ブラック・ミラー S6-2 ヘンリー湖(ネタバレ)
BRACK MIRROR
LOCH HENRY
「ジョーンはひどい人」で名前だけ出てきたやつ。実録犯罪物と言ってましたね。
面白かった。でもあんまりブラックミラーって感じはないかも。普通の映画っぽいストーリーでした。
LOCHって聞き馴染みのない単語だけど、スコットランドで湖とか入り江とかを指す単語だそう。ふぇ〜
↓以下ネタバレ↓
主人公デイヴィスは故郷であるスコットランドの田舎町に帰ってきた。恋人ピアを連れ、ラム島のわけわからん珍卵(めずらたまご)職人の映画を撮るためだ。
デイヴィスの母は優しい人っぽいけど、なんだか息子の恋人の人種にいささか戸惑っている様子。父の生前の職業だった警察官をピアが話の流れでディスってしまう一幕もあって、スーパーウェルカムな雰囲気でもない感じ。ウォーキング・デッドでリックとミショーンがくっついた時と同じ気持ちだ。
そんなこんなで落ち込み気味のピアを励ましつつ、翌朝ヘンリー湖に向かう二人。ヘンリー湖とその湖畔の街は美しい景色と澄んだ空気に恵まれ、観光地にはうってつけの場所なのに、はて? なぜか二人の他には誰もいない、と首をかしげるピア。デイヴィスは難しい顔。
湖をあとにし、町のバーに入ると薄暗い店内に髭面のウェイターが一人。彼はスチュアートといって、デイヴィスの友達だ。旧友との再会をやたらと喜んでいる。模型制作が得意らしい。
他に客もいないので3人でビールを飲みながら世間話をしていると、ピアが「てか何で観光客一人もいないん?いい所なのに」と訊ねる。「おま、話してないん?」とスチュアート。デイヴィスは重い口を開き、この町のとある事件について話し始める。
1997年、まだ観光客が大勢いた頃、ある新婚夫婦がこの街を訪れた。
夫婦は一週間滞在し、新婚旅行を楽しんだ。住人たちも彼らの姿を見たし、このバーにも来た。しかし彼らは貸別荘に車と荷物を残したまま行方不明になってしまった。デイヴィスの父親ケネスが聞き込みをして探したが見つからないまま数週間が経ち、事態は大きくなりマスコミが押し寄せるほどだったが、ダイアナ妃が事故で死んでみんな忘れた。
ある晩、イアン・アデアといういかにもヤバそうな見た目の男がバーで酩酊し「ここで銃をぶっ放す」と凄んだので、スチュアートの父親リチャードはケネスに様子を見に行ってほしいと頼む。
イアンは丘の上に住む農場の息子だった。ケネスはドアをノックしたが返事はない。諦めて帰ろうと踵を返したその時、窓から発砲があった。イアンだった。ケネスは肩を撃たれ、応援を呼ぼうと無線を手にした。すると家の方から銃声が数発。
イアンは両親と無理心中。家の地下室は古い掩蔽壕(分厚いコンクリートなどで造られた軍事用建造物)に通じていて、数多の拷問器具があった。彼はこの部屋にさらった人間を監禁、拷問しては殺していたという。被害者は8人。死体は焼いていたようだ。ヘンリー湖付近は元々危険な土地で、川も深く行方不明になる者も珍しくなかった。だから戻らない者がいても気づかれなかった。
結果、悪い噂が広まり観光客がいなくなったという。
ちなみにデイヴィスの父親は助かったが、入院中の感染症が原因で死んだ。
何を思ったかピアが「現場を見たい」と言うので、しぶしぶ丘の上のイアンの家まで連れて行くと、今度は「わけわからん卵男よりこっちを撮らない?」と言い出す。そういえばそもそも映画を撮りに来たんだった。イアン・アデアの話になって一気に老け込んだデイヴィスは、猟奇殺人者の犯罪ドキュメントなんて自分の撮りたいものじゃないし親父も死んだし母さんも不快だろコンテンツ扱いするなと語気が強くなる。そしたら「じゃあお母さんの視点も入れよう」って何が「じゃあ」なんだよ。何の解決にもなってないじゃねーか。
スチュアートは観光客を呼び戻すことしか頭にない呑気な野郎なので、ピアの提案にノリノリ。Netflixの殺人犯の話を引き合いに出し、その土地の美しい風景を映すことが観光案内になると力説。一理はある。しかもなぜか4年前に死んだスチュアートの母親が事件の資料を大量に集めていて、お膳立てはバッチリ。これにはデイヴィスもとうとう首を縦に振った。(これが悲劇の始まりだと思うと)可哀想。
とはいっても、ドローンで湖や美しい山々を撮ったり、昔のニュース映像を再編集したり母にインタビューしたりと作業中のデイヴィスは結構満更でもない感じではある。
余談だがスチュアートの父リチャードはアル中で、昔の覇気の一切を失っている。デイヴィスたちがイアン・アデアの事件を掘り起こしていることをよく思っていない。「どうして過去を嗅ぎ回るんだ」と怒られた。
配給会社?の担当者に「なーんか物足りない」と言われたので、実際の犯行現場を撮りにいくことに。防護服に身を包んだ3人は扉に貼ってあった板を剥がし、イアンの住んでいた家に足を踏み入れる。雰囲気を出すためブレア・ウィッチよろしく古いカメラで中を撮影。テープはデイヴィス母が「ベルジュラック」(昔の刑事ドラマらしい)を録ったものを拝借した。
地下室は案外普通の雰囲気。拷問器具のたぐいはすべて押収されているので絵的にはしょぼい。そこでスチュアートが体液を偽装しようとレモンジュースを撒いてブラックライト点けたら辺り一面白く光って一同ドン引き(血や精液はブラックライトで光る)。
レモンジュースは必要なかった(ニッコリ)
帰りの車中、「地下牢で非道なセックスを楽しむ歌」を歌って不謹慎オブ不謹慎の3人。デイヴィスはもはやノリノリ。あまりにふざけすぎて大きめのトラックと正面衝突。だが全員生きた。すごい。トラックの運転手はなんとリチャードで、彼とデイヴィスは入院することになった。スチュアートは手に軽傷、ピアにいたっては無傷。すごい。
デイヴィスの家でお母さんと二人きりになってしまったピア。気まずいので「映像の取り込みが」と夕食を断ろうすると、「食べなきゃダメよ」と母。
部屋に戻り、映像の取り込みを始める。
病院ではベッドでスマホ版マリオカートに興じるデイヴィス。殺人部屋の帰りにトラックとぶつかって入院してるのにである。登場人物全員呑気か。
呑気かと思いきやそこへ同じく入院しているリチャードがやってきて「映画は作るな」と重々しい雰囲気。
「なぜ?」と訊くと「証拠は持ってない。前々から気づいてた」と。
その日撮影した映像が終わり、元の映像が流れ始める。「ベルジュラック」の次回予告だ。
しかし、その映像もすぐに途切れてしまう。
次に流れたのは、見覚えのある部屋。そして、イアンと呼ばれる男。
怯えた表情のイアンと、笑いながら撮影する中年男性の声。やがて手足を縛られ口を塞がれた半裸の男女が映し出される。
そして、中年男性の顔もあらわになる。口髭を生やした恰幅のいい男だ。
拘束された男女は、失踪した夫婦に違いなかった。
口髭の男が「入れ」と言うと、陽気な音楽とともにベネチアンマスクにレザーのナース服、そんで女王様のロングブーツみたいな何とも形容しがたい格好のおばはんが踊りながら登場。手には電動ドリル。悪趣味の権化。
眉を顰めながらも目を離せないピア。
そこへ「パイが焼けた」と母登場。
二人きりの夕食。
ふと壁に目をやると例のベネチアンマスクが。
急いでトイレに行ってデイヴィスに電話をかけようとするが電話がなくてつながらない。「散歩に行く」と心配するお母さんを振り切って家を脱出するピア。
不審がったお母さんはデイヴィスの部屋に行ってみる。するとビデオデッキから「ベルジュラック」のテープが。日付は7/19、夫妻が最後に目撃された日だ。
外に出てもなかなか電話がつながらない。
母親の車が追ってくる。辺りは真っ暗。石塀を越え川に出て遠くへ離れようとするピアだったが、流れに足を取られ転倒した拍子に頭を打ってしまう。
ピアを見失ったお母さんはファックを連発。
もう隠し切れないと悟ったジャネットは犯行が記録されているであろうビデオテープ、夫や被害者と撮ったチェキの入った箱、そして何やらメモを書き残しベネチアンマスクをつけて首吊り自殺。
場面は変わり、映画の授賞式(英国アカデミー賞?)。
完成された映画の中で、ケネスはイアン一家を射殺し自らを撃つことで罪を逃れたこと、リチャードはケネスとジャネットにあのおぞましいゲームの招待を受けていたことが明かされる。「ヘンリー湖 真実は明らかに」と名付けられたその作品はドキュメンタリー部門を受賞。
スチュアートは満員御礼のバーで中継を見ながら受賞を喜んでいる。
終始浮かない顔のデイヴィス。パーティーを抜け出し一人で途方に暮れていると、スチュアートからの電話。クソ呑気ヒゲ坊主は「レッドカーペットを歩いたか!?こっちは観光客で溢れかえってる」と超絶無神経。話の途中で電話を切り、ポケットから紙切れを取り出すデイヴィス。証拠とともに母が残したメモだ。
メモにはこう書いてある。
話は面白かったし編集もよかった。でもピアがウザい。
ピアは映画のためと言いつつ結局は面白がってるだけっぽいし、配給会社の担当者と一緒で「エンタメとしてパンチのあるもの」を撮りたいがために無理やり彼氏を説得した感が滲み出ていた。まあ結果として真実が明らかにはなったけど、ジャネットにもう罪を犯す気がなかったのだとしたら知らなくてもよかったのではとも思う。
てか恋人の父親が間接的に殺された事件の映画を撮ろうとか人間的にアレじゃないか。デイヴィスの方が言うならまだしも。
そもそも彼氏の家に遊びにきて夕飯残したり断ったりするなよ。
「糖質制限してて」じゃねーよ。あの描写は一体何だったんだろう。やっぱりピアをスティーブ・ジョブズみたいに「偉大なコンテンツを追い求める情熱の代わりに人間性を欠いた人」として描きたかったんだろうか。
観念したジャネットが息子のために書き置きを残す最後は、特定の人物への愛は本物だったという意味で「ビューティフル・ダイ」を思い出しました。
「ビューティフル・ダイ」結構好きなのでこの終わり方は悪くなかった。
授賞式でずっと上の空だったデイヴィスの心情はこの世で最も計り知れない(恋人が死んで家族が殺人鬼でしかも死んだけど自分のために証拠を遺してくれた=愛されていたことは確か?)けど、強く生きてほしい。何年か後にまたスチュアートと再会して不謹慎な会話してほしい。
最初に書いたけどやっぱりブラックミラーって感じの話ではなかったな〜まあでも面白かったからよし!