなか把握・想像し得ません。Vtuberが個人で普通にモーションキャプチャー技術を使っている現状、動いている二次元・三次元のモデルは人がリアルタイムで動かすものだ、という考えも一般的になりつつあります。
そのため、最初に紹介したツイートの発言元にある「MMD踊ってみた気持ち悪すぎて無理」「スペック問題なんか知らんけど動きをもっとなめらかにすればいいのに」の主張は、パソコンのスペックが低いため、キャプチャーしたダンスモーションに遅延が起こってカクカクしている(のが気持ち悪い)と見なすところから発生しているのです。
根本的に手段が違っていて、モーションキャプチャーを使わないユーザーの手製モーションであるが故、なめらかじゃない理由はパソコンのせいじゃないんだよと説明しないと正しい理解が伝わらない。そこまで作る側と見る側の環境が変化してきたんだなあ、と実感した出来事でした。
正しい情報を伝える難しさは、新しいファンの広がりや技術革新が進むたび、どんな界隈でも起こり得るのでしょう。己の知識がいつも正しいと思いこまず、見分を広めて間違っていた部分は正しくアップデートしていく気持ちを持ち続けたいです。
そして、まだ成されていないことを実現させようと努力している人達へのリスペクトも、ずっと表していきたいもの。その夢が達成された先に、きっと私たちが楽しめる色んなことが生まれるはずなので!