#技術書典 7の売り上げ報告と反省
昨日の技術書典7に出展してきました。なんだかんだでもう4回目の出展です。
販売したもの
今回出した新刊(といっても既刊本のアップデート版)は3冊
・iOS 13の新機能をざっくり把握する本 v1.0.0
・実践ARKit 第4版
・Depth in Depth - iOSデプス詳解 第2版
既刊2冊も手持ちの在庫を持っていって販売しました。
・Metal入門
・iOSエンジニアのためのmacOS入門
(お手伝いをお願いした @mtfrctl 氏と弊ブース)
そんなわけで製品ラインナップも充実してきたわけですが、今回もいつもどおり売り上げを公開しつつ、いろいろ反省点も見えたのでそのへんについて書いておこうと思います。
これまでの売上推移と今回の売上
これまでの技術書典での推移は、
・技術書典4: 18万円
・技術書典5: 46万円
・技術書典6: 23万円
という感じでした。気になる今回の売上は・・・
15万円
でした!(現金8.4、後払い6.6)
・・・なんと、過去最低となってしまいました。そして二期連続マイナスの右肩下がり。
今回の経費は、印刷代が110,400円、DLコード発行(コンカ)に10,239円、参加料が(たぶん)7千円、あとお手伝いいただいた方への報酬が1.x万円で、売上と経費は完全にトントン(利益ゼロ)という感じです。
まぁ、今回は初めて完全な新刊がなかったので仕方がないとも思いますが、2回目の参加をピークに、続ければ続けるほど売上が下がっている、という事実はこれはまじめに受け止めないとなぁと。「継続は力なり」の真逆の結果になっているわけですから...
(追記:運営から「かんたん後払い」の売上データが出て気付いたのですが、計算を盛大に間違っており、売上は+3.1万円の18.1万円でしした。しかし低下傾向には変わりなく、本記事の趣旨には影響ないかと思います)
そんなわけで、昨日いろいろ気付いた反省点・考えたことなど:
売れる見込みの低い本をたくさん刷らない
いきなり当たり前のことを書いてしまいました。
今回新版を出した「Depth in Depth - iOSデプス詳解」は個人的にはお気に入りの本で、表紙もいい(自画自賛)し、デプスまわりは今とても熱いと思ってるので、この本が売れようが売れまいがこの分野をキャッチアップしつつ今後も更新していきたいと思って書いています。
で、数日前にリリースされたばかりのiOS 13の更新内容を加筆してページ数50%増量して第2版として技術書典7向けに出したわけですが、
当日に売れたのは18部。今回は80部刷ったので、なんと4分の3以上が売れ残ったことになります。
『売れ残ってもBOOTHやとらのあなで委託販売に出せるから大丈夫』
そう思っていた時期が私にもありました。
実際、「実践ARKit」や「Metal入門」のように、売れる本は委託でも売れます。が、このデプス本は委託に出してもあまり売れないんです。前版もBOOTHに出してましたが5ヶ月間で製本版は合計6部しか売れていません。
そして、電子版でもこのデプス本は他の本ほどは売れていません。
もう実績としてどの程度売れるか(売れないか)わかっていたのに、それより多くの部数を刷ってしまったわけです。
なぜか。単純にアホだからです。
30部しか刷らないと一冊あたり印刷原価が600円になってしまって利益がほとんどない
→ 80部にすると一冊あたり原価がだいぶ落ちるぞ、よしこれでいこう
という。原価が下がろうが、売れなければ利益がないどころか赤字だというのに...
その一方では、
前回実績はイマイチでも今回はもしかしたら売れるかもしれない
→ 買いたい人がいるのに売り切れてしまってはせっかくの技術書典がもったいない
→ 印刷原価なんて執筆時間のコストに比べたらめちゃくちゃ安いからそこはケチるところではない
という考えもありました。今回で(この本の場合は)「『予想に反して売れる』などということはない」ということが重々わかりました。
今後も継続してアップデートしつつ、ちゃんと紙の本も出したいという気持ちはあるので、次回は20部ぐらいで刷って、原価が高くなってたぶん紙版だけで利益出すのは厳しいので電子版とセットにして500円ぐらい利益を出す、という感じでいきます。
紙の本を出すからには装丁は自己満足を貫く
中身はいいものなのでお買い上げいただいた人にも失礼ではないと思って書くのですが、実は自分としてはiOS 13本の装丁に関しては満足してなくて、
(こういう感じの表紙、A5の平綴じ)
今回初めて自覚したんですが、こういう場合、買っていただいたときの嬉しさが半減するんですよね。せっかくお金を出してくれたのにあまり嬉しくない、なんというlose-loseでしょうか...
この本の表紙は他の自著と違って「あえて」気合いを入れずにmarkdownで書いてレンダリングしただけという表紙デザインなのですが、なぜかというと僕の中でこのiOS 13本というのは他の本と明確に違う商品ラインに属するからです。
・継続的にアップデートしていくメインライン・・・個人で出してるけど商業本クオリティで書いてるつもりのもの(「Metal入門」「実践ARKit」「Depth in Depth」)
・期間限定で出す号外的な、速報的なライン・・・もうちょっとライトに書く。iOS 13本はこっち。macOS本もこっち。
こんな感じの差があって、そもそも平綴じではなく中をホッチキスで綴じる「中綴じ」で「表紙なし」にしたかったのです。そういうインディーズっぽさというか同人誌っぽさも個人出版ならではの良さがにじみ出てて個人的には好きですし。
で、書いてるうちに中綴じ可能なページ数(50ページぐらい)を超えてしまって、表紙もつけなきゃいけなくなって、なんとなく表紙の紙もちょっと質感のある特殊紙を選んでしまって、本来のコンセプトを見失った満足しない装丁になってしまった、という。
今思えば、何が何でも初期のコンセプト通り中綴じにすべきだったなと。今後は「装丁に満足してないと買う方も売る方も幸せになれない」と肝に命じて、紙で売るからにはちゃんと自己満足を貫きたいと思います。
何かしらの新刊を出す
やっぱり新刊がないとなんとなく物足りないというか。せっかく1日かけてブースを構えるからには新刊を掲げたいというか。9月はiOSのメジャーアップデートがあって、既刊の更新もまじで大変(今回は合計50ページほど加筆)なのですが、どんなに薄くても、既刊のアップデートを後回しにしてでも新刊は毎回出すべきだなと。既刊のアップデートまで手が回らなければイベント後に電子版だけ出すとか。
既刊のアップデートを今後どうしていくか
『既刊のアップデートを後回しにしてでも新刊は毎回出すべき』と書いたのですが、現実問題として、そうなると後回しにされ続けて永遠にアップデートできないという状況が容易に想像できます。
イベントで新版を紙で出す、というのは既刊の更新の大きなモチベーションになっています。新刊を優先すると、既刊を更新できなくなる。
これは悩ましいですが、しかし、ひとつの解は、「『既に成立している本』はSwiftやXcodeの新バージョン対応、deprecated対応等の必要最低限の修正のみに留める」(新機能が出るたびに大幅な加筆を行ったりはしない)というところかと現時点では考えています。
たとえば「Metal入門」は入門書として既に成立していると思っているので、新機能の解説を都度追加していく必要は感じていません。
「実践ARKit」は、ARKitがあまりに現在進行系で進化しているので更新しないわけにはいかなかった(たとえば初版執筆時は平面検出が水平面しか取れなかったが、垂直面も取れるようになったことを入門書であれ書かないわけにはいかない)のですが、今回のARKit 3対応でオクルージョンの章も追記して、入門書として一通りの体裁は整ったような気がしています。
「Depth in Depth - iOSデプス詳解」はまだ今後も大きなアップデートが来ると思っていますが(Portrait Effect MatteのAVFoundationでの毎フレーム取得とか)、これはたとえばiOS 14本、iOS 15本みたいに新刊を書きつつ横展開、みたいな感じで無理なく更新し続けられたらいいなと。
アップグレード価格を用意する
「以前のバージョンを買ったのですが」みたいな方が結構いました。常に電子版とのセットで販売していて、電子版は最新版を無料DLできるようにしているので、買う必要はないですよ、と説明していたのですが、実際のところDLコードはもう捨てたし通知用のメール登録もしなかったかも、という人が多く、ちょっと残念なムードになることが何度かありました。今の思いつきですが、アップグレード価格として70%オフでDLコードだけ販売するのはどうだろう、と。
これを紙版でやると部数の読みがまた難しくなるのが悩みどころですが...