ベルリンの技術カンファレンス登壇記
ベルリンで毎年開催されているUIKonfという技術カンファレンスにスピーカーとして参加したことがあります。ちょうど2年前の今日なのですが、英語ができるわけでもない、主催者にコネがあるわけでも、海外で知られているわけでもない私が、チケットも高額な海外技術カンファレンスに登壇するというのは珍しい経験だと思うので、その経緯や準備、当日の様子について書きたいと思います。
(UIKonfの会場。登壇してるのは私ではなく別の人)
UIKonfとは?
毎年ベルリンで開催されているiOSの開発者向けカンファレンスです。世界的に著名なiOSの技術情報を発信するメディア"RAYWENDERLICH"の"Top 10 iOS Conferences"でも紹介されていて、チケットも毎年ソールドアウトになる人気カンファレンスです。ちなみにチケット代は税込みで約66,000円もします(2016年当時。今はもっと高いかも)。
登壇の経緯
2016年の登壇者は計18人でした。カンファレンス側から招待される著名スピーカー陣が何人かいますが、私は招待されたわけではなく、自分で応募して、投票・審査の上で採択されたCfP(Call for Proposal)枠です。
なお、CfP応募・採択までの経緯の詳細や、採用されるように工夫した点等は、こちらのスライドにまとめてあります。
パーソナルコーチとのプレゼンの準備と練習
僕はそもそも英語にずっと苦手意識がありました。参考までに、当時の英語力はこれぐらいです。
ただお客さんは高額のチケット代を払って話を聞きにくるわけで、しっかり準備せねば、ということで、知り合いの方から紹介していただいたのが、ジョセフ・テイム先生。TEDxTokyoとかのコーチもされている方で、技術もわかる、そして信頼している人からの推薦、ということでパーソナルコーチをお願いしました。
(レッスン中の様子@先生の自宅)
家でスライド制作を進めつつ、できた部分について先生と一緒にTranscript(話す内容の原稿)を書きつつ、声に出してみて変なところを修正してもらう、というサイクルでした。
知り合いのエンジニアが集まる機会に、突発的に発表練習をさせてもらったりもしました。
(エンジニアが集まる「もくもく会」で予行演習@渋谷Dots.)
本番
5/23、いよいよ人生初の海外登壇です。冒頭の写真の通り、UIKonf会場は体育館みたいな吹き抜けのでかい建物で、ドイツっぽい古い感じの造りでものすごく素敵な場所でした。確か元は劇場だったかと。
ライブストリーミングがあり、恥を晒すことになるかもしれないのでシェアするか迷いましたが、こんな機会も二度とないかもしれない、と思い発表直前にTwitterでシェア。おかげで日本からも結構多くの方が観ていてくれたみたいです。
緊張は意外とそんなにしませんでした。Maxの緊張を100とすると10か20ぐらい。
(舞台袖より)
(ステージより)
結果的には大成功で、途中で笑いも起きたし、終わった後いろんな人から「まじで良かったよ!」と声をかけてもらいました。他の登壇者の方々からもお褒めの言葉をたくさんいただきました。(Thank youしか言えず、気の利いた返しができなかったことが悔やまれます)
こちらに動画が公開されています。
とはいえ実は質疑応答は大失敗で、最初の質問への回答は的を得てなかったし、2つ目の質問はまったく聞き取れず、テンパってしまいました。そこはもっと堂々と「あとでまた話しましょう」と言えばよかったなと。そういうことも経験したからこそ学べたことなので、とにかく良かったです。
その他のアクティビティ
UIKonfはカンファレンスとして素晴らしく、参加者みんなの一体感があったのですが、その理由のひとつとして、開催日前日の「Social Event」が非常に良く機能していたと思います。
「Social Event」として、参加者は、自転車ツアーやビール工房ツアー、ボートトリップツアー等から好きなものを選んで参加します。私は自転車ツアーに申し込みました。
このツアーの良かった点が、そんなに周りの人とずっとしゃべってなくてもいいこと。たまーに横に並んだときにちょっとしゃべる、ぐらいの緩いコミュニケーションが僕にはちょうど良かった。
で、そんなちょっとしたコミュニケーションでも効果は絶大で、翌日の本編では数百人の参加者が訪れるわけですが、そんな中で前日に数時間一緒に自転車で並走した人たちに再会すると、妙な親近感がありました(しゃべったのは少しだけだとしても)。
あと、開催前夜にはキックオフパーティー、初日の夜にはスピーカーディナー、2日目の夜にはアフターパーティと、毎晩何かしらの懇親会がありました。
(スピーカーディナー)
コスト
飛行機代、ホテル代はカンファレンス側が負担してくれました。もちろんカンファレンスのチケット代もかかっていません。前述したように毎晩何かしらのイベントがあり、ランチやおやつもあり、ほとんどお金を使うことはありませんでした。
ただ、前述したように、準備にたっぷり時間をかけ、その間フリーランスとしての仕事は止めていたので、コストは相当かかっているとはいえます。
ふりかえり
そもそもカンファレンスに応募したのは、フリーランスとしての活動の場を海外に広げるための「入り口」を増やすための活動の一環でした。
カンファレンス登壇は、そのサイトにも残るし、動画も残るので、英語でググッて私というエンジニアを見つけてもらう「入り口」になるなと。有名カンファレンスへの登壇は経歴にも書けます。UIKonfは、EU圏のiOSエンジニアであれば知ってる人も多いはず。
・・・ということを考えていたわけですが、2年経って振り返ってみると、そういう効果は得られなかった気がします😅しゃべって終わり、ではなく、それを元手に現地でどんどん人脈をつくっていけばそういう機会もあったかなと、今となっては思います。経歴に書ける、というのは忘れてました。いずれLinkedInプロフィールにでも追記しておこうと思います。
初の海外登壇をしてみて、何よりも良かったのは、「海外のカンファレンスに応募し、登壇する」という選択肢が自分の中で増えたことです。
未体験のものはいつでも何だって恐ろしくて、振り返ってみれば日本の技術勉強会に初めて参加したときは、「参加する」というだけで既に怖かったし、周りの人に話しかけることもできず逃げるように帰ったわけで、自分が発表するなんてありえないことでした。
こうやってひとつひとつ恐怖心を克服してコツコツ前進してきたので、(クオリティはまだまだですが)「できること」がまた増えて前進できたことがよかったなと。